悪い決算の翌日に株価が上昇…悪材料出尽くしで買いに転じたは本当なのか?

株トレードにおいてエントリーや利益確定を判断する根拠は、多ければ多いほど、その精度は上がっていきます。

そこで、副業アカデミー「株式投資講座」の講師を務める山下勁 氏の著書『株チャート最強の教科書』(SBクリエイティブ)より、一部を抜粋・編集してトレードのテクニックについて解説します。


入り口を間違えたと気づいた瞬間に潔く損切りを!

■どうすれば損切りできるようになるの?

「損切りができない。どうすれば損切りができるようになりますか?」

これはもう、イヤになるほど聞いた相談です。

「持っていれば元に戻るから」というのが、損切りができない大きな理由のようです。

しかし、株価はそんなに都合よく動いてくれません。含み損を抱えるということは資金が束縛され、「ここぞ!」というチャンスに参戦できないということです。

損をプラスマイナスゼロにできるかもしれないのに、資金がなくてトレードできないなんて、もったいないと思いませんか?

■損切りする要因はエントリー時にある

「上がると思って買ったのに、下落してしまった」
「下落すると思って売ったのに、横ばいになって上昇してしまった」

そんなことは、誰もが必ず経験することです。トレードをしていれば損切りは避けて通れない道です。そう思って潔く、ロスカットしましょう。

そもそも、損切りをしなければならない状況に陥った原因は、かなりのケースでエントリー時の判断にあります。

根拠が揃わないのになんとなく買ってしまったとか、誰かにすすめられて売ってしまったとか……。入り口が間違っているのですから、当然、思うような出口に到達できるわけがありません。

入り口を間違えたと思ったら、即損切りです。

例を挙げておきましょう。

チャート(1)ソフトバンクG の日足

チャート(1) は2021年9~12月の ソフトバンクグループ(9984)の日足です。

知人から、こんな相談を受けました。

「Bで買ったのだが、ずっと持っていたら下がってしまった。どこで損切りしたらいいの?」

相談を受けた日はチャートの右端、12月3日です。かなり下落していました。

買った理由を聞くと「有名な投資家が買えば上がると言ったから」でした。

みなさんがその知人と同じ立場だったら、どこで手じまいをしますか?

僕なら、 入り口を間違えたと気づいた瞬間に損切り します。

第一に、Bでは買えません。Aの終値が6161 円、Bの始値が6960円、799円の上昇、約13%の上昇になります。

前に株価は基本的に8%で上下する、年に数回16%動くことがあり、それは大底、天井と考えていいと話しました。それが13%の上昇となると天井圏とも考えられる局面です。

そして、ここで買うなら出口はどこでしょう?

もし、僕が買うとしたら(この場面での買いは僕ならやりませんが……)、出口は前の高値に並んだところと決めておきます。ですから、翌日、手じまいです。

■エントリーしたら損切りも決めておく

僕は損切りすることに迷いはありません。エントリーしたら、出口と同時に損切りも決めておくからです。

実際に僕がトレードをした TDK (6762)の チャート(2) を使って説明しましょう。

チャート(2)TDK の日足

僕なら、Aで売りのエントリーです。

理由は、前の高値を陰線で抜けているからです。ここで空売りを入れ、5000円の節目までは「売り上がり」を仕掛ける作戦です。

売り上がりとは、株価が上昇するごとに売り増しし、平均の売り値を上げ、大きな売却益を狙うという手法です。上級者の手法といえるでしょう。

そして、エントリーした時点で、すでに損切りラインを決めていました。

まず、Cのときに、Bのような横並びの株価になり、ローソク足が5本連続したら損切りです。幸い、Cの次からは陰線が並び下落していきました。

もしも、下落したのが戻ってきて、Cの水準でローソク足が横に並びだしたら5本を数え、損切りします。

また、Cから上昇したら、5000円の節目まで売り上がります。5000円の節目でBのような横並びになったら、ここでも損切りです。

このように、エントリーするときには同時に損切りラインを決めているので、あとはそれに従います。自分が決めたルールに従うだけなので、僕にとって損切りは特段難しいことではないのです。

