注目ルーキー・ローソンが深める自信と課題。自動ジャッキや日本のファンには“驚き”も

 3月6〜7日に鈴鹿サーキットで行われた全日本スーパーフォーミュラ選手権の第1回公式合同テスト。今年から新しい空力パッケージを導入したSF23に車両が切り替わり、各ドライバー・チームとも苦戦している姿も見られたが、その中で今季デビューを果たすTEAM MUGENのリアム・ローソンは2日間を通してクラッシュやトラブルに見舞われることなく、着々と周回を重ねていた。

 このテストでは、引き続きスーパーフォーミュラの理解を深めながら、チームが用意したテストプログラムをこなしていったローソン。2日間トータルで131周を走破し、総合順位では1分36秒663のベストタイムで10番手につけた。

■ピレリのデグラデーションとの比較

「良いテストができた。乗れば乗るほど自信がついていっているし、変に気負うことなくドライブすることができている。チームもこの数日間ですごく頑張ってくれて、さまざまなことを試すことができた」とローソン。その表情を見ると、昨年12月のルーキーテストとは比べものにならないほど、自信を持っている様が伺えた。

 それでも、追求したいことやテストをしたいことなど、本音はたくさんある様子。「同じように他のコースでもテストをしたいけど、開幕前のテストはこれだけしかないから仕方ない。たくさんのデータを得ることができたから、開幕までにそれらをしっかりと見直していきたい」と前向きな姿勢を見せていた。

 今シーズンは車両だけでなく、ヨコハマが一社供給するタイヤについてもサステナブル素材が含まれた新しいスペックを使うことになる。このタイヤの使い方は各ドライバーとも試行錯誤しているようだが、ローソンはFIA F2での経験がポジティブな方向に活きているようだ。

「今年は新しいスペックになって、昨年のものと比べると少しデグラデーションがあるのかなと感じた。ただ幸いにして僕はF2でピレリタイヤを経験していて、そっちの方がデグラデーションをかなり感じていたから、そこから比べると良いのかなと思っている。いずれにしてもタイヤに関しては(ピレリとは)全然違うから慣れていかないといけない」

「あとはウォームアップの仕方も、すごく難しいなと感じている。今日も完璧にやることはできなかったけど、回数を重ねるごとに良くなっていっている。まだ良いやり方を見つけられていないから、そこは勉強しなければいけない」

 このテスト期間中はスタート練習やピットストップ練習など、本番を見据えての対策も行っていた。

「タイヤ以外にも、学ばなければいけないことはたくさんある。今回のテストでも、スタート練習やピットストップの練習もやった。各チームが使っている自動ジャッキはすごく面白いと思うけど、停止位置がズレるとタイムロスになるから、そこは練習しないといけない」

「あとは(スタートで使う)ハンドクラッチに関してはF2にも付いているから、そこは問題ないけど、細かな部分でやり方が違う。でも、今のところは良い感触だから、これを維持したい」

 予選アタック想定のタイムやロングランのペースを見ると、トップグループにあと一歩届いていない感のあるローソンだが、そこも特に焦った様子はなく「引き続き学んでいかなければいけないところはたくさんあるが、ロングランは良かったと思うし、ショートランのペースも悪くはなかった。ベースとしては『OK』という感じだと思っている。もちろん、もっと上のレベルを求めていきたいけど、僕はスーパーフォーミュラのことを学んでいる最中だから、ステップを踏めていければと思う」と振り返っていた。

鈴鹿公式合同テストで、ピット前の停止位置へマシンを止めるリアム・ローソン(TEAM MUGEN)

■開幕ラウンドでは「あまり高い目標は掲げない」

 公式テストの前に行われたモータースポーツファン感謝デーから、本格的にファンのパドック入場が解禁され、ローソンにとっては『日本のサーキットの雰囲気』に触れる機会ともなった。テスト期間中もTEAM MUGENのピット裏にはローソンからサインをもらおうと多くのファンが出待ちしていた。

「正直、あんなに多くのファンが来てくれて、ピット裏で出待ちされるのとか、今までに経験がなかったことだから、すごく嬉しい。みんなフレンドリーだし、情熱を持って応援してくれている。すごくクールだなと思った。これだけ応援してくれるファンがいるというのは本当に心強いし、今シーズンは各サーキットで、こういったファンの皆さんを会えるのが楽しみだ」とローソン。

「正直、他の国だとみんなが我先にとサインや写真撮影を求めにきて揉みくちゃ状態になるけど、日本のファンはすごく礼儀正しくて、みんな順番を作って、自分の番が終わったら次の人に譲るというふうにしていて……そういうお互いをリスペクトしている姿勢が、すごく良いなと思った」

「改めて、日本のファンの前でレースができるのは光栄に思っているし、すごく楽しみだ。僕自身、日本の環境をもっと学ばなければいけないし、慣れなければいけないけど、こうしてファンの皆さんが熱心に応援してくれることに感謝している。開幕戦の富士では、ぜひ皆さんの前で良いレースをしたい」

 いよいよ1カ月後に迫った2023シーズンの開幕戦だが、舞台となるのは彼にとってスーパーフォーミュラ初走行となる富士スピードウェイだ。それでもシミュレーターなどで事前に走り込みを行っているほか、「富士スピードウェイは昔からグランツーリスモでいっぱい走り込んできたコースだから大丈夫!」と笑顔をみせる。

 開幕ラウンドでは2レース制のフォーマットをうまく活用して、結果を出していきたいとローソンは語った。

「あまり高い目標は掲げないつもりでいる。僕はまだまだ学ばないといけないことが多いから、そこに集中したい。土曜日の第1戦ではポイントを獲れれば、さらに良い方向に動いていくと思うから、その時は日曜日の第2戦で、さらに上を目指していきたいと思う」

 昨年のルーキーテストから、スピンを喫する場面はあったものの、一度もクラッシュをしていないという安定感をみせているローソン。今年は車両が変わって経験あるドライバーとルーキーとの差が例年より縮まっている傾向があるだけに、開幕大会でも要注目の存在となりそうだ。

2022年12月のルーキーテスト、そして2023年3月の公式合同テストはいずれも鈴鹿開催。他のサーキットについては、レースを戦いながら慣れていくしかない

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