魚類養殖飼料に昆虫を 若い起業家と長崎大が共同研究 低コスト、環境負荷低いミルワーム育成

ミルワームの育成ケースを手にする橋爪社長=長崎大文教キャンパス

 高騰する魚類養殖用の飼料を昆虫で代替するシステムの構築を目指し、ミルワームを育成するコンパクトな自律型装置の共同研究が、長崎大でスタートした。IoT(モノのインターネット)や再生可能エネルギーなどの技術を組み合わせ、同大生協の残飯も活用する環境に優しい取り組み。同大経済学部出身の若い起業家と同大理系4学部の研究者がタッグを組んだ同大発のプロジェクトだ。
 共同研究に取り組む会社「Booon(ブーン)」を設立した橋爪海(かい)社長(25)によると、主な養殖飼料となる魚粉の国際価格は需要増によって高騰し、原料となるイワシなどの乱獲が引き起こされている。このため、魚粉の代わりのタンパク源として昆虫に着目。環境負荷が低い養殖用飼料を低コストで生産できないかと考えた。
 ミルワームは甲虫の幼虫とさなぎで、ペットの餌として市販されている。素人でも簡単に育てられる一方、効率的な育成方法についてはまだ詳しい研究が行われていない。今後プラスチックケースの中で飼育しながら育成に最適な密度、温度、湿度などを探る。
 ケースは棚に並べ、コンテナサイズの装置「ワークポッド」に収容。カメラや温度センサーなどを設置し、ネットワークでつないだパソコンで管理する。ワークポッドの屋根に太陽光パネルを設置し、システム制御に必要な電力を賄う。
 ワークポッド第1号は、早ければ5月にも長崎市の同大文教キャンパス内に設置。ミルワームの餌には、同大生協が提供する売れ残り弁当などを活用する。安定的な生産体制を確立した上で効率化、省力化を追求し、将来的には食品メーカーから資金を調達して複数箇所に分散設置する展開を目指す。魚粉の国際価格(1トン約25万円)を下回る1トン20万円程度の価格設定を目標にしている。
 共同研究には情報システムを手掛ける小林透情報データ科学部教授を中心に、昆虫の生態に詳しい服部充環境科学部准教授、再生可能エネルギーの専門家である坂口大作工学部教授、魚類養殖に詳しい征矢野清水産学部教授が参画した。
 経済学部を2021年に卒業し、プロジェクトを率いる橋爪社長は「水産県長崎から新たな資源を生み出し、地域と一緒にこの事業を育てていきたい」と話している。

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