震災仮設で元住民ら「お茶会」、交流に笑顔 熊本地震で唯一残る木山団地(益城町)、3月末に閉鎖

3月末に閉鎖する木山仮設団地で開かれた最後の「お茶会」で、音楽に合わせて踊る元住民ら=5日午前、益城町

 熊本地震で整備された建設型仮設住宅で唯一残り、3月末で閉鎖される益城町の木山仮設団地で5日、元住民らが集う最後のイベント「お茶会」があり、ボランティアも含めた約180人が思い出話に花を咲かせた。熊本地震から4月で7年。復興の道のりを共に歩いた人々は「仮設で暮らした日々を忘れない」と被災生活の記憶を心に刻んだ。

 「あらー、お久しぶり」「元気にしとったね」。ぽかぽか陽気の下、集会所「みんなの家」に久々のにぎわいが戻った。元住民らはボランティアが振る舞う焼き芋や豚汁を片手に世間話をしたり、踊ったり。懐かしい笑顔がそこかしこに飛び交った。

 地震で自宅が全壊し、木山仮設で約3年間暮らした女性(81)=宮園=は「避難所の体育館から仮設のプレハブに移った時のうれしさは今でも忘れない。たくさんの支援のおかげで、にぎやかに楽しく過ごせた」と振り返る。

記念撮影の後、そろって拳を掲げる木山仮設団地の元住民ら=5日午後、益城町

 数年ぶりに訪れた自営業の男性(40)=同=は「家族5人で暮らすには狭かったことや、子どもの泣き声で迷惑を掛けても隣の方が優しくしてくれたことを思い出す」。当時3~4歳だった益城中央小3年の長女も「そこのお家には、お友達が住んでいた」と懐かしそうだ。

 2016年4月の地震発生後、県内でピーク時には2万255世帯、4万7800人(借り上げ型のみなし仮設含む)が仮住まいを余儀なくされた。被災者の住まい再建に伴い、県内に110カ所あった仮設団地の集約・閉鎖が進み、22年8月から木山仮設を残すのみとなった。

 全220戸の木山仮設も入居者は1月末で4世帯9人に。県は3月末で熊本地震の仮設住宅提供を終了し、みなし仮設の2世帯4人を含む13人は町復興土地区画整理事業の影響を受けているため、自宅再建を果たすまで町内の災害公営住宅(復興住宅)に無償で入居してもらう。

記念写真に納まる木山仮設団地の元住民やボランティアら=5日午後、益城町の同団地

 お茶会は住民同士の交流の場をつくろうと、町社会福祉協議会が運営する地域支え合いセンターが定期的に開いてきた。遠山健吾センター長(44)は「活動の締めくくりができてほっとした。これまで協力してくれたボランティアには感謝しかない」と感慨に浸った。

 お茶会の終盤、仮設団地の暮らしを振り返るスライドが上映された。2年前まで暮らした女性(88)=同=は「初めは知らない人ばかりだったけど、退去後も交流が続く友達がいっぱいできた。仮設がなくなるさみしさはあるが、忘れない」と前を向く。

 あいさつに立った西村博則町長は「地震から間もなく7年が経過して復興が進む中、不自由な生活をされている方もいる。最後まで寄り添った支援を続ける」と強調した。(河北英之)

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