屈辱の大敗、ダブルOTの劇的勝利、試されるアルティーリ千葉

2月26日にウイング・ハット春日部で行われたB2の首位攻防戦、越谷アルファーズ対アルティーリ千葉の一戦は、ほとんどの人が予想しなかったような越谷の一方的勝利となった。101-60。41点差。試合前の時点で31勝11敗の成績を収め東地区2位につけていた越谷が、32勝10敗で同地区トップのA千葉を完膚なきまでに叩きのめした。

A千葉はこの前日、第23節のGAME1でも77-90で越谷に敗れている。両者の直接対決は現時点で2-2のタイだが、負け方が負け方だけに試合後A千葉のアンドレ・レマニスHCは言葉少なめという以上に、あ然としたような様子だった(両チームは得失点差で越谷が+43となり、タイブレーカー上は圧倒的優位という関係性になっている)。

「今日は短い総評になってしまいます。今日は1チームが良いプレーをしました。うまくできなかったチームよりも越谷の頑張りを称えましょう。間違いなくこの試合では、あらゆる側面で上回られました」
"It'll be obviously a very short review. There is one team out there tonight that played well. Credit to Koshigaya for the way they came out and played, than one team that wasn't good tonight. And certainly we are..., got outplayed in every area for the game."

こんな総評の後、レマニスHCは会見を早く切り上げたかっただろう。それでも仕事柄、点差がこれほど広がった理由を尋ねると、「努力と心持ちです(It comes down to effort and mindset)」という短い答え。その後しばしの沈黙から、この敗北が普通の黒星と違う意味を持つことがこちらの胸にも突き刺さるように伝わる。

両者の対戦は昨年10月26日の初対戦、12月26日の2度目の対戦ともA千葉が2桁点差を逆転して勝利していた。初戦はウイング・ハット春日部でオーバータイムの末85-80というスコア。バルドラール浦安アリーナでの二度目は、第4Q開始時点での15点ビハインドから94-88でホームコートを守った。どちらの試合もどちらが勝ってもおかしくない経過だっただけに、41点差の結末はあまりにも意外だった。

予想外の大差で敗れた2月26日の越谷アルファーズ戦は、アルティーリ千葉にとっては打ちのめされるような展開だった(写真/©B.LEAGUE)

大敗の翌日、小林大祐はその悔しさを素直に表現している。「40点差の負けはない。これまでなかったですよ。個人的には確か、茨城(ロボッツ)時代に群馬(クレインサンダーズ)に28点差というのがあったように思いますが…。どんなに良いときと悪いときが重なっても40点差は屈辱です。それも首位攻防戦ですから」

その翌週、A千葉はホームに戻って福島ファイヤーボンズを迎え撃った。14連勝、4連敗、7連勝、そして首位攻防戦での屈辱的な大敗を含む2連敗という大きな波に揺られた後、相手の福島は3連勝でB2東地区3位につけている危険な相手だ。その上GAME1前日の3月3日には、ファンからの人気も高かったコービー・パラスが双方合意の上で契約を終えるというニュースも流れていた。A千葉ファンには気を揉んだ人も多かったのではないだろうか。

\--{クラブ初となるダブルOTでの勝利}--

クラブ初となるダブルOTでの勝利そんな状況での一戦は死闘という言葉がふさわしい大激戦となった。前半はA千葉がインサイドでの得点を軸に44-34と10点リードでハーフタイムを迎えたが、後半は福島のシューターたちが高確率で3Pショットを成功させ、83-83の同点でオーバータイムになだれ込む。その最初の5分も勝負がつかず、最終的にはダブルオーバータイムの末にA千葉が110-107で勝利した。ダブルオーバータイムによる勝利はクラブ創設後初のことだ。

3月4日の福島ファイヤーボンズとのGAME1、負けられない一戦で37得点と爆発的な活躍を披露したブランドン・アシュリー(写真/©B.LEAGUE)

