次の「シン」は俺たちだ! ゴジラ“じゃない方”の怪獣映画『ドゴラ』『ギララ』『ガッパ』『サンダ対ガイラ』の「シン化」を妄想

『宇宙大怪獣ギララ』©1967 松竹株式会社/『宇宙大怪獣ドゴラ』©1964 東宝/『大巨獣ガッパ』©日活

「次の『シン』は俺たちだ……!」

2022年の『シン・ウルトラマン』ヒットの記憶も薄れぬうちに、『シン・仮面ライダー』公開、Netflixアニメでガメラが復活(『GAMERA -Rebirth-』)、さらに11月には国産ゴジラ映画新作の公開も控えており、まさに世は「特撮戦国時代」である。

しかし、そんな知名度抜群のS級特撮たちの影に隠れて、今も暗闇で爪を研いでいる怪獣たちがいるのをご存知だろうか? そう、「次の『シン』は俺たちだ……!」と。

『ドゴラ』『ギララ』『ガッパ』『サンダ対ガイラ』一挙放送

2023年3月、CS映画専門チャンネル ムービープラスでは『宇宙大怪獣ドゴラ』(1964年/東宝)、『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』(1966年/東宝)、『宇宙大怪獣ギララ』(1967年/松竹)、『大巨獣ガッパ』(1967年/日活)と、1960年代にスクリーンに襲来した怪獣映画が一挙に放送される。

60年代の牧歌的な味わいたっぷりの『ギララ』から、東宝怪獣映画最恐の一角を担う『サンダ対ガイラ』まで、「ゴジラじゃない方」の怪獣たちの活躍を幅広く楽しめるチャンスだ。

今回は各作を紹介しつつ、「もしもこの怪獣たちも『シン化』するなら、こんなリメイクが見たい!」という妄想も垂れ流していこうと思う。

『シン・ドゴラ』はジョーダン・ピール監督のあの映画!?

子供の頃、『宇宙大怪獣ドゴラ』を紹介する記事には決まって「肝心のドゴラがほとんど出てこない」というネガティブ情報が記載されており、東宝怪獣映画の中でも一番最後まで後回しにしてしまったのが、この『ドゴラ』だった。

実際に見てみると、確かにドゴラはチラッとしか出てこないし、出てきても掴みどころのない形をしていて子供心にガッカリしたのを覚えている。

だが、大人になって再見すると、ダイヤを巡る無国籍スパイアクションは映画黄金時代の陽性な心地良さに満ちているし、見事な特撮で描かれる「物質が空に吸い上げられていく」怪現象は、怪獣というより一種のスペクタクルとしての「正体が分からない恐怖」を醸し出していた。

もしも『シン・ドゴラ』が作られるなら、何でもかんでも空に吸い上げられていく恐怖にクローズアップし、人間目線から描いたホラー作品で見てみたいところ。

いや、それは『NOPE/ノープ』(2022年)だ。

そう、ジョーダン・ピール監督による円盤生物の恐怖を描いた映画『NOPE/ノープ』は、実質『シン・ドゴラ』と言っても良い内容だった。ぜひ併せて楽しんでいただきたい。

今、サンダとガイラを演じるのは“あの二人”しかいない!

細胞分裂によって生じた2体の「フランケンシュタインの怪獣」、サンダとガイラ。言うなれば兄弟のような存在の2体の戦いが描かれ、東宝怪獣映画の傑作とも名高い作品だ。

同時代のゴジラの身長が50メートルなのに対し、サンダとガイラは25~30メートルとやや小さい設定。それゆえに、ミニチュアのサイズが大きく作られており、セットの精巧さや規模に磨きがかかっているのも見所の一つ。そして、この25メートル級というサイズが、ギリギリ「目が合って、こちらを認識してくるんじゃないか」という現実感のあるサイズ感で、めちゃくちゃ怖い。ガイラによる恐怖シーンの連発、君は耐えられるか!?

もしも『シン・サンダ対シン・ガイラ』が作られるなら、ここはやはり斎藤工さんにガイラ、山本耕史さんにサンダを演じていただき、兄弟の対立を色気たっぷりに描いて色々な需要に応えていただきたい。

実は最強? マイナスイオン噴霧怪獣映画『ギララ』

『宇宙大怪獣ギララ』前半では、宇宙の夢がパンパンに詰まっていた時代の、牧歌的な宇宙の冒険がたっぷりとした尺を使って描かれる。メカニックや宇宙空間の描写にも力が入っているのだが、同時に月面での檜風呂あり、美人クルーとのロマンスありと、不思議なバランス感覚になっている。

肝心のギララは、頭に宇宙船を乗っけたような最高にクールなデザインだが、よくわからないまま出現し、よくわからない物質で倒される。映画全体から「映画は、理屈じゃない!」というオーラが漂っており、マイナスイオン的な癒し効果がある一本となっている。

『シン・ギララ』は怪獣としての魅力を生かした本格的な怪獣映画に……

で、このギララという怪獣、デザインも最高だし、何より胞子から成長し、無限にエネルギーを吸収して成長していく、という設定もインパクトがある。物語の朗らかな空気感に引っ張られているが、実は手に負えない最強怪獣なのだ。

『ギララ』は、河崎実監督によるコミカルな『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』(2008年)として一度リメイクされているが、次はギララの怪獣としての魅力を生かした本格的な怪獣映画『シン・ギララ』を見てみたい……というか、実はそんな内容の物語を書いたことがある。2022年に発売された松竹特撮のファンブック「ギララ・ゴケミドロ・昆虫・髑髏船 オール特撮大図鑑」に寄稿した絵物語「ギララ2022」がそれだ。通販などで購入できるのでぜひ。

ガッパの眼は、人ほどにものを言う

怪獣ブームも活況極まる1967年に、日活が満を持してドロップしたのが『大巨獣ガッパ』である。ガッパは、オス、メス、子供の3体が登場し、離れ離れになった怪獣の家族が再会するまでを描くという「親子もの」で、言うなれば「お涙頂戴」な作風という珍しい怪獣映画になっている。

特撮の見どころも満載で、ミニチュアで再現された熱海上陸シーンの街並み、家族が再会する羽田空港の広大なセット、ゴジラさながらの火炎放射に、ラドンばりの瓦吹き飛ばしと、さまざまなシチュエーションで気合の入った特撮を見せてくれる。そして、何よりガッパの造形が良い! どこか憂いを帯びた水晶玉のような眼が、着ぐるみであることを忘れてしまうほどの感情を宿しているのだ。

そしてこの『ガッパ』、音楽も個性的。主題歌の「大巨獣ガッパ」は、美樹克彦さんが濃いめに歌うベンチャーズ風のロックナンバーでインパクト大、仔ガッパとの再会シーンでは物悲しいフォークソング「がんばれ仔ガッパ」が流れて感動シーンをベタベタに加速させる。

ぜひ『シン・ガッパ』は、『レ・ミゼラブル』(2012年)ばりに壮大な、世界初の怪獣ミュージカルとして制作していただきたい!

文:タカハシヒョウリ

『宇宙大怪獣ドゴラ』『宇宙大怪獣ギララ』『大巨獣ガッパ』『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』はCS映画専門チャンネル ムービープラス「特集:2か月連続!特撮映画」で2023年3月放送

© ディスカバリー・ジャパン株式会社