福島ファイヤーボンズ、東地区首位アルティーリ千葉に食い下がり迎える12年目の「大きな日」

「3月11日・12日は福島県にとっては非常に大きな日なので、しっかり自分たちのバスケットをブースターの皆さんに見ていただいて、勝利していきたいと思います」。B2東地区で首位に立つアルティーリ千葉との2連戦、福島ファイヤーボンズは連敗を喫したが、3月5日のGAME2を終えた後の会見で佐野公俊HCはこんな言葉を残して前を向いた。

三陸沖を震源とし、日本の観測史上最大のマグニチュード9.0を記録した2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震。その前震、その後の大津波と原子力発電所事故による災害などを総じて「東日本大震災」として知られる出来事の影響は今日まで続いてしまっている。今年はその発生から干支がひと回り。佐野HCの言う「非常に大きな日」は、もちろんこの未曽有の大災害からの節目となる日を指している。

GAME1——最大12点差を盛り返すダブルOTの大激戦

アウェイの千葉ポートアリーナで戦ったアルティーリ千葉との対戦は、2試合とも稀に見る大激戦だった。

初戦は一時12点のビハインドを背負いながらダブルオーバータイムに持ち込み、敗れたものの107-110というエキサイティングな試合展開。第4Q残り38秒に長谷川智伸がクラッチフリースローを沈めた時点では福島が83-80とリードしていた。最初のオーバータイムも、95-96で1点差を追う残り19秒に長谷川がクラッチ3Pショットを沈めて98-96とリードを奪う。タイムアウト明けのプレーで、左サイドラインのハッシュマークからインバウンドした長谷川が3人のスクリーナーの傍らを駆け抜けて逆サイドのウイングに移動し、村上慎也からのパスを受けて放ったキャッチ&シュートがみごとにゴールを射抜いた。

長谷川智伸はGAME1が3Pショット3/6で13得点、GAME2が同3/4で14得点。高確率なシューティングはたびたびアウェイのブースターのため息を誘った(写真/©B.LEAGUE)

2度目のオーバータイムは開始から2分以上得点できず、逆にアルティーリ千葉のブランドン・アシュリー一人に7-0のランを許す非常に厳しいスタートとなった。しかし98-105となった残り2分49秒からはジョシュ・ハレルソンの3Pショットとワース・スミスのプットバックで101-105。両チームに疲れも見えていた残り10秒、トランジションでパスが乱れたアルティーリ千葉から土家大輝がボールを奪い、その土屋からのパスを受けた橋本尚明が右ウイングからディープスリーを決めて107-109。この日福島がチームとして放った52本目、成功させた19本目の3Pショットに、2,322人の観衆が集まった場内には大歓声とため息が混ざった熱い空気が渦巻いていた。

橋本尚明はいいところでほしい一撃を決めていた(写真/©B.LEAGUE)

「第3Qに追いついてそこからダブルオーバータイムまでいけたのは、チームとして我慢しながらバスケットができたから。ペイントで点数を獲られ勝ちきれなかったが、修正して明日は勝てるように…」。佐野HCは試合後そう話していた。

確かに3Pショットで57-18と圧倒的優勢だった半面、ペイントでの得点が24-64と大苦戦した。特にグレゴリー・エチェニケがファウルアウトした後、アシュリーを止めることができなかったことが、大きく勝負に響いてしまった形だ(アシュリーは試合を通じて37得点)。終盤はアシュリーも4ファウル。「もっとアタックしてファウルアウトさせるべき時間帯が第4Qにあったと思います」という振り返りもあった。

\--{GAME2——エチェニケを軸に再び大健闘}--

GAME2——エチェニケを軸に再び大健闘

GAME2は前日のダブルオーバータイムの影響もあってか、両チームとも重たいスタート。しかし終わってみれば、敗れた福島も80得点を奪う点の取り合いだった(最終スコアは80-90)。アルティーリ千葉は前日3Pショットで福島に苦しめられた反省から、その起点となるピック&ロール、ピック&ポップに対するディフェンスを修正。その結果福島は、GAME1でたびたび見られた“スイング-スイング・アクション(起点から直接のパスでショットを打たずもう1本、2本とパスをつないでよりよいショットを狙う戦術)”からのオープン3Pショットの機会を同じように作ることができない。

結果的に3Pショットで27-21と上回ることはできたものの、やはりペイントでの得点で36-46と取り返された。またアルティーリ千葉にフリースローの機会を20本献上し17本決められたこと(福島は12本中9本成功)も大きかった。

「昨日ペイントでの失点が多かったのでそこを修正しようと思いながら臨みましたが、ピック&ロールやトランジションで結構獲られてしまいました。なかなか自分たちのディフェンスが機能せず連敗となりました」と佐野HCは悔しさをにじませる。ただ、この試合でも残り3分25秒にエチェニケがペイントでジャンプショットをねじ込んだ時点で71-76。前日を越える2,508人の観衆が集まり、「チーバ、チーバ!」の大合唱がアルティーリ千葉の肩を押していた中で、この日も最大12点のビハインドから粘り強くファイトバックしたことは、今後に向けてのポジティブと捉えていた。「離された展開から最後に5点差まで詰められ、あと2点、3点が獲れれば展開も変わっていたかもしれません。そこでの攻守をもう一度見つめ直して、来週から連勝を目指したいです」

インサイドの要となっている身長208cmのグレゴリー・エチェニケ。2試合で77分越えの出場時間だったが、どちらも18得点と力を発揮していた(写真/©B.LEAGUE)

この第24節を終えて福島は通算成績21勝24敗(勝率.467)。B2は東西両地区で上位の5チームが勝率5割以上だが、この日東地区2位の越谷アルファーズを倒した同3位の西宮ストークスがその時点で通算成績21勝23敗(勝率.477)であり、福島を含む3チームがその越谷を0.5ゲーム差で追う同勝率という大激戦だ。プレーオフ圏内の地区3位以上とワイルドカードの2枠を競う競争はし烈だが、この週末の戦いぶりは勇気を得られるものだったに違いない。

開幕当初に1勝6敗と大苦戦した後、年末から年明けにかけての7連勝で成績的にも立ち直ってきた。東日本大震災を契機に発足したファイヤーボンズがクラブアイデンティティとして記す「『誇れる福島を』ともにつくりあげていく精神」が、シーズンが深まるとともに形になってきている表れと期待したくなる。「福島県にとって非常に大きな日」を前に、地区首位のアルティーリ千葉に対して彼らが披露したバスケットボールは、それを感じられる見応えに満ちていた。

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