女優・中江有里さん、幼い時に親離婚、上京時ホームシック…癒したのは本「1日200冊が出版されている」

「読書は学びであり、娯楽であり、なぐさめ」と読書の魅力について話す中江有里さん=桶川市民ホール

 「読書は知識欲。自分を守ってくれ、生かしてくれる」―。埼玉県桶川市若宮のさいたま文学館桶川市民ホールで、俳優、作家、歌手として活躍する中江有里さんの講演会「読むこと、生きること、『私の本棚』をめぐって」が行われた。

 中江さんは15歳から芸能界で活躍。脚本を書きたいという夢を持ち、NHKのラジオドラマに公募し入選。本を紹介する番組の司会を務めたことで「自分は本の歴史を知らない」と感じたことから、30代半ばで大学の通信制に進み日本文学を研究した。「文学にどっぷり浸かったぜいたくな時間だった」と振り返る。

 年間8万冊出版される本について「1日200冊になる計算。でも目にしてもすぐになくなってしまう。本は生もの。見つけた時にいいなと思ったら手元に置いてほしい」と話した。そして「読書には基礎的な体力が必要。読解力、集中力、想像力の三つを合わせた読書力を付けるのは読むしかない」と説明した。

 人はなぜ読むのか―。中江さんは、関西から上京してホームシックになった時に読書に支えられたという。もっと幼い時には、両親の離婚で経験した不安定な心が、読書で慰められた。「前を向きたいという欲求」や「自分を客観視すること」を読書で学んだと話す。

 さらに「書くことも大切」と中江さん。「縦横無尽の文章レッスン」(村田喜代子著)や自身の小説「わたしたちの秘密」を取り上げ、文章を書くことについて解説した。自身が卒業論文にしたハンセン病を内と外から描いた「いのちの初夜」(北条民雄著)を朗読、最後に古典の「方丈記」(鴨長明著)を紹介した。中江さんは「読むことは、それぞれの人に自由に開かれている場所。悩みがあったり苦しかったりする時に、本を読んでみようかな、書いてみようかなと思ってもらえたら」とまとめた。 

© 株式会社埼玉新聞社