海自の護衛艦「みくま」就役 もがみ型は12隻で建造終了し、新型FFMが10隻誕生へ

By Kosuke Takahashi

就役したもがみ型4番艦みくま。写真は進水時の2021年12月撮影(海上自衛隊)

海上自衛隊の新型3900トン型護衛艦である「もがみ型」4番艦の「みくま」が3月7日、就役した。三菱重工業長崎造船所(長崎市)で同日、引き渡し式と自衛艦旗授与式があった。

海自の最新鋭艦である「みくま」は、昨年12月に就役した3番艦「のしろ」と同様、海自佐世保基地の護衛艦隊第13護衛隊(長崎県佐世保市)に配備される。

もがみ型は、平時の監視警戒といったこれまでの護衛艦運用に加え、有事には対潜戦、対空戦、対水上戦などにも対処できる新艦種の多機能護衛艦(FFM)だ。海自護衛艦として初の対機雷戦能力を有する。

もがみ型は年2隻というハイペースで建造が進められ、当初は計22隻が建造される計画だった。しかし、もがみ型は令和5(2023)年度計画艦までの計12隻で建造を終了。昨年12月に閣議決定された防衛力整備計画に基づき、令和6年度計画艦からはもがみ型に代わる新型FFMの計10隻が建造される予定だ。

●動き出す新型FFM

新型FFMの計画は既に動き出している。防衛装備庁は1月25日、「『新型FFMに係る企画提案契約』の参加希望者募集要領」を公示した。これに基づき、海自は同月31日、建造業者向けに令和6年度以降に建造契約を締結することを想定した新型FFMの企画提案要求書についての説明会を実施した。

この企画提案要求書に関する製造業者からの意見の提出期限は2月9日で、契約応募(入札)の締め切りは同月27日だった。説明会にも応募にも参加したのは、現在もがみ型を製造している三菱重工業と、ジャパンマリンユナイテッド(JMU)の2社だけだった。この2社から防衛省に対する新型FFMの企画提案書の提出締め切り期限は8月31日となっている。

●もがみ型と何が変わるのか

そもそも「もがみ型」は2018年度以降の計画護衛艦としてスタートしたばかりで、まだ新しいはず。ここに来て新型FFMが改めて計画されるということは、何か設計面で大きな問題点があったり、改善点が必要になったりしたのか。あるいは単に防衛予算が今後増えるために、もがみ型で搭載できなかった装備品を新型FFMに装備するなどして生まれ変わるというのか。

海上幕僚監部は筆者の取材に対し、「企画提案書を受ける前で、設計など今の段階では何も決まっていない。これからだ」と述べるのにとどまった。

しかし、ネット上では「もがみ型」の艦尾や構造物スカート(物の下部につける保護や覆い)内に水が溜まりやすいなどといった指摘が出ている。

これについて、ある海自関係者は「ツイッターの内容はその通り」と認め、「装備に大きな変更はないが、改善点はたくさん有り」と指摘した。

また、別の海自関係者は「さすがに11年間同じ船を作り続けるというのは、今の技術的な進化のスピードに合わないんじゃないですかね。公募したけど結局三菱が今のFFMの延長みたいな船で獲るのかもしれないけど、アッと驚く船が出てくるかもしれないし、可能性にかけているのでは」と述べた。

さらに、他の海自関係者も「(もがみ型は)細かな点で不具合が見つかり修正変更を行なっているようだ。ちくご型でも初期型と最終型では艤装に変化があった」と指摘、「予算が増えることで未装備のVLS(垂直発射装置)などの搭載は当然進められる」と述べた。さらに「後部に搭載艇スペースや扉があるため、係船用のキャプスタン(電動式巻き上げ機)の機器室の配置に問題があると聞いている」と指摘した。

●従来の護衛艦にない新装備のUSVとUUV

もがみ型は対機雷戦用として、日立製のソナーシステム「OQQ-11」を搭載。機雷の敷設された危険な海域に進入することなく、機雷を処理することを可能とする無人機雷排除システム用の無人水上航走体(USV)1艇と無人水中航走体(UUV)を1機装備する。USVとUUVは従来の護衛艦にない新装備となる。USVは後日装備となる。

USVについては、JMUディフェンスシステムズが改良試験を進めているようだ。試験地では陸上自衛隊員がUSVに同乗しているのが目撃されている。

もがみ型は基準排水量が3900トン。全長133メートル、全幅16.3メートルと、従来の護衛艦と比べて船体をコンパクトにし、小回りがきく。海幕広報室によると、もがみ型の乗組員はあさひ型といった通常型の汎用護衛艦の半分程度の約90人。建造費も令和元年度予算で3番艦と4番艦合わせて951億円と、1隻当たりでは700億円を超えるあさひ型の3分の2程度にとどまっている。少子高齢化に伴う海自の常態化した定員割れを踏まえた省人化と船価を抑えて実現した初の護衛艦となった。

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© 高橋浩祐