かさおか人物図鑑 vol.2 〜 学生に読んでもらいたい笠岡市地域おこし協力隊の個性が光る1冊

「地域のなかでがんばっている人々にスポットをあて、子どもたちに紹介したい」

このような思いで2021年に発行されたのが「かさおか人物図鑑 vol.1」です。

発行したのは、一般社団法人かさおか教育DMO。

かさおか人物図鑑 vol.1では、岡山県笠岡市で働く人たちを取り上げました。

そして、vol.1から1年以上の時を経て、2023年1月に「かさおか人物図鑑 vol.2」が完成。

第2弾の「かさおか人物図鑑 vol.2」は、現役の笠岡市地域おこし協力隊、そして地域おこし協力隊の先輩あわせて10名を取り上げました。

さまざまな活動をする大人たちの魅力がつまった「かさおか人物図鑑 vol.2」について、取材をしました。

かさおか人物図鑑 vol.2を発行した「かさおか教育DMO」とは

一般社団法人かさおか教育DMOの設立は2020年6月。

おもに笠岡市内の高等学校と「課題探究型の学習」「協働的学び」などを通し、地域連携活動支援をおこなっている団体です。

笠岡市内の中学生・高校生とかかわりを持ちながら、「地域の人材育成力が向上することで持続可能な地域社会が実現すること」を目指して日々活動しています。

中高生に笠岡市内で働いている大人をもっと知ってほしいと考えて、かさおか人物図鑑 vol.1を発行しました。

そして、2023年1月には笠岡市地域おこし協力隊を取り上げたvol.2を、笠岡市内の中高生に届けたのです。

かさおか人物図鑑 vol.2は笠岡市地域おこし協力隊の10名にフォーカス

かさおか人物図鑑 vol.1は、笠岡市内で活躍するいろいろなジャンルの人を取り上げました。

vol.2は笠岡市地域おこし協力隊の現役メンバーと先輩メンバーの10名をピックアップ。

以下登場順に紹介しましょう。

  • 井関竜平(いせき りゅうへい)さん ー 六島浜醸造所 オーナー
  • ムヤ歩(むや あゆみ)さん ー 菜食KUa オーナー
  • 堂野博之(どうの ひろゆき)さん ー フリースクール育海(はぐくみ)代表
  • 大須賀智哉(おおすが ともや)さん ー Pairdata合同会社CEO / 共同創業者
  • 寺田伊織(てらだ いおり)さん ー 現役協力隊 / 株式会社kakeruX代表
  • 平岡顕治(ひらおか けんじ)さん ー 現役協力隊 / NPO法人ヒトマチスタジオ代表
  • 武井優薫(たけい ひろのぶ)さん ー 現役協力隊
  • 武井知桜里(たけい しおり)さん ー 現役協力隊
  • 金藤光路(こんどう こうじ)さん ー 現役協力隊
  • 岡本真美子(おかもと まみこ)さん ー 現役協力隊

現役の地域おこし協力隊が6名、協力隊を卒業し笠岡で活動している先輩協力隊が4名です。

得意分野で精力的に活動をしている10名。

冊子には、笠岡に来た理由と今後の展望、そして中学生・高校生に贈ることばが記されています。

経験に裏打ちされたことばは、中高生の心に響くことでしょう。

かさおか人物図鑑についてインタビュー

左:寺田伊織さん 右:今井智紀さん

かさおか人物図鑑について、発行元であるかさおか教育DMO 代表理事の寺田伊織(てらだ いおり)さんと、vol.2を中心となって作製した笠岡市地域おこし協力隊インターン(取材時)の今井智紀(いまい ともき)さん、vol.2のデザインを担当した岡本真美子(おかもと まみこ)さんに話を聞きました。

今井智紀さんは現役の高校生でありながら、株式会社Ligulaの代表取締役社長です!

2022年11月から3か月の期間限定地域おこし協力隊のインターンとして、京都から笠岡市にやってきた高校生起業家です。

かさおか人物図鑑で中高生の将来の選択肢を広げる

──最初に「かさおか人物図鑑 vol.1」を作製した経緯を教えてください。

寺田(敬称略)──

中学生・高校生が将来のことを考えるときに、「自分たちが住んでいる地域にどのような大人がいるか」知らないんですね。

まずは自分たちが住んでいる地域でがんばっている大人たちのことを知ってもらって、そこからこんな人に会ってみたいとか、この人の話を聞いてみたいっていう気持ちを中学生・高校生に持ってもらうことで、笠岡市に住んでいる大人たちをつなげていけるのではないかと考えました。

大人たちを知ってもらう手段として、学校で配布できるものを作ろうかって話になったときに、このかさおか人物図鑑が生まれました。

──かさおか人物図鑑 vol.1の反響はどうでしたか?

