悪徳商法「仕組み分かれば避けられる」 滋賀の弁護士、消費者保護への思い

「仕組みが理解できれば、避けられる被害がある」と消費者教育の大切さを話す黒田さん(大津市)

 マルチ商法やインターネット取引のトラブル、キャッチセールスなど消費者問題は尽きることがない。自分は大丈夫-と考える人は多いだろうが、弁護士の黒田啓介さん(52)=滋賀県草津市=は「きっかけがあれば、誰でも悪質商法やうそのもうけ話にだまされてしまう」と訴える。

 同志社大大学院を卒業後、専門学校の講師や経営コンサルタントを経て、2006年に36歳で弁護士となった。当初は、これまでの職業経験から企業法務の道を考えていた。

 しかし、司法修習生として実務を学んでいるとき、悪質リフォーム業者などにだまされた人々に触れたことが契機となる。「経営コンサルタント時代は、客にきちんとした価値を提供しようとする企業を見てきた。不正な行為で不当な利益を得る事業者がいると、健全な事業者も報われないと思った」。消費者問題に強い大津市の土井裕明弁護士の事務所に所属した。

 弁護士になってすぐ、英会話学校大手が中途解約の際に未受講分の授業料を返還しなかった事案を担当した。その後も相手の好意を利用して高額商品を買わせるデート商法や、携帯電話の中途解約時の解約金を巡る問題などに携わってきた。滋賀弁護士会消費者保護委員長や大津市消費生活審議会副会長などを歴任した。

 マルチ商法にだまされた若い依頼者が「(マルチ商法の手口を)知っていれば」と悔やむ姿に接した経験から、消費者教育にも取り組む。昨年4月から18歳に成人年齢が引き下げられ、保護者らの同意がなくても契約を結べるようになったため、特に高校や大学での啓発に力を入れている。

 例えば、マルチ商法を展開するある企業を調査すると、年収1千万円を得られたのは70万人中31人の0.004%にすぎないという事実が分かった。法律を解説するだけではなく、具体的な事例を挙げることを心掛けている。「仕組みが理解できれば避けられる被害がある。自分で調べたり、ものごとを批判的に見る目も養ってほしい」と話す。

 ネットの普及によって、消費者が悪質な事業者に触れる機会がさらに増えている。「弁護士として、おかしいものはおかしいと言い続けていきたい」

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