卵、パン…今度はランドセル?地元密着のガソリンスタンド「おきりゅう」 配布サービスで目指すもの

 【沖縄】沖縄市松本のガソリンスタンドに並ぶピンク、水色、茶色のかばん。4月の小学校入学式を前にガソリンスタンド「ハッピーシーサー」を運営する「おきりゅう」がこのほど、利用客に中古ランドセルや鍵盤ハーモニカの本体などを配布した。2日間で配ったランドセルは124個。残りの87個は社会貢献活動をする団体などを通して、必要とする人に配る予定だ。社長の前原沙也加さん(35)は、「地域密着で住民に支えられてきた。これからも地域に還元し、愛されるガソリンスタンドでありたい」と語る。

 前原社長によると創業時、県内のガソリンスタンドは次々に県外大手のガソリンスタンド運営会社に吸収合併されたという。地域の小さな給油所が生き残るためにと、創業当時から始めたのが生活必需品の配布企画だ。周囲のライバルと勝負するためには「利用者の生活に還元できる企画が必要」という考えからだった。創業から21年、これまでに給油などで訪れた客に卵やパンなど、生活に必要な品々を配れば、「ありがとう」と喜ばれてきた。

 今回配ったランドセルなどは、東京都町田市で海外の恵まれない子らに物資を送る活動をする「夢をつなごう会」(斉藤恵津子代表)が提供した。初めて提供を受けたのは2021年。新型コロナウイルスが猛威を振るい、海外への発送が困難になった時期で、沖縄もさまざまな形で打撃を受けた。そのような背景から高価なランドセルが買えない家庭もあり、同会の会員と親交のあった先代社長が県民に配ってほしいと打診した。

 配布企画の当日、「いつもありがとうね」と、ランドセルを抱えて帰る常連客の姿が見えた。市知花から訪れた客は「4月から孫が小学生になる。本当にありがたい」と笑顔を見せた。ハローシーサーの従業員らも「いつもありがとうございます」と声を掛け見送った。前原社長は「地域に密着し、人の笑顔を作れる会社を続けたい」と前を向く。

 (名嘉一心)

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