飯塚正彦さんオンライン作品展 「唐辛子島を愛す」 

「+62」選、飯塚正彦さんのオンライン作品展です。ユーモラスで、くすっと笑いを誘う作品もあれば、飯塚さんの心象風景を表したかのような幻想的な作品もあります。飯塚さんの愛したロンボク島、ロンボクの自然と人々への温かいまなざしが、一枚一枚の絵に凝縮されています。(文・池田華子、写真提供・飯塚成美さん。仮タイトルは、整理のために成美さんが付けたものです)

「野に立つ少女(仮)」(2002年)
緑豊かな南国の自然の中に立つ少女。熱帯の生命力が画面全体を明るく包み、赤いハイビスカスと少女の青いサルンの対比が美しい。成美さんが「好き」と言う一点。

「海辺の村の暮らし(仮)」(2008年)
海辺の人々の生活が細かく丁寧に描き込まれている。小舟の脇に座る男女、浜辺での凧揚げ、馬車(チドモ)、海に飛び込む子供たち。いつまでも見飽きることのない楽しさに溢れている。

「Mo-BALI-Sa 2」(2008年3月)
「モナリザ」ならぬ「モ『バリ』ザ」。バリ衣装を身に着け、バリの石像に手を置くモナリザ。その背景も、モスクやバリ寺院が立ち、カキリマが道を行くインドネシアの風景画で、ニヤッとさせられる。

「果物売りの少女(仮)」(2009年)
マンゴーの実に似た形の葉を茂らせた木の下で、かごに盛られた熱帯の果実を売る少女。画面全体を包む若草色のグリーンが美しい。淡い背景が、夢の中にいるよう。

「チドモも走る丘の道(仮)」(2011年1月)
単純化された線と色で描かれた「ザ・ロンボク」な風景。視線を切り取る水平線、道を走って来るチドモ、高床式の伝統家屋。草の上に犬が寝転んでいる。平和な、満ち足りた日常だ。

「空気清涼水清し(仮)」(2013年)
水平線から太陽が昇って来る、まるで絵本の挿絵のような風景。ややくすんだセピア調の色合いが郷愁を誘う。地面へのスポッティングが、リアルな「土」の感じを出す効果を上げている。

「天高くジャンプする鯨(仮)」(2013年)
輝く太陽に向かって、リンジャニ山の麓からツバメが雲に乗って、クジラとイルカが海の波に乗って、飛翔する。下にはうっすらと、飯塚さんの好きなモチーフだった人魚の姿が。大胆な構図で描かれた、幻想的な絵。

「異種なれど共に生きん(仮)」(2015年)
天井画のような円形の絵。丸い地球を象徴するかのように円形の水平線が描かれ、絵の舞台は海。その中でサルたちが釣りをし、サーフィンをし、イルカに乗ったり、海で泳いだり、生き生きと躍動している。

「牛に乗って海辺を散歩(仮)」(2016年)
笑っているようなユーモラスな顔をした牛の上に、風車を手にした少女が座る。全体に施されたスポッティングで、浜辺の砂を表現し、絵に立体感を与えている。

「ロンボク島の日常(仮)」(2012年)
「これぞロンボク」という風物を集めた絵。リンジャニ山、チドモ、高床式の家。そうした中で、鶏の背中にひよこが乗っていたり、川に飛び込む人のお尻と足だけが見えている、といった遊びが楽しい。

「ヨガ図-2016」(2016年)
何点かある「動物たちのヨガ」のうちの一点。それぞれの形を活かした、思い思いのヨガ・ポーズがおかしい。特に、タコが傑作。バリ島固有の鳥、シロカンムリムクも翼を伸ばしている。

「リンジャニ山 3726m」(2016年)
ロンボク島の名峰リンジャニ山。厚く覆った雲の上に、山の頂だけが頭を出し、火山湖の中で噴煙を上げる新山の姿も見える。雲の下は緑豊かなロンボク島。

「鶏を抱く少女(仮)」(年次不明)
熱帯の果樹に囲まれた家、その前に少女が座っている。赤土の色をした背景が印象的だ。赤い背景の中から黄色い服の少女が浮かび上がって見える。

「牛王国図改 南国版シ」(2013年5月)
長い浜辺に寄せる波を、上から俯瞰した構図で描く。濃紺の海から波頭へと変わる所のジグザグ模様のような表現が面白い。黒色に近い海、その上を厚く雲が覆っている。

「海中小惑星 南国版イ2」(2017年)
水の惑星である地球を表すかのよう。海底から海面までを、さまざまな魚たち、クジラ、ウミガメ、人魚がぎっしりと詰まって泳ぐ。画面下にはロンボク島でも見られる美しいサンゴ礁。

