キャンドル作家のmonさんがNFTアートに挑戦した理由

突然ですが、みなさんは「NFTアート」ってご存知ですか?ざっくりいうと「デジタル上に存在する芸術作品」のことなのですが、これが今世界中で注目を集めているんです。

なぜ、注目を集めているのかというと、ブロックチェーンを活用したNFT(非代替性トークン)と呼ばれる技術によって、これまで簡単にコピーができたデジタルアートが唯一無二のものとなり、絵画や彫刻と同じように資産価値がぐんぐん上昇しているからなのだとか。その市場規模はなんと2兆円。イラストや絵画だけでなく、ゲームや音楽などの幅広いジャンルで作品が展開されていて、日本でも坂本龍一や村上隆といった有名アーティストがNFT作品をリリースしています。

そんなNFTアートですが、フリーペーパー時代のBONNOでインタビューをしたキャンドル作家のmonさんも、昨年からNFT作品をリリースしているそうで。今回はmonさんがNFTをはじめた理由や、作家視点で感じるNFTアートの魅力、そして4月に開催される「石川県NFT展示会」についてお話をうかがってきました。

monさんの代表作であるキャンドルモンスターどろりん。その奇妙な出立ちがクセになる。

ーおひさしぶりです。どろりん可愛いですね〜。
monさん:ありがとうございます!来週から大阪で展示会をするので今はこれしか手元にないんですけど、前に取材していただいた時よりもグルーガンで作ったものが増えていると思います。

ーグルーガンですか。
monさん:そうなんです。キャンドルとはまた違った質感があって面白いんですよ。

ーキャンドルアートはいつから作っているんですか?
monさん:24歳の時です。当時お付き合いしていた人からカラフルなキャンドルをプレゼントされて、なにか作ってみようと試してたら使い方を間違っていたみたいで、こんな奇妙な物体が出来上がったんです。

ーどろりんですね。
monさん:そうそう。見た目が面白くてSNSにアップしたら、雑貨屋さんとか作家さんが興味を持ってくれて、お店に置いてもらったりグループ展に参加するようになったんです。それまでアートには興味がなかったので不思議な感覚でしたね。

ポタポタと溶かした蝋が何層にも重なり合うことでどろりんは完成する。

ーどろりんをNFT化したのはいつ頃ですか?
monさん:去年の春頃です。

ーなにかきっかけはあったんですか?
monさん:ちょっと前から投資の勉強をしていて、そこでNFTアートのことを知ったんです。

ー投資の勉強ですか。
monさん:はい。じつはそれまでキャンドル作家としての活動をお休みしていて。

ーえっ、どうしてですか?
monさん:お金がなくなっちゃったんですよ。おかげさまで色々な方から制作を依頼されるようになったのに、なぜかどんどん貯金が減っていく。これはおかしいなと思ったら、ちゃんと利益の計算ができてなかったんですね。

ーあらまぁ。
monさん:それまでは会社員として週5日働いていたのが、忙しいからという理由で週2、3日になって。本当なら収入が減った分、製作費として原価に上乗せしないといけなかったのに、なんとなく悪い気がして。

ーそうだったんですね。
monさん:それで「これじゃいけない」ということで、キャンドル作りをお休みして県外に働きに行ったんです。

ーそこで投資の勉強をしてたんですか?
monさん:そうですね。今までの経験からもっとお金のことを勉強しないといけないと思って、SNSでつながった投資の専門家の方から色々と教わりました。そこで学んだことのひとつにNFTがあったんですよ。

ーNFT投資ってやつですね。
monさん:そうですね。まだその時は自分の作品をどうするということは考えてなくて、とりあえず投資感覚でNFTゲームを購入してみたんです。

ーゲームですか。
monさん:そうそう、たとえばドラクエみたいなゲームってモンスターを倒したらお金がもらえるじゃないですか。それが仮想通貨でもらえるんです。それからしばらくしてNFTとアートは相性が良いという話を聞いて、いつかどろりんをNFT化してみたいと思うようになったんです。

