ドキュメンタリー映画「劇場版ナオト、いまもひとりっきり」 まだ終わらない福島は忘れ去られてしまうのか?

牛に餌をやるナオト(「劇場版ナオト、いまもひとりっきり」の一場面)

 東京電力福島第1原発事故の影響で全町避難を余儀なくされた福島県富岡町。無人地帯となった町に残り、動物の世話を続ける男性を追ったドキュメンタリー映画の続編「劇場版ナオト、いまもひとりっきり」(中村真夕監督、1時間46分)が、横浜シネマリン(横浜市中区)で上映されている。東日本大震災から間もなく12年。若者が戻らない町で、ナオト(松村直登さん)は今も動物と暮らす。

 13年から取材を続けてきた中村監督。テレビのドキュメンタリー番組として企画書を出しても、避難指示が出された地域で1人暮らすナオトの存在は「国内メディアではタブー視」され、実現しなかった。そこで、15年に映画「ナオトひとりっきり」を製作、反響を呼んだ。続編となる新作はその後も描く。

 ナオトは「将来の糧に」と新たに鶏を買い、ミツバチを飼い始めた。避難指示は一部解除されたが、帰還する若者はいない。新型コロナウイルス禍の中、「復興五輪」と銘打って開催された東京五輪では、人けの無い福島を聖火ランナーが駆け抜けた。

 汚染水の海洋放出、全国で進む原発再稼働。一方で、町が原発で潤ってきた歴史も確かにある。ナオトと動物たちの暮らしは、そうした矛盾を社会に投げかける。17日まで。横浜シネマリン、電話045(341)3180。

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