社説:「H3」失敗 原因を検証し出直しを

 日本の宇宙開発事業にとって大きな痛手だ。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業が開発していた新型主力機H3ロケット1号機が打ち上げに失敗した。

 離陸したが2段目のエンジンが点火せず、約14分後に指令信号によって破壊された。搭載していた地球観測衛星だいち3号とともに海洋に落下したとみられる。

 2月に機器の誤作動により発射寸前で中断してから2週間余り。再挑戦は最悪の結果となった。

 課題を解決して仕切り直す態勢は十分だったのか。失敗の原因を徹底的に究明し、教訓を再起に生かさねばなるまい。

 人工衛星の需要の高まりで、宇宙輸送を担う新型ロケットへの期待は大きい。JAXAは昨年10月に小型ロケットのイプシロン6号機の打ち上げにも失敗した。日本の技術に対する信頼を取り戻せるか、踏ん張りどころとなる。

 H3は、2001年に投入されたH2Aロケットの後継機として14年に開発がスタート。より大型の衛星を搭載できる一方、構造を簡素化しコストを半分の約50億円に抑える仕様を目指した。

 ただ、主エンジンの開発トラブルなどが続き、当初の20年度の発射予定から大幅に遅れていた。

 失敗のリスクが伴う開発1号機にだいち3号を搭載したのは、遅れを取り戻そうと焦りがあったのではないかとの指摘もある。巨額の公費を投じたプロジェクトの進め方に問題はなかったのか、経緯の検証も必要だろう。

 政府の宇宙基本計画では23年度以降、国際宇宙ステーションへの新型無人補給機や火星衛星探査計画での探査機の打ち上げを、H3が担う予定としていた。

 米国主導の月探査アルテミス計画では物資輸送にあたる狙いもあった。それらへの影響は避けられないだろう。

 昨年はイプシロンの失敗で、日本の衛星打ち上げはゼロだった。

 H2Aは高い成功率を誇ったが、24年度に引退する。

 だいち3号を打ち上げられなかったことは、災害状況の把握や監視機能強化の遅れにもつながる。代替案が求められる。

 商業衛星の受注では、米スペースX社のロケットが数多くの失敗から技術を確立し、大きく先行している。挽回は容易ではない。

 新型ロケットにどのような役割と商機を見込み、いかに実用化の軌道に戻すのか、計画の練り直しが必要ではないか。

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