寺田伊織さん

寺田──

vol.1は3,000部作製して、笠岡市内の中学校と高校、公民館やまちづくり協議会などに配布しました。

vol.1のなかで取り上げた人は中高生にはあまり知られていなかったのですが、かさおか人物図鑑を読むことで、笠岡にもおもしろい活動をしている大人がいることがわかって良かったという意見は多かったですね。

──地域おこし協力隊をかさおか人物図鑑 vol.2で取り上げようと思ったのはどうしてですか?

寺田──

地域で活動している人を紹介するとなると、その一つのカテゴリーとして地域おこし協力隊があげられるのかなと考えました。

地域おこし協力隊の人はそれぞれ活動分野が別々なので、自分の活動分野にあった人は知っているけれど、それ以外の人は意外と知らなかったりするんです。

もっと広く地域の人や中高校生に知ってもらおうとなって、vol.2では地域おこし協力隊を取り上げることにしました。

非常に短い期間で作製した人物図鑑

──地域おこし協力隊の特集にしようと決めたあと、かさおか人物図鑑 vol.2の準備はいつから始めたんですか?

寺田──

vol.2で笠岡市の地域おこし協力隊の人にフォーカスする構想自体は、1年前くらいから立てていたんですが、実際に準備に入ったのは2022年の11月です。

僕とかかわりがある高校生たちと作ることにしました。

高校生で編集に参加してくれたのは2人。

学生応援フリーマガジンSIIP(シープ)も高校生が中心となって作った冊子ですが、かさおか人物図鑑はSIIPのメンバーと違って学生団体 CRENが手掛けました。

そのCRENの2人に加えて今井君も高校生なので参加してもらって、計3人の高校生が中心になり作製を進めていったという感じです。

vol.1は地域おこし協力隊が中心で作製をしたのですが、vol.2は今井君をリーダーに高校生が発行した冊子といえます。

──11月から本格的に冊子作りを始めて、2023年1月に発行となると相当大変だったのではないですか?

寺田──

冊子全体のデザインと構成、取材対象者の取材から執筆まで高校生3人ががんばってくれました。

表紙のデザインは、地域おこし協力隊でデザイナーの岡本真美子さんに考えてもらいました。

実際に動き出したのは11月だったので、かなりハードで…。

実質20日間で取材して10日でデザインして、もう年始に印刷。

取材のあとは記事も書かないといけないし。

高校生3人はなかなかの追い込まれ感だったと思います(笑)

取材と文章は高校生3人に任せて、表紙デザインとレイアウトは岡本さんに考えてもらって、そのレイアウトについて高校生メンバーの要望を聞いて仕上げていきました。

──追い込まれた高校生代表として今井さん、取材と記事執筆をしてみて、大変だなあ困ったなあと感じることはありましたか?

今井智紀さん

今井(敬称略)──

記事にするとなると、取材対象のかたが本当に思っていることを書かなきゃいけないのですが、短い取材時間のなかで聞いて、思いをくみ取って理解して、その人になりきって書くことがすごく大変でした。

その人が思っていることを他人が書くことの難しさをすごく感じました。

でも、思いをくみ取れる力がつけばすごいんだろうなあ、強いんだろうなあと。

──同じ高校生とはいえ、学校が違うほかの2人とどのように連絡をしあいながら冊子の作成を進めていったのですか?

今井──

オンラインで相談することもしましたけど、けっこうリアルで会って相談しながら進めていった感じです。

ほかの2人とは人物図鑑を作ることになって初めて会ったんですが、同学年なので友達といっしょに作製をする感覚でできました。

──取材はオンラインのほうが多かったですか?

今井──

そうですね、実際に会って取材したのは寺田さん、金藤さん、岡本さんですね。

そのほかのかたはオンラインで取材をしました。

──ハードな編集期間が過ぎて、かさおか人物図鑑が完成したときの気持ちはどうでしたか?

今井──

「完成したぞー!」と、ほぼもう達成感と開放感しかないですね(笑)

怒濤(どとう)の編集期間でしたけど、すごく楽しかったです!

