数字で見る地方議会への女性の政治参画(原口和徳)

今年も国際女性デー(3月8日)に際して様々な取組みが行われました。国際女性デーはニューヨークでの婦人参政権を求めたデモが起源となっており、政治ともゆかりの深い記念日です。

4月には「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」が施行されてから2度目となる統一地方選挙が行われます。地方政治における女性の参画状況を確認してみましょう。

地方議会議員の7人に1人が女性議員

総務省の調査によると2021年末の時点で女性の地方議会議員数は4,829名(都道府県議会議員306名、市区町村議会議員4,523名)で、地方議会議員に占める割合は15.1%となっています。

女性の地方議会議員数の推移を2000年代に統一地方選挙のあった年のデータでまとめたのが図表1です。

図表1_女性の地方議会議員数の推移

地方議会議員に占める女性議員の割合が、2003年7.9%から2019年14.3%と上昇傾向にあることがわかります。なお、女性議員の絶対数は2003年4,670人から2019年4,640人と減少していますが、この背景には市町村合併や議員定数削減によって、地方議会議員の定数が大幅に減少(2003年59,461人→2019年32,783人)していることがあります。

また、女性の首長の数も増加傾向にあります。2003年は17名(知事4名、市区長7名、町村長6名)でしたが、2021年末には42名(知事2名、市区長30名、町長10名)となっています。

国際比較では男女格差が顕在化

「ジェンダー平等と女性の権限拡大のための国際連合機関(UN Women)」の調査によると、地方議会における女性議員の割合について、日本12.87%(2017年)は133の国、地域の中で109番目となっています。また、前回統一地方選挙後(2019年)の14.3%を用いたとしても105番目となります。

図表2_地方議会における女性議員の割合

ちなみに、G7の各国の女性議員の割合と順位は、割合が高い方から順にフランス40.40%/19位、イギリス34.25%/32位、イタリア31.78%/42位、ドイツ27.52%/58位、カナダ26.60%/66位となっています。(アメリカは同集計には含まれていません)

なお、国会議員に限ってみると、2023年2月時点で日本の女性議員の割合(衆議院、10.0%)は186の国、地域の中で高い方から数えて164番目となっています。(列国議会同盟“Monthly ranking of women in national parliaments”)

G7の中で最も割合が高いのはフランス37.8%(35位)で、日本の次に割合が低いのはアメリカ29.4%(66位)です。

議会における女性議員の割合の低さは、国、地方ともに日本の特徴となっています。

統一地方選挙での立候補者、当選者に占める女性の割合は2000年代にほぼ倍増

2000年代に実施された統一地方選挙における立候補者と当選者における女性の割合をまとめたものが図表3です。

図表3:女性の立候補者数、当選者数の推移

2003年には、立候補者の内女性の割合は9.4%、当選者の内女性の割合は8.6%でした。2019年には立候補者の内の女性の割合は16.0%、当選者の内の女性の割合は16.3%となるなど、立候補者、候補者ともに女性の占める割合が増加傾向にあることが確認できます。

選挙への当選のしやすさについて、性別で違いがあるのでしょうか。

市議会議員選挙では、女性の立候補者1,394名の内1,239名が当選(当選率88.8%)するなど、2019年の統一地方選挙における当選率(当選者数/立候補者数)は女性の方が男性よりも高くなっています。

同様に特別区議や町村議では女性の当選率が男性よりも高くなっており、このような傾向は2007年から続いています。

全選挙区分での当選率は男女共に概ね80%前後という状況が続いており、どちらかの性別だから当選しやすいなどといったことはないようです。

2010年代に有権者は1%増加するも、推定投票者数は7.6万人減少

統一地方選挙で行われる選挙の内、最も有権者数が多くなる道府県議会議員選挙における女性有権者数をみると、同条件で比較できる過去3回の統一地方選挙において46万人、割合にして1.1%増加しています。

図表4_都道府県議会議員選挙における推定投票者数

近年、無投票となる選挙区が増加しているため、投票者数の単純な比較はできませんが、無投票になった選挙区も投票された選挙区と同じ投票率であったと仮定すると、女性の投票者数は約161万人、7.6%減少しています。

また、有権者及び推定投票者における女性と男性の差は、推定投票者数において16万人ほど縮小するなど、女性の影響力が若干減少する結果となっています。

統一地方選挙を経て女性の政治参画をめぐる状況は変わるか?

政府が第5次男女共同参画基本計画(2020年)で示した目標は、2025年までに統一地方選挙の候補者に占める女性の割合を35%とすることです。前々回の統一地方選挙(2015年)での女性候補者の割合が13.9%、前回の統一地方選挙(2015年)での女性候補者の割合が16.0%であったことを考えると達成が難しい状況です。

議会において女性の割合が少ないことで気にすべきことはあるのでしょうか。

例えば、日本では家事や育児に費やす時間が他国に比べても女性(妻)に偏っていることが明らかになっています。

男女共同参画白書(令和2年版)では、6歳未満の子どもをもつ夫婦の家事・育児関連時間の国際比較が紹介されています。家事育児関連時間の男女比(男性(夫)の家事・育児関連時間を1としたときの女性(妻)の倍率)は日本で5.5倍となるのに対して、比較対象となった6か国では大きい方から順にイギリス2.9倍、ドイツ2.7倍、フランス2.3倍、アメリカ1.9倍、ノルウェー1.7倍、スウェーデン1.6倍となっており、日本の偏りが突出していることがわかります。

このような状況において男性中心の議会となると、育児に取り組む当事者の声、ニーズをつかみにくくなる可能性があります。

もちろん、私たちが暮らす社会には、性別以外にも世代や職業、居住地域など、様々な属性が存在しています。また、性別などの属性が同じであるからといって、その政治家が対象の有権者の心情をすべて汲み取り、代弁できるわけでもありません。けれども、あまりに議会に参加をしている人の偏りが大きすぎると、本来気づかれるべき社会的課題が見過ごされたり、過少に評価されることがありえます。

そこでは、議員の側も、属性という意味では、ニーズをつかみにくくなっていることを意識した振る舞いが求められます。

折しも2022年の出生数が79万9728人と、統計が開始された1899年以降、初めて80万人を下回ったことが報じられています。少子高齢化が社会の大きな課題となる中で、統一地方選挙を経て議会への女性の参画状況がどのように変化していくのかが注目されます。

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