〔海外〕2023年2月の災害を振り返る

2023年2月に発生した海外での大規模な災害、事故・事件の案件について振り返ります。

※被害の内訳については、原則的にレスキューナウによる情報取りまとめ時のものです。それぞれの記事の最終更新日以降の状況については反映されていないことがあります。

●2月
【自然災害】トルコ・シリアでM7級の地震が相次いで発生
[被害]死者4万1000人以上 負傷者10万5000人以上
2023年2月6日04:17頃(日本時間:同日10:17頃)、トルコ南東部のシリアとの国境付近を震源としたM7.8の地震が発生した。また、同日の13:24頃(日本時間:同日19:24頃)には、M7.5の地震が同じくトルコ南東部で発生した。一連の地震で、トルコと隣国のシリアで多くの建物が倒壊。15日までにトルコ側で3万5000人以上、シリア側でも5000人以上の死者が確認された。トルコでは建物の倒壊が多く、死者が増えたほか、100万人が家を失ったとみられている。
これに対し、建築関連の基準法が十分に守られてこなかったことや、汚職による手抜き工事がトルコ国内から指摘されている。また、捜索・救助の初動に遅れがでたため、被害が拡大したという見方もある。トルコのエルドアン大統領は、初動の遅れを認め、建物の倒壊についても詳細な調査を行うとした。
一連の地震を受け、世界各国からさまざまな形の支援が発表された。日本からは海上保安庁や消防、警察など70名超が派遣され、現地で救助にあたったほか、2000万ドル以上の緊急人道支援を実施すると発表された。

【安全保障】アメリカ・カナダ上空に不審な飛行物体の飛来相次ぐ
2023年1月下旬から2月中旬にかけて、アメリカ・カナダ上空に気球などの不審な飛行物体の飛来が相次ぎ、アメリカ軍の戦闘機が飛行物体の撃墜を実施した。
・1月28日、不審な気球がアリューシャン列島の北のアメリカの防空識別圏に侵入したことがアメリカ国防総省によって確認された。気球はその後、アメリカ・カナダ両国の上空を東寄りに進んだ。この間に、アメリカ軍は気球の分析を進め、中国による操縦機能を有した偵察目的によるものとの分析を示した上で、気球がアメリカ本土から大西洋の領海上に到達した2月4日午後(日本時間同日早朝)、ミサイルを発射し気球を撃墜した。墜落した気球はアメリカ軍によって回収・分析が進められており、全長は60mに達する旅客機並みの大きさとみられている。
この気球について、中国側は気象などを研究する民間の飛行船であり、悪天候のために本来の針路を外れてアメリカ・カナダ上空に迷い込んだものと説明し、撃墜したアメリカを強く非難した。
・2月9日夜、アメリカ・アラスカ州上空を正体未確認の飛行物体が飛行していることがアメリカ軍によって確認され、2月10日13:45(日本時間11日03:45)に飛行物体の撃墜が実施された。アメリカ政府によると、この飛行物体については、中国から飛来した気球とは異なり、操縦機能はなかったとみられている。
・2月11日、カナダの領空に未確認の飛行物体が侵入し、カナダ軍とアメリカ軍の戦闘機がスクランブル発進した。その後、カナダ北西部のユーコン準州上空でアメリカ軍の戦闘機によって飛行物体の撃墜が実施された。カナダ軍や警察によって機体の回収が行われているが、捜索範囲には積雪量の多い山岳地帯が含まれており、作業は難航した。
・2月12日朝、アメリカ・カナダの防衛組織が北米大陸上空で不審な飛行物体を検知し、両国の国境である五大湖の一つのヒューロン湖上空に接近した12日14:42(日本時間同日04:42)、アメリカ軍の戦闘機によって飛行物体の撃墜が実施された。この撃墜の際に、1発目のミサイルが物体に当たらずヒューロン湖に着弾したが、被害はなかったものとみられる。
なお、9日以降の3件の飛行物体について、アメリカ政府は商業目的や研究用の気球だった可能性もありうるとの見方を示しており、引き続きアメリカ・カナダ両政府によって機体の回収と分析が進められている。

【事故】イタリア沖で移民船が難破 少なくとも63人死亡
[被害]死者63人以上
2023年2月26日04:40頃(日本時間同日12:40頃)、イタリア南部カラブリア州沖の海上で難破した移民船の乗客3名の遺体が同州の海岸で発見された。その後も死者の発見が相次ぎ、少なくとも63人に達したとみられる。この他、およそ80人が海岸に漂着するなどして救出された。難破した移民船は4日ほど前にトルコ西部のイズミルから悪天候の中で出航し、海上で岩に衝突し大破したとみられる。
乗客はおよそ150人から180人。アフガニスタンやイラン、シリアなど中東諸国を中心としたヨーロッパへの密入国を目的とした移民で、密航業者のあっせんで乗船したとみられている。
この事故でイタリア当局は密航業者3人を逮捕した。イタリアのメローニ首相は密航業者を批判し、移民の出発地となる国への協力呼びかけや、EUに即時行動を呼びかける書簡を送り、移民対策を継続すると表明した。地中海では過去にも移民が犠牲者となる事故が複数回発生しており、移民が欧州を目指す際に密航船の目的地となっているイタリアは、その対応に苦慮している。

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