パイクスピーク総合記録保持者ロマン・デュマ、フォードのモンスターEVで2023年大会に参戦へ

 アメリカが誇る伝統の1戦、通称“雲に向かうレース”ことPPIHCパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムの2023年大会に向け、通算4回のキング・オブ・ザ・マウンテン獲得を誇る総合記録保持者、ロマン・デュマの参戦が決定。フォード・パフォーマンスと新興STARDが共同開発したモンスターEV『フォード・パフォーマンス・スーパーバン4』で出場することがアナウンスされた。

 この2023年で通算101回目の開催を迎えるPPIHCだが、1916年の第1回大会以来このコロラド州の山で競い合ってきたフォードは、イベントの“アイコン”たる存在のデュマを擁し、同大会で電動化技術の王様として君臨する『フォルクスワーゲンI.D.R パイクスピーク』のレコード、7分57秒148の撃破を目指している。

「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムに出場できることは、ドライバーにとっていつだって光栄なことだ」と語った、ル・マン24時間3冠を誇るデュマ。

「今季2023年はフォード・パフォーマンス・スーパーバン4で参戦し、完全電動ドライブトレインのモンスターバンを、この“アメリカズ・マウンテン”でテストできることを楽しみにしている。フォードの最新世代となる電気自動車の技術は、このコロラドスプリングスでも威力を発揮するだろう」と彼は続けた。

「従来のICE(内燃機関)を搭載した車両では高地でパワーがカットされる。その点、このスーパーバン4の電動パワートレインは高い標高でも損失がなく、今年のレースに向けても健全なコンペティターになれるはずさ」

 現代の自動車にとっても礎となった『T型フォード』の時代から、海抜1万4115 フィート(4302m)のゴールまで28分3秒を掛けて登ったブランドの歴史も引き合いに、同社モータースポーツ部門のグローバルディレクターを務めるマーク・ラッシュブルックも「PPIHCこそ、我々フォード・パフォーマンスにとって完璧な次の目的地だ」と語った。

「この山は世界中のレーシングファンの想像力に火をつける、長い歴史を持つ場所だ。それだけに、この電動スーパーバン4を投入するのに最適な場所でもある。どちらも時間の経過とともに進化してきたし、今こそフォードの電動化技術を活用し、世界でもっとも印象的なパフォーマンスの車両たちと勝負を繰り広げ、この山でテストをする時間だ!」

当初は『FORD_E-TRANSIT_SUPERVAN』として登場も、1995年製作の『SuperVan 3』に続く作品として4の名称が冠された
『フォルクスワーゲンI.D.R パイクスピーク』で総合記録を持つロマン・デュマは、これが通算8回目の出場となる
バンのカーゴ部分は大胆に切り欠きが入り、視覚的にも空力性能をアピール。細部でも遊び心を表現する

■フォード・パフォーマンス・スーパーバン4は、観客を喜ばせること間違いなし

 そのPPIHCに投入されるフォード・パフォーマンス・スーパーバン4は、前述のとおりフォード・パフォーマンスと元WRC世界ラリー選手権ドライバーのマンフレッド・ストールが率いる技術集団STARDの共同作業として製造され、容量50kWhの超高性能セル採用のバッテリーに全輪駆動システムを搭載し、特徴的なカーボンコンポジット製ボディとFIA仕様のロールケージ、および調整可能な回生ブレーキを備える。

 すでに同車は昨年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでもお披露目されており、その際にはデュマが走行を担当。また、直近にはレッドブル・レーシングとの「戦略的パートナーシップ協定」を結び、同社のRBPTを通じて2026年からのF1参入を発表した際、現レギュラーを務める王者マックス・フェルスタッペンも、公開された動画の中でステアリングを握っていた。

「このスーパーバン4には、これまでに開発された世界でもっとも強力な電動パワートレインのひとつが搭載されている」と説明するのは、STARDの現CEOであるミヒャエル・サコウィック。

「このクルマはこれまで製造された中でもっとも用途の広い電動レースカーの1台でもあり、グッドウッドの丘を登り、WRCのターマックステージなども走破した。今、それをPPIHCに送り出すことは非常にエキサイティングだね。この取り組みには多くの労力が費やされており、STARDもその一部であることを誇りに思っている」

 これが通算8回目の参戦となるデュマに対し、PPIHCのエグゼクティブ・ディレクターであるメリッサ・アイコフも「ここでロマンがレースをするのを見るのは、いつだって楽しみなこと」と歓迎の意を示した。

「象徴的なアメリカのブランドであるフォードとフォード・パフォーマンスを、こうしてパイクスピークにお迎えできることをうれしく思います。誰もがフォード最新の技術革新を見て、伝統のマウンテンでのパフォーマンスを見たいと思っています。そこにデュマが座っていることで、誰にとっても印象的なエントリーになることは間違いないでしょう」と続けたアイコフ。

「彼は一貫して真剣な競争相手であり、見るのが楽しいユニークなビルドでコロラドに到着しています。それは今年も例外ではありません。彼らのフォード・パフォーマンス・スーパーバン4は、観客を喜ばせること間違いなしでしょうね!」

最高出力は約2000PSを発生し、0-100km/hは「およそ2秒以下」という驚異の性能を誇る
容量50kWhの超高性能セル採用のバッテリーに全輪駆動システムを搭載し、特徴的なカーボンコンポジット製ボディとFIA仕様のロールケージ、および調整可能な回生ブレーキを備える
「PPIHCこそ、我々フォード・パフォーマンスにとって完璧な次の目的地だ」と同社グローバルディレクターのマーク・ラッシュブルック

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