「椰子山水図 南国版 4」(2017年)
画面中央を雲が厚く覆い、岩山からヤシの木が生え、滝が滝壺に落ちている。綿のような白雲、滝の水の白、滝壺の青が清々しい。静謐な絵だ。日本の家の床の間に掛けてもぴったり収まりそうだ。

「旭日鳳凰図 南国版7」(2018年)
南国らしい幻想画。リンジャニ山の新山から立ち上る噴煙が極彩色のガルーダの尾になり、ロンボクの空を飛翔する。リンジャニ山の縁には太陽がかかり、ふんわりした雲が山を包んでいる。下はヤシのジャングルだ。

「海上小惑星 南国版十二」(2018年)
海上に小島が浮かび、空も海も真っ赤に染められている。島影が鏡のように真下に映り、その上をカモメが一羽。こちらへ向かって来るカモメ、背景の島影と赤色が強烈な印象を残す。

「紅花渦巻 南国版13ケ」(2018年)
ハイビスカスの葉、花、茎が茂って渦をなし、その先には白い雲に縁取られた青空が見える。青空の中に白い蝶が一羽。ハイビスカスのトンネルをくぐって、空まで飛翔したくなる。

「鳥獣ヨガ図 南国版27 せ」(2020年)
これも「動物たちのヨガ」シリーズのうちの一枚。蓮の葉の上にはカエルが一匹ずつ、手前にはヤモリまでもが、ヨガのポーズ。一匹ずつの表情とポーズが、いちいちユーモラスで、笑ってしまう。

「芭蕉並木図 南国版11,17」(2018年)
赤土の道が地平線まで続いている。緑濃く、道を覆うようにして、両側に立つのはバナナの木。花や実を付け、若木も見える。バナナの並木道は、緩やかに、楽しげにうねり、ここを歩いて行きたくなる。

「お店番(仮)」(年次不明)
バナナの葉をかぶせたサテ、瓶に入ったサイコロやカラフルなボールなどの並ぶ雑貨屋さんで、物思いにふける二人の少女。姉妹だろうか。話しかけたくなるような表情をしている。

「ロンボク クタ海岸(仮)」(年次不明)
飯塚さんが家族で遊びに行った、ロンボク島クタ海岸のマウン・ビーチ。ピンクがかった白砂に青い海。波打ち際で波が遊ぶ様子の表現が繊細だ。成美さんは「北斎の波を自分なりに表現したものだろう」と言う。

「海辺の市場(仮)」(年次不明)
海辺の賑やかな市場を描く。魚や陶器など、さまざまな商品が運ばれ、売り買いされている。屋根の上の猫、浜辺を駆ける犬など、細部までもが楽しい。絵の中に入って行けそうな気がするリアルさ。

「蛙と遊ぶ少女(仮)」(年次不明)
丸い池の中をカエルと少女が泳いでいる。カエルの頭、少女の顔と右手とお尻だけが水面上で、その他が水面下の影として描かれているのが面白い。ユーモラスな、この「水中」シリーズも何枚かある。

「急げチドモ日暮れは近い(仮)」(年次不明)
疾走するチドモを地面から見上げるような角度で描いた、珍しい構図の絵。シャンシャンと鈴を鳴らしながら、ゆったり走るイメージのチドモだが、実際は、地元の足として大活躍。御者の険しい顔つきと、馬の必死な表情がいい。

「市場の喧騒(仮)」(年次不明)
人でいっぱいのにぎやかな市場を、また別の構図で描いた絵。毎朝パサールへ行くのを日課にしていた、飯塚さんの観察眼が活かされている。それぞれの人にモデルがいるのだろう。ピンクがかった赤土が優しい。

「樹下に憩う3人のヒンズー少女(仮)」(年次不明)
これが、飯塚さんと成美さんとの間で「大げんかになった」という絵。真ん中の少女の顔が「ちょっと似ていない」と成美さんがコメントしたのが、けんかの発端。今は、成美さんの寝室に飾られている。

「水豊かな田園(仮)」(年次不明)
ロンボク島に行くと、田園の広さに驚く。この絵では、そうした広大な田園、木の生い茂る丘、オレンジ色の屋根の家を描く。田園での豊かで穏やかな暮らしが伝わってくる。

「唐辛子島 ロンボク(仮)」(年次不明)
ロンボク島の絵地図。名所や特産物が細々と描き込まれていて、隅々まで楽しい。いろいろなバリエーションがあり、バリ島を描いた物もある。お土産として人気だった作品。

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