今は日本で販売される新車の約40%が軽自動車です。この中でも特に販売が好調なタイプが、全高を1700mm以上に設定したスライドドアを備えるスーパーハイトワゴンです。このタイプの代表が、国内のベストセラーとなるホンダ N-BOXと、軽自動車では2番目の売れ行きになるダイハツ タントです。この2車種は人気絶頂の軽自動車です。今回はこの2車種を徹底的に比較してみましょう。
ボディスタイル/サイズ/視界/運転のしやすさ比較
両車ともボディスタイルは水平基調で視界は良いです。最小回転半径は、売れ筋の14インチタイヤ装着車で見ると、N-BOXは4.5m、タントは4.4mで、小回りの利きは後者が若干優れています。
ボディサイズ比較
N-BOX/N-BOXカスタム
タント/タントカスタム/タントファンクロス
勝敗:タントの勝ち
内装のデザイン/質感/視認性/操作性比較
両車ともにメーターは、インパネの高い奥まった位置に装着されています。視認性は良いですが、上下方向の厚みがあり、小柄なドライバーが座ると圧迫感が生じやすいです。
その上で比較すると、N-BOXは細部の装飾類などにより、質感を高めました。
勝敗:N-BOXの勝ち
前席・後席の居住性比較
前席の座り心地は、座面に柔軟性を持たせたN-BOXが少し快適です。後席は逆で、N-BOXは柔軟性が乏しく、タントが快適です。
身長170cmの大人4名が乗車すると、後席(後端までスライドさせた状態)に座る乗員の膝先空間は、N-BOXが握りコブシ4つ少々で、タントは4つ分です。それでも僅差ですから、前後席の居住性は同程度です。
勝敗:引き分け
乗降性比較
タントは左側の中央に装着されるピラー(柱)をスライドドアに内蔵しました(ミラクルオープンドア)。従って左側の前後のドアを両方ともに開くと、開口幅が1490mmとワイドに広がります。N-BOXもピラーを装着しながら640mmを確保しましたが、タントのピラー内蔵型のドアは、圧倒的にワイドです。
ドアの開口幅が1490mmに達すると、ベビーカーを抱えた状態で乗り込めます。助手席を予め前側にスライドさせておくと、車内で子供をベビーカーから降ろして後席のチャイルドシートに座らせ、親は降車せずに運転席まで移動できます。
このように右側に座るドライバーを含めて、左側から乗り降りしやすいことがタントのメリットです。タントであれば、ワイドな開口幅によって体をよじらずに乗り降りできるため、高齢者にも優しいです。
勝敗:タントの勝ち
荷室&シートアレンジ比較
N-BOXは燃料タンクを前席の下に搭載したので、荷室の床が低いです。路面からリヤゲート開口部の下端までの高さを470mmに抑えました。タントの580mmに比べて低く、自転車を積む時も、前輪を大きく持ち上げる必要がありません。
N-BOXは後席の背もたれを前側に倒すと、座面も連動して下がります。床に傾斜ができますが、低い位置で格納されるため、荷室高は十分です。
その点でタントは、背もたれを前側に倒しても座面は下降しません。荷室の床が高く、荷室高も不足します。その代わり荷室後端に装着されたデッキボードを高い位置にセットすると、段差はなくなります。床の位置は高くても、平らな空間に変更できます。
またN-BOXは燃料タンクを前席の下に搭載したため、後席の座面を持ち上げると、室内高が140cmの空間ができます。後席側のスライドドアから、背の高い荷物を積むことも可能です。このようにN-BOXはシートアレンジが充実しています。
勝敗:N-BOXの勝ち
動力性能&エンジンフィーリング比較
動力性能の違いが生じるのは、売れ筋のノーマルエンジン車です。N-BOXは実用回転域の駆動力が高く、高回転域まで保ちますが、タントはボディの重さを意識させます。エンジンは扱いやすいですが、N-BOXに比べると、加速時のボリューム感が少し乏しいです。
一方、ターボエンジンは、両車ともに1Lのノーマルエンジンを搭載している感覚で運転できます。実用回転域の駆動力がノーマルエンジンの1.6倍に増えて、WLTCモード燃費の悪化率は6〜8%に収まるため、ターボは効率が優れています。
販売店でノーマルエンジン車を試乗して、登り坂などでパワー不足を感じたら、ターボも確認しましょう。
勝敗:N-BOXの勝ち
走行安定性&操舵フィーリング比較
走行安定性はタントが少し優れています。カーブを曲がったり車線を変える時のボディの傾き方は、タントがN-BOXよりも少し小さいです。
またステアリングホイールを回し始めた時の反応も、タントの方が正確です。
勝敗:タントの勝ち
乗り心地&静粛性比較
N-BOXは、カーブを曲がる時などにボディが大きめに傾く半面、足まわりは柔軟に伸縮します。タントに比べて路上のデコボコを伝えにくく、乗り心地は快適です。タントは時速40km以下で硬さを感じます。
またN-BOXは、動力性能に余裕があることも影響して、ノイズもタントに比べて小さいです。
勝敗:N-BOXの勝ち
安全装備&運転支援機能比較
衝突被害軽減ブレーキは、両車ともに標準装着しています。しかし運転支援機能は設定が分かれ、タントの場合、車間距離を自動制御できるクルーズコントロールなどは、メーカーオプション設定になっています。N-BOXは標準装着しています。
勝敗:N-BOXの勝ち
燃費性能比較
N-BOXのWLTCモード燃費は、2WDのノーマルエンジンが21.2km/L、ターボは20.2km/Lです。
タントの2WDは、標準ボディのノーマルエンジンが22.7km/Lで、カスタムXは21.9km/Lです。ターボは標準ボディ、カスタムともに21.2km/Lです。このようにWLTCモード燃費は、総じてタントが優れています。
N-BOXの燃費
タントの燃費
勝敗:タントの勝ち
買い得グレード/価格の割安度/納期比較
N-BOXの買い得グレードは、標準ボディのL(157万9600円)です。タントは標準ボディのX(150万7000円)になります。いずれもエンジンはノーマルタイプで駆動方式は前輪駆動の2WDです。
N-BOXには運転支援機能が標準装着され、タントにはサイド&カーテンエアバッグがセットされています。
装備の違いは同程度ですが、タントは前述の通り左側の中央に装着されるピラーをドアに内蔵させ、ワイドな開口幅を得られます。さらに価格も少し安いので、タントが買い得です。
納期はN-BOXが6か月、タントが4か月になります。
N-BOX
タント
勝敗:タントの勝ち
総合評価と推奨ユーザー
N-BOXは後席の座り心地が不満ですが、内外装は上質で乗り心地も良く、ノイズは小さいです。快適に移動できる軽自動車が欲しいユーザーに最適です。後席はワンタッチで小さく格納できるため、自転車のような大きな荷物を積む用途にも適します。
一方、タントは、ワイドに開くスライドドアが特徴です。運転席のロングスライドシートをオプション装着して、後端に寄せると、車内の移動もしやすいです。ベビーカーを使う子育て世代のユーザーにピッタリです。
N-BOXとタントは両方ともにスーパーハイトワゴンで、外観は似ていますが、使い勝手と推奨されるユーザーは異なっています。
勝敗:引き分け
【筆者:渡辺 陽一郎 カメラマン:小林 岳夫/MOTA編集部】