2連続のコマは上げ止まり、下げ止まりのサイン

■3連続のコマや十字線の出現も

「コマ」というのは、始値と終値の幅(実体)が短く、上下にヒゲのついたローソク足のことです。コマは、その日の値動きが少ないことを表しています。

僕は、 上昇トレンドで実体の短いコマが2 つ続いて現れたら、上げ止まりのサイン と見ています。また、 下落トレンドでも2連続コマ が出た場合には、同様に 下げ止まりのサイン と見ています。

なお、 3連続のコマや十字線 (始値と終値が同じで、上下のヒゲの長さもほぼ同じ)が出現することもあります。

上げ止まりのサイン(電通の日足チャート)

■「様子見したい」という投資家心理

上昇トレンドで2連続のコマが出る場合、その前には、たいてい陽線(下落トレンドでは陰線)が出現しています。

買い勢力のほうが強い陽線、売り勢力のほうが強い陰線のあとで、コマが2つ並ぶのは、 「ちょっとひと休みしたい」「様子見したい」 というムードなのでしょう。株式ニュースでは、よく「気迷いのコマ」などと表現されますが、方向感を探って、買いと売りが拮抗している状態なのです。

様子見したあとで、「やっぱり、ここまで買い(売り)勢力が強かったな」と考え直し、トレンドが転換していく可能性は高いのです。

上昇トレンドで 2連続コマは上げ止まりのサイン 、下落トレンドで 2連続コマは下げ止まりのサイン と見て、トレードの根拠のひとつにしてみてください。

下げ止まりのサイン(旭化成の日足チャート)

3連続陰線が出現すると1日反発しやすい

■売りのエントリー後に3連続の陰線が出たら

空売りの話をしたところで、ちょっとした知って得するワザを書いておきます。

数多くのチャートを検証して判明したのですが、 3連続の陰線後には陽線が立ち、株価は1日反発する可能性が高い ということです。

そこで僕は空売りで入ったとき、3連続陰線の翌日、陽線が出現したら、反発されるのがイヤなので、いったん手じまいしています。

次ページの チャート(1)SMC (6273)の2021年9月~ 22年2月までの日足です。

1月5日に高値7万9250円 を付けています。ここで天井圏を示す2つのコマが出現。僕は、前の高値から考えて8万円付近で売ろうと強く考えていたのと、 約2カ月で6万6000円から7万9000円まで20%も上昇 しているため、ここで売りエントリーをしました。

出口は新値更新を数えます。ところが、この日から 陰線が3連続 し、陽線が出たので、 1月12日 に3分の1を買い戻して利益確定しました。

残りですが、出口は新値更新を数えます。新値更新5日以降に逆の色のローソク足つまり陽線が立ったら利益確定です。そこで 20日の陽線でさらに3 分の1を利確 しています。

そして 1月27日 は、前の安値10月13日の6万1170円にほぼ並んだので利益確定をして手じまいにしました。

チャート(1)SMCの日足

■3連続陰線のあとの上昇は様子見してもいい

なお、反発しても1 日だけなら翌日からまた下落すると予測できるので、手じまいをしなくてもいいのでは?と思う方もいるでしょう。僕は慎重を期して、3分の1を利益確定しましたが、3連続陰線のあとの上昇は様子見をしてもいいでしょう。

またこのワザを使って、3連続陰線後、翌日に高く始まり、陽線になりそうなら、午前中に買いを入れ、引けで利益確定というデイトレもできるかもしれません(僕はゆったりトレードをしたいのでデイトレはやりませんが)。

■週足でエントリーして週足で利益確定する

おすすめなのは、 週足チャートを見てエントリーして、週足で利益確定をするというトレード です。

月足チャートの場合は、3連続陰線の出現を待っている間に、四半期や本決算をまたいでしまいやりづらいので、週足でトレードします。

チャート(2) は、 エムスリー (2413)の週足です。

2021年の9月から10月にかけて、9000円付近から3連続陰線で下落しています。週足でも、 3連続陰線が出現すると1週反発しやすい というテクニックが使えます。

