石破茂元防衛大臣とZ世代が徹底議論…防衛費増額による“増税”は不可避?

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG(モニフラ)」(毎週月~金曜7:00~)。2022年12月27日(火)放送の「モニフラZ議会」では、ゲストの石破茂元防衛大臣とともにZ世代の論客が、防衛費増額分の一部“1兆円の財源”について議論しました。

◆防衛費増額による増税は必要なのか? 石破さんの見解は?

ロシアによるウクライナ侵攻や、台湾有事をはじめとする中国の脅威、そして北朝鮮の核・ミサイル問題など、世界情勢は日々緊迫度が増すなか、日本の防衛対策も大きな転換期を迎えています。そのひとつが"防衛費の増額”です。

政府は来年度から5年間の防衛費の総額を43兆円程度に増やし、5年後の2027年度には現在の約5.4兆円の倍、GDP比2%の約11兆円にするとしています。そして、そのうちの1兆円は増税で賄う方針で、内訳は法人税とたばこ税、そして所得税の1%増税。ただ、所得税に関しては復興特別所得税(2.1%)を1%減らし補うとしていますが、この復興特別所得税も13年間延長するということで、事実上の増税となります。

法律事務所ZeLoの弁護士・由井恒輝さんは、「経済成長による税収UP」とまずは経済成長を促すことが必要だと主張します。

「岸田政権になってスタートアップ5ヵ年計画を出し、税制面も変えて、投資に促していく流れのなかで、今、増税という議論をしてしまうと、結局経済成長しない。投資も促せず、スタートアップも育成できない。チグハグな状態になっているのではないか」と懸念し、「本当に増税は必要なのか?」と疑問を呈します。

石破さんはまず、財源論が先行してしまったことに関しては「議論が逆になってしまった」、「中身の話がほとんど飛んでしまったのは決していいことじゃない」と話します。

そして「アベノミクスなどいろいろなことがあったが、結局は(経済成長)しなかった。どうやって税収をアップするのかというのは、要はいかに付加価値を上げるかという努力を怠っていた」と指摘します。

防衛費の増額分を増税で賄うことについては「足りなければ増税で」と明言。「何かやりたい、そのための財源をセットにして示す」と自民党の考え方を紹介し、「大切なものはタダではない」と言い、「増税を喜ぶ人は誰もいないが、これが払うに値するものなのか、それを納得してもらう努力をしないといけない」と訴えます。

増税以外にも一部を建設国債で賄うという意見もあります。そこで由井さんは石破さんに国債の活用について聞いてみると「建物などであれば国債でもいいでしょう。だけど、戦車や戦闘機、護衛艦などは今はもう5年、10年で陳腐化してしまう。そういうものを国債で、次の世代に払ってというのはちょっとおかしくないですか」と否定的な見解を示します。

キャスターの堀潤からは、今の日本の防衛上、何に投資するべきかという質問が。これに石破さんは「今あるいろいろなものがちゃんと動きますかということ」と即答。有事の際、古くなってしまって使えない、動かす人がいないというのはナンセンスとした上で、まずは、確認から始めないと「新しいものをいっぱい入れても意味がない」「今あるものが使えるかどうかの点検をしないと、納税者に対して誠実ではない」と主張します。

◆なぜ国民に向け説明がなされないのか…その理由を石破氏が分析

共同通信が行なった増税に関する世論調査では、全体では「支持しない」が64.9%だったのに対し、30歳以下の若年層では75.7%と全体よりも高い数字となっています。

この数字について、Health for all.jp代表の茶山美鈴さんは「石破さんが仰る通り、増税の必要性がロジカルに説明されていないということや、説明されていたとしてもそれを受け手側が受け取っているかという問題がある」と分析。その上で、後者は受け手側のリテラシーの問題としつつ、なぜロジカルな説明が行われていないのか、今後説明する機会があるのかと石破さんに問います。

すると石破さんは、「増税賛成ですと言う人がそんなにいるとは思わない。こういうことのためなら仕方ないなと思ってもらえるかどうかだ」と、改めてロジカルな説明の必要性を唱えます。そして、自衛官が国会で説明しないことを挙げ、これは世界でも珍しく、石破さんは「本来であれば国会の場で(今の防衛に)何が足りないのか説明し、(国民に)理解してもらうプロセスが必要」と考えを述べます。

現在は退役された方々がメディアを通して発言することも増えてきたなか、それ以上に現役と議論を深めていくことが大切であり「それがあるべきシビリアンコントロール。現役の方々も自制心が働いてしまうと思うが、やはり国会の場で納税者と議論するのは大事なこと。そうしたことが日本は欠けているんじゃないか」と石破さんは案じます。

◆日本の安全保障は武力以外の防衛手段はないのか…石破さんが解説

microverse株式会社 CEOの渋谷啓太さんからは「防衛することが前提になっているのは、議論のスタートとして正しい?」という提言が。渋谷さん曰く、そもそも全てが防衛、攻撃されることが前提となっていて、それを回避する手段、それこそ武力ではなく経済や外交といったオプションありきで安全保障は語られるべきではないかと訴えます。

これに石破さんは「その国の存在意義というのは国によって違う」と返答。「ある国は、共産党、一党独裁が大事で、そのためには何でもやる国があるが、外交や経済など繋がりを深める努力は精一杯した上で、それでも合理的ではないことが起こったときに『(万が一のことを)考えていませんでした』ではあまりにも無責任じゃないかってこと」と防衛に対する姿勢を解説。

さらには、民主主義国家と独裁国家の違いと、それによる影響にも言及。「日本のような民主主義国は、意思決定まですごく時間がかかる。しかし、独裁国家はあっという間に決まる。(日本が)時間をかけて議論をしているときに、向こうが先手を売ってきて、慌てふためく状態になってしまったらどうにもならないですよね」と予め備えておくことの重要性を説きました。

※この番組の記事一覧を見る

<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

© TOKYO MX