怒鳴るナイフ男「たった100万円か」…窓口担当ひきつり全員総立ち じつは訓練、大迫力過ぎて新たな不安が

郵便局で強盗訓練。男が突然ナイフを振りかざした=3日午後、川口市鳩ケ谷桜町郵便局

 「たった100万円か。もっと出せ。早くしないとガソリンをまくぞ」。長身の男が怒鳴り、カウンター越しに対面した職員たちの顔が恐怖でひきつった。3日午後4時過ぎ、埼玉県川口市桜町の鳩ケ谷桜町郵便局で強盗訓練が行われた。店内にいた男が突然、刃物と液体が入ったペットボトルを振りかざして金を要求する―という想定だ。

 2日には、同市内の並木郵便局で男が職員を切り付けた強盗事件があったばかりで、職員も真剣な表情で訓練に臨んだ。新型コロナウイルス感染防止用の透明のカーテン越しに、カウンター内で職員8人が総立ちとなり、男を見つめた。

 職員らは警察に通報する一方で、犯人役の男に100万円の束を追加し計200万円を渡した。男は入り口から走って逃走した。直後に武南署員が到着して、犯人の行動や服装、人相などを聞いてメモを取った。

 犯人役の服装は黒いニット帽、黒いズボン、紺色のジャンパーで白いマスク姿だった。しかし、職員らの記憶は、黒いマスク、茶色のズボン、眼鏡をかけていたなど、肝心なところで事実と違った。署員が「犯人の靴の色は」と聞くと、職員らは「見えなかった」と答え、さらに不安な表情に。

 模造ナイフを振りかざし「金を出せ」と、迫真の演技で怒鳴った男は、武南署生活安全課係長の阿部岳志警部補(42)。阿部さんは「皆さんご苦労さまでした」と笑顔に戻り「記憶が違っていても大丈夫です。ここにはたくさん防犯カメラがあって、全部犯人は写ってますから。すぐに捕まえます」。

 笠原洋之局長(49)は「阿部さんは普段は優しい人だが、訓練ではすごく緊張した。これを機に防犯意識を高めていきたい」と話した。

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