異能の旧友「ダルは誇り」 若手をけん引、自らに重ね...東北高でチームメートの伊藤さん

高校時代のアルバムを見ながらダルビッシュ投手との思い出を語る伊藤さん=足利市五十部町

 岩手県出身で栃木県足利市五十部町、足利赤十字病院職員伊藤篤(いとうあつし)さん(36)は宮城・東北高時代、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表の大黒柱、ダルビッシュ有(ゆう)投手と共に甲子園の土を踏んだ。「ファンの願いは日本の優勝。自分の仕事を全うしてほしい」。20年前のアルバムを見返しながら旧友にエールを送る。

 「でかくて、ひょろひょろ。死球を受けたら骨折するんじゃないか」。高校入学当初に抱いた第一印象だ。ダルビッシュ投手は大阪府出身で「いつもふざけてる感じだった」という。それでも入部後間もなくベンチ入りし、秋にはエースになった。140キロを超える直球以上に、伊藤さんは「手先が器用で、技術がすごい」と変化球の多彩さに驚いた。

 寮生活では、禁止されていた半ズボンをはいた。練習メニューは自由。試合で体の痛みを訴え、自らマウンドを降りることもあった。特別な存在だった。

 だが当時の若生正広(わこうまさひろ)監督は、勝手とも映る振る舞いをたしなめることはなかった。伊藤さんも「チーム内に(ダルビッシュ投手を)煙たがる雰囲気はなかった」と言い、「無理に投げさせていたら今のダルはなかったと思う」と述懐する。

 2人が在籍した2002~04年の東北高は、甲子園に春夏合わせて4度出場。全国制覇は果たせなかったが、伊藤さんは3年生の春と夏に一塁手として聖地に立った。卒業後は白鴎大、実業団を経て足利赤十字病院に就職。今も同病院の軟式野球部でプレーし、昨年まで6年間、選手兼監督を務めた。日本代表の宮崎キャンプでダルビッシュ投手が若手を指導する姿をニュースで見て「後輩に活躍してほしいという気持ちが伝わってくる」と自らの境遇と重ねた。

 現代表ではダルビッシュ投手が最年長。日本がWBC連覇を飾った09年の胴上げ投手で、唯一の優勝経験者でもある。あれから14年。「最強チームと言われ、いろいろなプレッシャーがあると思う」とおもんぱかり、「元チームメートとして本当に誇らしいし、必ず王座を奪還してくれるはず」と期待を寄せた。

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