メクル第698号 頑張った姿、笑顔で受け止める 保育士・前濱由樹さん(37) こばと保育園=長崎市戸町4丁目=

マスク姿で園児と接する前濱さん。口元が見えなくても、目元の動きや声で表情が伝わるよう心がけています=長崎市戸町4丁目、こばと保育園

 日中、仕事などで忙(いそが)しい家族に代わって子どもを預(あず)かり、食事や睡眠(すいみん)、トイレ、手洗(てあら)い、衣類の脱(ぬ)ぎ着(き)などの世話をするのが保育士(ほいくし)の役目です。また、子ども自身でもできるようになるために手助けをします。
 現在(げんざい)、「りす組」(1歳児(さいじ)クラス)の担任(たんにん)をしています。私(わたし)を含(ふく)め3人の担任と補助職員(ほじょしょくいん)1人で、15人の園児の保育に当たっています。
 1歳児は自分で身の回りのことをする経(けい)験を増(ふ)やす時期です。ズボンや下着、靴(くつ)の脱ぎ履(は)きもできるだけ子ども自身で。給食も自分で食べます。私たちは援助(えんじょ)をしながらそばで見守り、頑張(がんば)った姿(すがた)ややりとげた姿を笑顔で受け止めます。子どもは自分のしたことを認(みと)められると「もっと自分でやりたい」という気持ちが高まります。

絵本に夢中な園児たち。絵本の読み聞かせには子どもの気持ちを落ち着かせる効果もあるそう

 さらに、運動や造形(ぞうけい)などの「遊び」を楽しむ経験をたくさんさせることも保育士の大事な仕事です。健康な体をつくり豊(ゆた)かな心を育むだけでなく、人間関係のルールや他者への思いやりの心を育てるためです。
 私は、絵本の読み聞かせの時間を多く取り入れています。小さい頃(ころ)から自分自身も絵本が大好きで、今も自宅(じたく)の本棚(ほんだな)は絵本がいっぱいです。物語に親しみながらさまざまな言葉に触(ふ)れることができる絵本は、子どもにとってわくわくや学びが詰(つ)まった宝箱(たからばこ)のようなものだと思います。
 1歳児は「イヤイヤ期」と呼(よ)ばれる人生初の反抗期(はんこうき)を迎(むか)えます。「自分という存在(そんざい)」に気付き、自分の要求や感情(かんじょう)を思い切り表現します。人が成長するためにとても大切な時期です。
 おもちゃの取り合いで泣いたり怒(おこ)ったりする子、苦手な食べ物に苦戦する子、自分を見てほしいとアピールする子…。さまざまな喜怒哀楽(きどあいらく)があふれる日々です。言葉で伝えることが難(むずか)しい子どもたちに代わり「痛(いた)かったね」「悲しいね」などと語りかけたり、抱(だ)っこやおんぶなどのスキンシップをしたり。園児の気持ちに共感し、受け入れることに努めます。子どもたちは「思いを受け止めてもらえた」と、安心した表情を見せてくれます。
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 私は、たくさんの歌や遊びを教えてくれた幼稚園(ようちえん)の先生が大好きで、小学生の頃から「幼稚園の先生になりたい」と思うようになりました。別の職業(しょくぎょう)に憧(あこが)れたこともありましたが「やっぱり私は小さい子と関わる仕事がしたい」と進路を決め、県内の短期大学へ進学。幼稚園教諭(きょうゆ)と保育士の資格(しかく)を取りました。

前濱さんのある日の1日

 短大を卒業後4年間、市内の幼稚園教諭として働きましたが、0~2歳児の保育に携(たずさ)わってみたいと保育士になりました。
 保育士は元気いっぱいの子どもたちに一日中向き合うための体力が必要です。しかも、感染症(かんせんしょう)にかかりやすい環境(かんきょう)でもあり、体調管理はとても大変です。しかし、1人の赤ちゃんが小学生として巣立つまでの成長をそばで見守り手助けできる仕事に、大きな喜びとやりがいを感じています。
 園児の手本となれるよう、周りの人への思いやりや感謝(かんしゃ)の心を忘(わす)れず、保育士としてこれからも成長していきたいです。

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