進化を続けるスキー業界 最前線は北海道に集まる!?

今週のテーマは“スキー”。北海道の冬を語るには欠かせない存在だ。

国内スキー場の市場規模をみると、約30年前をピークに減少し、ここ十数年は500~600億円程度を推移。コロナ禍で売り上げが落ち込んだが、回復基調にある。ただ、光熱費の高騰などでリフト料金の値上げをしたスキー場も多く、経営は厳しい状況が続いている。スキー場や観光事業者はこのスキーを盛り上げようと、さまざまな取り組みをしている。

【星野リゾートが描く“スキー✕都市観光”】

旭川の隣、東川町にある、旭岳。標高2000メートルを超える北海道最高峰の活火山で、冬はパウダースノーを目当てに、世界中からスキーヤー・スノーボーダーが集まる。

この日、新雪を華麗に滑り降りていたのは…星野リゾートの星野佳路代表。なんと、年に60日以上スキーをしていて、毎年この旭岳を訪れている。

星野代表は「スキー場はヨーロッパでもアメリカでもどこにでもあるが、旭岳のように少し登っていくと大自然があって温泉の噴気が湧き出ていて、かつ雪がこれだけ降ってるところは本当にないと思う」と話す。

ただ、星野リゾートのホテルがあるのはこの旭岳ではなく、車で1時間あまり離れた、旭川の市街地。近年力を入れている、都市観光向けのホテルだ。星野リゾートは、“スキー”を冬の観光戦略の柱と位置付けている。このホテルでは、2018年から「旭川スキー都市宣言」と銘打ち、スキーヤー向けのサービスに力を入れている。

星野代表は「旭川市だけ見ると春夏秋の観光客が多く夏がピーク。 観光事業を持続可能な産業にしていくためにはやはり年間を通して安定した需要を獲得するのが一番大事で、そのためには問題である冬の需要を上げていく必要がある。スキーヤー・スノーボーダーをターゲットにするのは理にかなっている」と話す。

スキーヤーが泊まる宿と言えば、多くがスキー場の近く。リフトまで歩いて行けるような場所が多い。しかし、ニセコに代表されるように、スキー場近隣のホテルは富裕層向けのリゾート開発が進み、高騰している。

星野リゾートが展開する旭川のこのホテルは、市内スキー場のリフト1日券がついて1人当たり1泊1万円を切ることも。長期滞在もしやすいリーズナブルな価格設定だ。

星野リゾートは、スキーだけでなく、旭川が持つ"都市の魅力"も楽しんでもらうことを狙う。スキーの後には、街をめぐってラーメンなどの食を楽しめる。天気の悪い日には、スキーをやめて、旭山動物園など他のアクティビティーに切り替えることもできる。

この観光スタイル、カギを握るのが交通手段だ。星野リゾートは旭岳や近隣のスキー場への直通バスを運行していて、宿泊者が無料で使えるバスもある。足を延ばせば、富良野やトマムのスキー場も行動範囲に。毎朝、スキー場の気温や降雪量などのコンディションを掲示していて、客は好みに合わせて当日行き先を選ぶこともできる。

地元の大雪カムイミンタラDMOは、来シーズン以降、コロナ禍で中断していたオンデマンドタクシーを再開する予定だ。

【プロスキーヤーが手掛けるライブカメラ 】

星野リゾートが札幌で運営するホテル。今シーズンから、新しいモニターを設置し、実証実験を始めた。

実験を行っているのは、東京のスタートアップ企業。スキー場に取り付けたカメラで、市内6カ所のスキー場の直近24時間の天候や降雪量などを比較する。客は好みに合わせてスキー場を選ぶことができる仕組みだ。

このサービスを手掛けるのが、プロスキーヤーの太野垣さんだ。このアイデアは、自身の悩みから生まれたという。太野垣さんは「行き先選びをする時になかなか山の上の情報は入手しづらい。ただ僕たちにとって天候と雪のコンディションっていうのがその日の体験価値を大きく左右する」と話す。

太野垣さんとともに、カメラを設置しているスキー場を訪ねた。まずは、市街地から車で30分ほどの、サッポロテイネ。この日は天候もよく、山頂からマチの景色を一望することができた。

太野垣さんは「テイネはなだらかなコースから急な斜面まである。なだらかな斜面だけの都市型スキー場はあるが、テイネは滑り心地が超本格的」と話す。このスキー場は、元々自社でカメラを置いていたが、今回新たに設置したカメラもある。

スキーヤーが気になる、新雪の量を確認できるカメラだ。営業終了後にスタッフがリセットして、夕方4時ぐらいから次の日の朝まで何センチ降ったかが見られるようになっている。

続いて、さっぽろばんけいスキー場。こちらは市街地から車で20分と、札幌でも有数のアクセスの良さを誇る。カメラが設置されているのは、リフトそばの電柱。カメラは、どこにでも取り付けることができる最新のもの。ナイター営業をしているスキー場では夜景を撮影できる場所に設置するなど、ゲレンデの魅力が伝わるようにしている。

こちらのスキー場は設置コストや管理する人がいないという問題から、これまでカメラを置いていなかった。太野垣さんのサービスは、月額で導入できるため小規模なスキー場でも参入しやすく、反響もあったという。

【経営が厳しい小規模スキー場 グランピングで稼ぐ!?】

十勝・芽室町にある「めむろ新嵐山スカイパーク」。バスから降りてきたのは、主に首都圏から来た、若者たち。SNSで影響力を持つインフルエンサーだ。

こちらはリフト3基の小さなスキー場。小規模スキー場の活性化を目的としたスポーツ庁の実証実験の一環で招待した。スキーウエアに着替えて、まず向かったのは、森の中。歩けば靴が埋まるようなフカフカの雪を歩く。

雪に飛び込む動画を撮影するなど、馴染みのない雪にテンションも上がったようだ。すっかり雪を堪能した後は、いよいよスキー…と思いきや、ゲレンデは歩いて通過。向かった先にあるのは…たき火!冷えた体を温めながら、ソーセージ、チーズ、ホットミルクと十勝の食を堪能する。

実はこれ、スキー場とキャンプを掛け合わせる実証実験。彼らの宿泊先は、ゲレンデのすぐそばにあるテントやキャンピングカーだ。

夜には気温がマイナス20度まで下がる十勝の冬。防寒対策はしっかりと行っているが、寒さで目が覚めてしまうことも。そんな非日常も、このキャンプならではだ。

食事の後はナイタースキーを楽しむ。全員が経験者というわけではなく、その場で教わったり、スキーではなく自転車で走り回ったりと楽しみ方はそれぞれだ。

この取り組みのカギは“少ない設備投資で稼ぐ”こと。グランピングやキャンピングカーは数十万円から数百万円で用意できるため、小規模なスキー場でも取り組みやすい。

実証事業の事務局、北海道二十一世紀総合研究所の小川さんは「小さいスキー場はどうしても収入源をリフト代に頼ってしまっている。大きいスキー場はそのベースキャンプの部分で宿泊や食などでマネタイズのポイントはたくさんある。小さなスキー場にはないのでそこを作り出したい」と話す。

【MC杉村太蔵さんの一言】

MCの杉村太蔵さんは「スキーに来た客は“スキー”だけを楽しみに来ているのか、受け入れ側が考えなければならない」と話した。スキー客と言っても、技術のレベル、家族構成、滞在期間などはさまざまだ。スキーだけでなく、滞在を楽しめる周辺のコンテンツを充実させることがこれからのスキー産業には必要なのかもしれない。
(2023年3月11日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

© テレビ北海道