山本耕史・松下優也W主演 ミュージカル『太平洋序曲』上演中 黒船来航、怒涛の時代、日本は何処へいくのか

ミュージカル『太平洋序曲(Pacific Overtures)』が開幕、好評上演中だ。
スティーヴン・ソンドハイムが作曲と作詞を手掛けた『太平洋序曲』は1976年1月11日、ブロードウェイのウィンター・ガーデン劇場で初演を迎え、1976年度のトニー賞の衣装部門と舞台美術部門で賞を獲得した。その後、彼の代表作として繰り返し上演。

このタイトルの意味『Pacific Overtures』の「Overtures」、序曲のほかに、交渉開始、提案、申し入れの意味がある。つまり、幕末の諸外国との交渉を描いている。2幕ものだが、本公演は1幕(「菊の花茶」がカット)。だが、それによって主要登場人物である香山弥左衛門とジョン万次郎の二人の関係性がより強調されているように感じる。

狂言回しの松下優也(山本耕史とWキャスト)のパワフルな歌唱、日本が紹介される。映像演出、浮世絵的なタッチの絵、象徴的でシンプルなセット、この舞台美術だけ観ても飽きないが、特筆すべきは、やはりスティーヴン・ソンドハイムの楽曲であろう。キャッチーで耳に残るメロディであるのはいうまでもないが、西洋の音階と日本の音階の違いをうまく活かし、楽曲だけでも十分に世界観を表現しているが、俳句を歌詞にしている『Poems 』、もちろん、ブロードウェイミュージカルなので英語の歌詞であったのだが、日本語に、しかも俳句に戻す、という二重の意味での驚きと感動。また、『Four Black Dragons』、黒船をドラゴンに喩えているのだが、アメリカ合衆国海軍東インド艦隊の蒸気船2隻を含む艦船4隻、当時の人々の驚愕と恐怖と不安が入り混じった感情をダイナミックに描いた楽曲、これも聴きどころではあるが、全ての楽曲が聴きどころ、と言っても過言ではない。しかも難易度の高い楽曲が多く、キャスト陣の稽古の成果、聞き応えのある歌唱となっている。

この作品が創られた1970年代後半は日本の高度成長期から「japan as NO.1」へ移行する時代、ソニー、トヨタといった企業が時代の寵児へと駆けあがろうとしていた頃。だが、今は21世紀になり、20年以上が経過している。黒船来航、それまで鎖国をしていた日本が急速に、ドラスティックに展開、それは現代に連なる。

香山弥左衛門とジョン万次郎、出会い、友人関係になったが、香山は西洋に傾倒し、ジョンは武士道に進んでいく。そして時代の渦に飲み込まれ、引き裂かれていく。この二人を軸にした物語、あらゆる意味での「Overtures」、コミカルなシーン、シニカルに感じる場面もあり…ところどころで客席から笑いも起こる。スピード感のある展開、アートな映像、立体的でありつつもファンタジック、そして目まぐるしく変化するところもあり、日本はこれから何処へいくのか、そんなことを想像させてくれる、新しい『太平洋序曲(Pacific Overtures)』、それはぜひ、劇場で目撃して欲しい。公演は日生劇場にて29日まで。大阪は4月8日から開幕。

概要
日程・会場:
東京:2023年3月8日〜3月29日 日生劇場
大阪:2023年4月8日〜4月16日 梅田芸術劇場メインホール
作詞・作曲:スティーヴン・ソンドハイム
脚本:ジョン・ワイドマン
演出:マシュー・ホワイト
出演:
狂言回し 山本耕史・松下優也(Wキャスト)
香山弥左衛門 海宝直人・廣瀬友祐(Wキャスト)
ジョン万次郎 ウエンツ瑛士・立石俊樹(Wキャスト)
将軍/女将 朝海ひかる
[老中] 可知寛子/ [たまて] 綿引さやか/ [漁師] 染谷洸太/ [泥棒] 村井成仁/ [少年] 谷口あかり/ [提督] 杉浦奎介/
[提督] 武藤寛/ [提督] 田村雄一/ [提督] 中西勝之/ [提督] 照井裕隆/ [水兵] 藤田宏樹/ [少女] 井上花菜(登場順)

企画・制作・主催:梅田芸術劇場

HP:https://www.umegei.com/pacific-overtures/

舞台撮影:金丸雅代

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