今まで全然協力隊のかたがたを知らなかったんですが、ひとり一人にストーリーがあってドラマを見ているような感じでインタビューをさせてもらいました。

かさおか人物図鑑の表紙デザインについて

vol.2の表紙は、白地にカラフルな人の形のデザインが特徴。

別日にデザインを担当した地域おこし協力隊の岡本真美子さんに聞きました。

──どのようなことを考えながらデザインしたのですか?

写真提供:岡本真美子さん

岡本(敬称略)──

笠岡には、地域や島ごとにその地の特色や文化、歴史があります。

また、笠岡市地域おこし協力隊のメンバーも、個性的でさまざまな生き方、考え方の人たちがたくさんいます。

そんなさまざまなカラーを持った地域や人たちが集結した、魅力あふれる笠岡市を一人の人物として(人物図鑑の文字となぞって)表現しました。

また、学生さんに向けた冊子なので、見た目にもポップでワクワクするようなデザインを心がけました。

──記事や画像のレイアウトも考えたそうですね。レイアウトについてのポイントは?

岡本──

真鍋島は赤、白石島は青など、地域おこし協力隊の各メンバーの活動地域がパッとわかるように、地域ごとに色わけをしました。

また、協力隊のみなさんの温かい雰囲気、自身の活動、人生を楽しむ姿が伝わるように笑顔が素敵な自然体の写真をチョイスしました。

「こんな考え方、感じ方があるんだ」とデザインをしながら私も学ばせていただいたので、これを読んでくださるかたの視野や価値観が広がるのではないかと思います。

かさおか人物図鑑のこれから

──かさおか人物図鑑の今後の展開を教えてください。

寺田──

かさおか教育DMOとしては、かさおか人物図鑑は年1回発行と考えています。

次は2024年1月あたりになると思いますが、vol.2で編集に携わってくれた高校生が思いっきり受験のシーズンと被るので、新しいメンバーを募集しながら進めることになると思います。

いっしょに活動をしたい高校生は、手をあげてもらえるとうれしいですね。

笠岡市地域おこし協力隊、そしてインターンの目から見た笠岡

左:寺田伊織さん 右:今井智紀さん

──今井さんは人物図鑑を作りあげるなかで、笠岡に住んでいる多くの人と触れ合ったと思います。
3か月笠岡で生活してみて、笠岡についてどう感じていますか?

今井──

自分はすごく笠岡は好きな街で。

何ていうんだろう、地元感というかすごくフィットした感じがします。

たまに京都に帰るんですけど、京都から笠岡に帰ってきたときに安心するんです(笑)

もうこの地元感が第2の故郷的な感じです。

──寺田さんはずいぶん長く笠岡で活動をされているので、あらためて笠岡の印象はどうですか?

寺田──

僕としてはチャレンジしやすい街だなっていうのを感じます。

ほかの協力隊の人の話とか移住者の人の話を聞いていても、まずは関係性作りから始まるしがらみのなかでやりたいことができずに、志半ばで辞めちゃったっていうパターンがすごい多いんですね。

そう聞いていたんで覚悟して来たんですけど(笑)

僕はそんなことはなかったなって。

笠岡はプレイヤーとかもけっこう多いですし、そういう人たちがもうすでに活躍してくれているので、何か新しいことや変わったことをするっていうところに対しての抵抗感は全然ないのかなと感じています。

かさおか人物図鑑は中高生の視野を広げる

笠岡市地域おこし協力隊を取り上げたかさおか人物図鑑 vol.2は3,000部発行され、笠岡市内の中学生・高校生に配布されました。

  • 「もっといろいろな働き方があることを知ってほしい」
  • 「笠岡市内でおもしろいことをしている大人がたくさんいることを知ってほしい」

かさおか教育DMOの寺田さんはそう話します。

多種多様な働き方があること、笠岡にも多くのプレイヤーがいることを高校生自らが中学生・高校生に伝えるための冊子を作ったことに、大きな意味があるのではないかと感じました。

学生に刺さるフレーズは、同年代の高校生が編集することで威力を増します。

「ネットの世界ではなく、あえて誌面で伝える」

誌面だからこそじっくりと手に取って読み返すことで、行間にある地域おこし協力隊のかたがたの気持ちを受け取れることでしょう。

「何をしたらよいのかわからない」このように思っている学生に、生き方のヒントを与える かさおか人物図鑑であり続けることを願います。

© 一般社団法人はれとこ