週足の始値、終値は、それぞれ週明け(月曜営業なら月曜日)の始値、週末(金曜営業なら金曜日)の終値です。

この場合の週足3連続陰線の3本目は、終値7312円(10月8日金曜)。ここで買って1週間保有すると、翌週には陽線が立ち、終値7471円(15日金曜)、約2%の利益です。

2%の利益を少ないと見る人もいるかもしれませんが、これを 1年で10回繰り返せば20%の利益 になります。みなさんには、こういう利益を着実に積み重ねていって、資産を増やしていってほしいと思います。

チャート(2)エムスリーの週足

「3カ月以上の下落」+「悪決算」はチャンス!

■決算が悪かったのに翌日上昇したら

これも、知って得するワザとして覚えておくといいでしょう。

3カ月以上、続落している銘柄で決算がよくないと決算発表の翌日、さらに大きく下落して株価は底値圏になる傾向があります。つまり、底値圏で買えるチャンスが来る可能性が高いというわけです。

これと反対に、決算が悪かったのに翌日上昇することもあります。そんなときには「悪材料出尽くしで上昇に転じた」などという人がいますが、本当に「悪材料出尽くし」と言っていいのでしょうか?

悪材料が出尽くすには、もう一段の下げが本来は必要 です。悪い決算を嫌気した売りが出尽くして、買いの勢力が旺盛にならなければ上昇には向かっていきません。

それなのに翌日、下落しないで上がるのは、まだ悪材料を含んだまま上昇している可能性が考えられます。ですから、いつまた下げに転じるかわからないのです。 「悪材料出尽くし」という言葉に惑わされ、あわてて買わないように してください。

■3カ月以上の下落+決算でドカッと下がる

話を戻しましょう。 3カ月以上の下落が続き、悪い決算が出たら、翌日を待ち、ぐっと下げたら買いを検討 します。

買えると判断できたら、午前中ではなく、後場の引け間際(15時近く)まで、株価の動きが落ち着くのを待って、エントリーしてください。下げ止まったように思えても、後場、上昇に転じたり、さらに下落したりする可能性もゼロではないからです。

■決算後の暴落で買いエントリー

チャート(1)大塚商会の日足

チャート(1)大塚商会 (4768)の2021年11月~ 22年2月の日足です。1月から1カ月で約20%も急落しています。

同社の2021年12月期決算の発表日は2022年2月1日でした。

決算は売上高が8518 億9400 万円で対前期比1.9%増、ところが営業利益は558億2700万円で対前期比0.9%の減、通期業績予想も売上高、営業利益、経常利益、当期純利益のすべてが減益でした。

2月2日の株価は675円安の4010円と暴落しています。

僕は続落をずっと観察して、 決算後に暴落すれば4000円の節目が底値圏と予測。 そこで、決算発表の翌日、4010円まで下落した時点で買いを入れました。

利益確定は、新値更新を数えて4日陽線で上昇、逆の色の陰線が出た2月16日に終値4405円で手じまいしました。

チャート(2)エムスリーの日足

上の チャート(2)エムスリー (2413)の2021年11月~ 22年2月の日足です。2021年10月から3カ月以上、下落が続いています。

3月期の第3四半期決算の発表は、2022年2月2日15時でした。

売上収益1541億6900万円(前年同期比24.6%増)、純利益561億6900万円(前年同期比110.3%)。決して悪い決算とはいえません。

しかし、2021年10月27日に発表された3月期第2四半期の決算では売上収益976億4700万円(前年同期比30.2%増)、純利益407億8800万円(前年同期比177.3%)でした。

第2四半期と比べると、利益率の伸びが鈍化しています。これが嫌気されたのと、2023年3月期の決算では減益は避けられないとの見方が多くあったことで、翌日は大きく下落したのです。

決算発表日2月2日には前日の終値4506円から414円安の4092円まで下げています。 翌3日に買って(終値4092円)、1日で5%以上の利益を得て、4日(終値4344円)に手じまい です。

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著者:山下 勁
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