KAAT神奈川芸術劇場が2023年度ラインナップ発表 メインシーズンのタイトルは「貌」

KAATの2023年度のラインアップを発表する長塚圭史(撮影・加藤甫)

 KAAT神奈川芸術劇場(横浜市中区)の2023年度のラインアップがこのほど発表された。22年度の「忘」に続くメインシーズンのタイトルは「貌(かたち)」に決定。芸術監督を務める演出家の長塚圭史は「目に見えるものや触れて確かめるもの、さまざまな角度から『かたち』を見つめたい」と語った。

 23年度も2期に分けて展開する。

 春から夏にかけて実施するプレシーズンはタニノクロウ作・演出の「虹む街の果て」(5月13~21日)からスタート。21年に横浜・野毛を舞台に上演した「虹む街」の未来を描くリメーク作品だ。

 夏休みの時期には三つのキッズプログラムを用意。6月下旬から7月上旬にかけて上演する伊藤郁女(かおり)振り付け・演出のダンス作品「さかさまの世界」はフランスで初演された作品の日本版。県内の子どもたちから教えてもらった「秘密」を基に創作する。

 7月下旬は松井周による作・演出で白石加代子らが出演する「さいごの1つ前」を再演。8月はバレエ作品をベースにした根本宗子作・演出の音楽劇「くるみ割り人形外伝」を披露する。

 9月から24年3月までのメインシーズンでは、八つのプログラムを展開。幕開けは写真家、浅田政志の個展「YOKOHAMA PHOTOGRAPH」。浅田が県内に暮らす人たちを撮り下ろした作品を、自身初となる劇場で展示する。

 23年9月中旬に上演するアーサー・ミラー作「アメリカの時計」は長塚が演出。世界恐慌を扱ったアメリカ史劇で、株の大暴落で富の頂点にあった米国がもろくも崩れ去る姿が描かれる。11月には倉持裕の戯曲を杉原邦生が演出する新作を上演。複数の人生を生きることができる人物が登場するまか不思議な世界をつくり上げ、人間の「かたち」に迫る。

 チェーホフの「三人姉妹」をソン・ギウンが翻案、多田淳之介が演出する「外地の三人姉妹」(11月下旬~12月上旬)は日韓の歴史を見つめる話題作。1930年代の朝鮮北部を舞台に2020年に初演した作品の再演だ。

 筒井康隆の小説を福原充則の演出で舞台化する「ジャズ大名」(12月)は、幕末の日本に漂流した黒人たちが音楽好きの大名と出会うコメディー。リー・ホール作品を小山ゆうなが演出する「スプーンフェイス・スタインバーグ」(24年2~3月)は、シーズンの最後を飾る注目作。がんを患い、死を目前にした少女が生きる意味を問いかける物語だ。

 公演に関する問い合わせはKAAT、電話045(633)6500。

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