「初対面で求婚する相手」には要注意!結婚詐欺で「だます側、だまされる側」の心理 専門家が解説

結婚詐欺事件が報じられている。だます側、だまされる側の心理について、ジャーナリストの深月ユリア氏が専門家から話を聞いた。

◇ ◇ ◇

コロナ禍の中、SNSを利用して恋愛相手を探す男女が増えたといわれるが、結婚詐欺やロマンス詐欺といった事件も起きている。

結婚詐欺師は「ターゲットに会ってから早期に結婚前提の交際を始める」という。例えば、こんな事件があった。40代の男がSNSで知り合った20代女性と初めて会った日に結婚を前提とした交際を申し込んだという。男は「白血病を患った音楽家」とうそをつき、信じて交際していた被害女性から治療費名目で現金をだまし取った詐欺容疑で昨年1月、愛知県警に逮捕された

SNSで恋愛相手を探す男女が増えたが、だまされないためにはどうすればよいのか。「詐欺の心理学 騙す側、騙される側のココロの法則」(KKベストセラーズ、2004年刊)の著書で心理学者の富田隆氏に取材した。

富田氏は結婚詐欺を防ぐためのポイントとして「詐欺の手口を知る。異性の友人を持つ。ネットやAIを活用する。いきなりの『結婚しよう』に注意」の4点を挙げた。さらに、同氏は「詐欺の手口を知るには事件の詳細を解説している記事などを参考にしてください。分かりやすく解説している防犯アドバイザーのYouTubeなども役に立ちます」と補足した。

結婚詐欺師にだまされやすい女性の特徴として、富田氏は「ウブな〝乙女〟ほど、結婚詐欺師にだまされやすいので、ある程度『男慣れ』しておくことも大切」と指摘した。

同氏は「『男性の友人を持つ』ことが近道です。別に、どっぷりと『恋多き女』になる必要はありませんが、気軽な話し相手になってくれる男性を複数、お友だちにするのです。詐欺師は現実の男性からかけ離れた『理想的な運命の人』を演じるので、日頃から『普通の男性』の実際を知っておけば、頭の中で『アラーム(危機意識)』が鳴りやくなります」と説明した。

結婚詐欺師は身分を偽る。そのうそを見破るにはどうすればいいか。富田氏は「詐欺師は被害者がよく知らないことをネタにして自分を飾りたてたり、お金を引き出そうとします。そんな時に、専門家が近くにいれば心強いですね。そんな専門家が周囲にいない場合は、その代わりになるAIサービスなどを活用してもいいでしょう。正しい知識さえあれば詐欺師のうそを見抜けます」という。

結婚詐欺師の特徴は、先述のように、「結婚」という言葉をすぐ出すことにあるという。

同氏は「出会って早々、平気で『結婚』の二文字を口にします。もちろん、歯の浮くような褒め言葉や求愛の言葉も連発するでしょう。『セックス』でも積極的に迫ってきます。なぜなら、彼らは『急いでいる』からです。彼らの第一目的はお金を引き出すことですから、あくまで『結婚』や『婚約』、そして『セックス』は手段なので、そのプロセスを早くクリアして次の段階に進みたいのです。第二に、速いテンポで求愛や褒め言葉を繰り返すことで被害者の心理状態を舞い上がらせ、理性をまひさせることができるからです。あれよ、あれよと思う間に、被害者は『恋愛ジェットコースター』に乗せられ、偽物の恋にはまってしまいます」と解説した。

一度、「恋愛ジェットコースター」に乗ったら、途中下車できず、泥沼化してしまう。富田氏は「苦労して多額のお金を費やしてきたからこそ、途中で止められなくなるのです。止めることは、これまで相手を信じていた自分を否定することになるのです。『投資の継続が損失の拡大につながる』ことが分かっていても、それまでに費やした労力やお金、時間を惜しんで、さらに投資してしまう心理的バイアスを『コンコルド効果』あるいは『サンクコスト(埋没費用)効果』と呼びます。詐欺師の手口は、見事に人間の心理的な弱点を突いている」という。

人間は誰しもが「心理的な弱点」を持ち、気がつかないうちにマインドコントロールされている可能性がある、ということを自覚する必要があるだろう。

(ジャーナリスト・深月ユリア)

© 株式会社神戸新聞社