FSC認証の普及へ 岩手と宮城の5森林がサプライチェーンの連携始動

写真提供:登米町森林組合

世界的な森林認証制度のFSCマークによる世界基準に沿ってより良い森づくりを目指し、岩手県と宮城県の5つの地域が共同で森を守り育てる活動をスタートさせた。環境保全の面から見て適切で、社会的な利益にかない、経済的にも継続可能な森林管理の原則に基づき、責任ある森林管理がなされているFM(Forest Management、森林管理)認証を取得している東北の森林の川上から川下までのサプライチェーンがタッグを組んで認証材の普及に取り組む。FSCジャパンによると、FM認証を受けた森林同士の連携は国内でほかにない。(廣末智子)

今回連携した5つの地域は、岩手県の岩泉町(岩泉町森林認証グループ管理会)、大槌町(釜石地方森林管理協議会)、住田町(住田町森林認証グループ)、宮城県の南三陸町(南三陸森林管理協議会)、登米市(登米市森林管理協議会)で、ネットワークは「5TreesNet」と命名している。

各地域の認証林面積は岩泉町が6305ヘクタール(公有林5070ヘクタール、私有林1235ヘクタール)、大槌町が856ヘクタール(公有林)、住田町が1万4116ヘクタール(公有林8861ヘクタール、私有林5255ヘクタール)、南三陸町が2481ヘクタール(公有林1766ヘクタール、私有林715ヘクタール)、登米市が9162ヘクタール(公有林2915ヘクタール、私有林6247ヘクタール)で、総面積は3万2920ヘクタールとなる。

5地域のうち最も早くFM認証を取得したのは岩泉町で、2003年に町有林を中心にグループ認証で取得した。その約6割は家具などに用いられる広葉樹で、町内事業者と連携して国産広葉樹×FSC 森林認証による新たな価値創造に挑戦している。

続く2004年には気仙スギの産地として知られる住田町もグループで認証を取得。FSC の原則と関係法令の遵守、自然環境との調和、持続可能な森林経営を基本理念に、主にスギやカラマツなどの針葉樹材を生産している。

また2015年には南三陸森林管理協議会、2016年には登米市森林管理協議会が、さらに2021年には大槌町の釜石地方森林管理協議会が後に続き、東北の太平洋側の近隣市町の森林でFSC認証材を普及させる動きが広がりを見せていた。

ネットワーク化はこれらFM認証を受けた近隣の森林が連携を強化することで、各地域の林業の川上から川下までのサプライチェーンの情報を共有し、認証材の用途と販路の拡大につなげるのが狙い。2016年には岩泉町と住田町、南三陸町による連携組織「3TreesNet」が発足し、これに登米市を加えた「4TreesNet」を経て、今回、大槌町を入れた「5TreesNet」として新たにスケールメリットを生かした活動を行うことになった。

認証を生かした事業を行うには単独では難しい

FSC認証を有効に実施するには、森林管理のFM認証のほかに、「CoC(Chain of Custody、加工・流通過程)認証」を取得していなければならない。CoCとは、FM認証を受けた森林から伐り出された木材から作られた製品を、FSCのマークを付けて消費者に届けるため、伐採業者、加工業者、製造業者、流通業者、印刷業者、小売業者など、木材が最終製品になるまでの製品の所有権を持つすべての業者が、それらを細かい規格やルールに沿って適切に管理・加工していることを認証するものだ。

国内でも比較的早い段階からFSC認証による森づくりを進めてきた岩泉町のメンバーは、認証材の需要と供給を増やしてきたこれまでの道のりを「取り組むのが早すぎた分、容易ではなかった。認証を生かした事業を行うには単独では難しい」と振り返る。一方で、世界的な認証材への認知が進み、「今、時代が追いついてきた感じもしている」とも言い、「登米や釜石が加わり、東北の森林ネットワークが一つの形になったことは意義深い。どれだけできるか、どこまでやれるのかを模索していきたい」と連携へ希望をつなぐ。

今後の展開について、登米町森林組合の竹中雅治参事は、「地域ごとに発展してきた林業技術や、FSCの原則に基づく森林管理の技法を互いに学び合い、共同での商談や出材につなげたい。構造材や内装材、家具など、多様な樹種を多様な木製品に加工できるよう、ネットワークを駆使して取り組み、認証材をしっかりと選んで使ってもらうための仕組みづくりを行いたい」と話している。

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