<金口木舌>消防記念日と屋部寺

 名護市の凌雲寺には屋部寺という通称がある。1692年に凌雲和尚が教えを広めようと、屋部村に小屋を構えたのが寺の始まりだという

▼小堂には薬師如来像など7体の仏像が鎮座する。健康祈願のため多くの参拝客が訪れるが、それ以外にもご利益があるという。境内の石碑には「屋部村に多かりし火災をも無くせり」と記されている

▼屋部寺のおかげだろうか。木造家屋が今も点在する屋部地区で大火事の発生はないと聞く。それでも備えあれば憂いなし。同じ屋部にある県指定有形文化財「屋部の久護家」で2月、名護市消防本部や市消防団による火災制御訓練が実施された

▼木造赤瓦ぶき平屋の久護家の主屋が建築されたのは1906年。幸運にも戦火を免れ、貴重な文化財となった。失火で市の財産を失ってはならない。市消防団屋部分団の訓練にも熱が入る

▼「火災はいつ起こるか分からない。日々技を向上させたい」と岸本宗明分団長は語る。きょうは消防記念日。神仏や消防団に頼るだけでなく、火の用心も日頃から心掛けたい。

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