世界水泳メダル3個 15歳比嘉もえ、高み目指し井村雅代さんに師事 父は元プロ野球選手

 アーティスティックスイミング(AS)日本代表の比嘉もえ(15)=広島・観音中3年=は、今春から大阪で心身を磨く。AS広島から井村ASクラブに移籍。多くの五輪選手を育てた井村雅代氏から指導を受ける。競技と出合った広島での歩みを振り返る。

7月の世界選手権福岡大会に向けた日本代表合宿に参加した比嘉もえ(左)

「きれいでかっこいい」憧れ原点

 「泳げないけど水は好き。母の知り合いの知り合いの子どもがやっていた」という縁で、天満小2年時の2015年12月にAS広島(当時は広島シンクロクラブ)の体験会に参加。「きれいでかっこいい」と心を奪われた。5、6年時には全国JOCジュニアオリンピックカップ10~12歳の部のソロ種目を連覇した。

 AS界を驚かせたのは観音中2年時の21年秋。ジュニア世代の代表入りを懸けた1次選考会をトップ通過すると、特別推薦でA代表の最終選考会に出場。7位に食い込み、史上最年少の14歳で代表入りした。

天満小5年時の比嘉(2018年8月)

 迎えた22年の世界選手権はチーム種目などで三つのメダルを獲得。世界ジュニア選手権と世界ユース選手権では「日本のデュエットを泳いでいる選手が負けちゃいけない」とソロ種目で金メダルに輝いた。

 7月の世界選手権福岡大会でデュエットを組む8歳上の安永真白(井村ク)によると、「もえちゃんはカラオケ好き」。当の本人は「(歌詞が)うろ覚えだけど、サビだけ歌っちゃえみたいな感じです」と笑う。春からの高校生活は「友達ができるか心配」と本音もちらり。両親も観戦予定の福岡大会で成長した姿を見せる。

日本選手権のデュエット・テクニカルルーティンで演技する比嘉もえ=右(2022年5月)

「応援される選手に」元カープの父・寿光さん

 比嘉もえの父は、広島東洋カープで6年の現役生活を送った寿光さん(41)だ。沖縄尚学高時は、1999年のセンバツで春夏通じて県勢初の全国制覇。プロでは故障もあって大成できなかった。現在は球団編成部に籍を置く父が、娘に授けた「メッセージ」とは―。

父の比嘉寿光さん

 「てんぐになっちゃ駄目だよ」の一言。やっぱり勘違いしてもおかしくない立場になってきている。もう普通の中学生じゃないから。根本は人としてASができるから偉いわけじゃないよ、と常々言っている。

 「この人応援したいな」と思う選手はファンに対してもいつでも謙虚。何でもない態度でさらっとこなしてくれる。カープでいうと大瀬良大地がそういうイメージかな。アスリートにとって声援は大きな力。応援される選手になるには普段の行動も気を付けないとね、と伝えている。

 (自身がけがで苦しんだ経験から)けがをしたらつまらんよ、傷口が大きくなる前にケアしなさいって。それくらいしか気にかけてあげられない。けがをしたら今やっている好きな競技が練習できなくなる。その姿は見たくないから。

 春からは、初めて経験する寮生活。人間関係でストレスを感じるかもしれないけど、それも社会に出る時に大事なこと。人間的に学んで成長してほしい。親とも電話でいつでもつながれる。もえが一人で抱え込まないように、心の問題も察知できる存在でいたい。

© 株式会社中国新聞社