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クリエイターの世界を広げるNFTアートの魅力。

NFT化されたモンスター達。これらの作品は「OpenSea」というプラットフォームで出品されている。

ーNFTアートに挑戦して良かったと思うことはありますか?
monさん:一番は可能性が広がったことですね。NFTやデジタルによって、今までにはない新しいどろりんが作れるようになりました。

ーたしかに実物のどろりんとは印象が違う気がします。
monさん:それまではひとつの作品が完成したらそれで終わりだったんですけど、デジタル化することでそこから派生したバージョンのどろりんが生まれる。兄弟がどんどん増えていくイメージですね。

ー村上隆のピンキーちゃんみたいな。
monさん:そうですね。それまでは24色という限られた色でしかどろりんを表現できなかったけど、デジタルの世界だと色の組み合わせは無限大。私はスマホの加工アプリでデジタルアートを作っているんですけど、配色のバランスを考えているだけで気づいたら1〜2時間が過ぎているなんてこともあります。

ーほかに良かったことはありますか?
monさん:アーティストに収益が入る仕組みがしっかりと構築されているのも魅力ですね。

ーと、言いますと?
monさん:NFTアートにはプログラマビリティといって、二次流通(転売)が発生した時にアーティストやクリエイターが収益の一部を受け取ることができる仕組みになっているんです。

ーへ〜!そんなことができるんですね。
monさん:デジタルアートとNFTを紐づけることで、その作品をだれが所有しているか、いくらで購入したかが明確になっているのもNFTアートの特徴。自分の作品に唯一無二の価値が生まれるだけでなく、ブロックチェーンによってクリエイターの利益や権利も守られているんです。

ー最初はNFTって難しいイメージだったんですけど、なんだかすごく夢があって、これからどんどん色んなアーティストやクリエイターが生まれていく世界だと感じました。
monさん:はい、きっとそうなると思います。NFTホルダーと呼ばれる所有者の方々とつながりができたのも、NFTとアートが紐づけられているおかげ。もちろん投資の風味もありますが、自分の作品の価値を上げようとみんなで応援してくれたり、ホルダーさん同士のコミュニティも生まれたりして、今までにはない展開にワクワクしています。

ー実際にNFTアートを始めるためにはなにが必要なんですか?
monさん:メタマスクというデジタル上のお財布を作ったら、それを「OpenSea」のようなプラットフォームと紐づけて、デジタルアートを出品するだけ。とくに技術や知識を求められるようなことはなかったですね。

ーNFTアートというのは、デジタルアートなら何でもいいんですか?
monさん:そうですね。写真でも、絵画でも、音楽でも。デジタルデータならなんでもオッケーだと思います。最近だと仮想通貨ではなくて日本円でNFTアートを購入できるプラットフォームもあるので、不安に感じる方はそっちからだと入りやすいかもしれませんね。

ーそれでは最後にmonさんの夢を教えてください。
monさん:もともと夢とか目標を掲げるタイプではなくて、これから先もどろりんを作り続けられるだけで幸せだと思っています。人に褒められたことでなんとなく続けていたけど、一旦お休みをして、私自身ものづくりが好きなんだと実感しました。

ー怪我の功名というか、お休みしてなければNFTアートと出会うのはもっと先だったかもしれませんもんね。
monさん:そうですね。NFTアートなら材料費も抑えられるし、クリエイターに寄り添った収益システムなので経済的にも継続できる。自分が今まで接してこなかったクリエイターの方との交流によって刺激も受けられるので、今ではNFTに挑戦して本当に良かったと思っています。

ー4月には金沢竪町の「HARMONIE」で開催される、石川県NFT展示会にも出品されるんですよね。
monさん:はい。どろりんのワークショップも開催する予定なので、お時間のある方はぜひ遊びにきてください。当日はNFT講座も開催されるそうなので、NFT作品のリリースに興味があるアーティストさんにとっても参加しがいのあるイベントになると思いますよ!

紆余曲折がありながらNFTのおかげでアーティスト活動を再開することができたmonさん。彼女の経験は、現在進行形で経済的不安を抱えるアーティストにとって、大きなヒントになるのではないでしょうか。

NFTキャンドル作家monさんのInstagramを覗いてみる

(撮影/林 賢一郎)

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