試合終了の瞬間レマニスHCは、勝利を確かめるかのように、緊迫感で強張った長身をしばし折り曲げて両手でホームコートのフロアをなでるような仕草を見せていた。フィールドゴール17本中15本とフリースロー9本中7本を成功させて37得点、10リバウンドを記録したアシュリーはモンスターと呼べる大活躍。キャプテン大塚裕土は73-79と6点差を追う第4Q残り2分32秒から、クラッチスリー2本を沈め仕事人ぶりを発揮した。

試合後の会見でレマニスHCに前節からの一週間の様子を聞くと、「先週の日曜日は恥ずべき結果で、乗り越えるのがとても難しかったです(That was embarrassing last Sunday. Like that was difficult to go through.)」と正直な言葉が帰ってきた。「あんなパフォーマンスの後は丸ごと一週間、次にプレーするまで肩に重くのしかかってくるものです。あれは我々の本来の姿でも、ありたい姿でもありませんから(And then a performance like that I think sits on us heavy on the shoulders for the entire week until you get to play again. It's not the representative of who we are or who we want to be as a team.) 」

苦しんだ一週間だったがその間の練習成果が福島とのGAME1で出たことをアンドレ・レマニスHCは語っていた(写真/©B.LEAGUE)

シーズン半ばの7連勝という経過の中で、どこか練習にも馴れ合いが生まれていたかもしれない。まだ何も成し遂げていないのに、いつの間にかすべてがうまく行っているような気がしてしまう。そういう状態だったかもしれない。レマニスHCはメンタル面のほころびを感じていたことに触れながら、福島にダブルオーバータイムで勝てたことは、それ自体が自信になるとほっとした表情を浮かべていた。

一方、第4Qのビッグショット2本を含めこの試合で12得点(試合を通じての3Pショット成功は3本)を記録した大塚は、別の視点からチームを見つめていたようだ。

「気持ちを上げていくのも大事なんですけど、もう少し相手の弱みを自分たちが理解したり、見つけたり、話し合って実行できるのが、プレーオフを勝つために大事だと思います。そうしないと越谷戦のように良くない雰囲気になったときに、誰も打破できなくなってしまいます。そういうところで今週は量(を増やすこと)やコミュニケーションをしていました」

こちらも3月4日の試合から。大事な場面でキャプテンらしくビッグショットを成功させた大塚裕土(写真/©B.LEAGUE)

それが福島とのGAME1に現れたという。「我慢してやり続けるというのは、今日の結果として出せたんじゃないかと思います。僕自身が熱くなりました(コンタクトプレーで感情をあらわにした場面があった)が、あんなことも戦う姿勢を見せる意味で大事だと思うので、よかったです」

\--{第25節は熊本ヴォルターズと初対戦}--

第25節は熊本ヴォルターズと初対戦

A千葉は翌日のGAME2にも90-80で勝利。第24節を終えた段階で、西宮ストークスとの連戦をスプリットで終えた越谷との順位が入れ替わり、東地区首位の座を取り戻している。

次戦は西地区3位の熊本ヴォルターズ(26勝19敗、勝率.578)とのアウェイゲーム。ここまで対戦がなかった相手だ。福島との2試合では3Pショットを79本打たれ28本決められたが、熊本には現在B2で3P成功率2位の谷口光貴(39.5%)というシューターもいる。

福島とのGAME2で3Pショット2本を含め13得点を記録し、相手のガードに対し正面に立ちはだかる好ディフェンスをたびたび見せていた大崎裕太は、その熊本戦に向けて「3Pシューターもいますし、打たせてはいけない選手には40分間打たせないように僕個人も意識しないといけないし、チームの全員がわかるようにしなければなりません」と話した。

3月5日のGAME2で厳しいディフェンスを見せる大崎裕太(右は高橋祐二、写真/©B.LEAGUE)

チームとしての姿勢とプレーの精度をどのように維持して臨めるか。B2王座獲得とB1昇格に向け、試される週末が続く。

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