立田山のイノシシ減少? 熊本市、官民連携で「捕獲作戦」 被害や目撃情報も少なく

箱わなによって捕獲された立田山のイノシシ(熊本市提供)

 熊本市の立田山で急増していたイノシシが減り始めているようだ。10年前に姿を見せて以来増え続け、年間捕獲数が100頭を超えることもあった。住宅地が近く猟銃が使えない中、市による箱わな設置と住民を巻き込んだ捕獲作戦が奏功した。市は手を緩めずに今後も捕獲を続ける。

 立田山のイノシシは2013年12月、森林総合研究所九州支所(熊本市)が仕掛けたカメラで初めて確認。出没エリアは徐々に広がり、住宅街で田畑や家庭菜園を荒らすようになった。

 捕獲数は、15年度8頭、19年度86頭と増加。しかし、20年度の131頭をピークに減少に転じ、21年度が80頭、22年度は12月末までに61頭となっている。農作物の被害や目撃情報も昨年12月末時点で6件にとどまり、ピーク時の3分の1以下。熊本市は、捕獲数や目撃情報の減少は生息数が減ったためとみている。

 減少の要因は、徹底した箱わな設置と民間の駆除隊と地元自治会の協力だ。19年度から箱わなでの捕獲を強化し、おびき寄せる餌の状況やケージの誤作動を確認するため、駆除隊員や住民らが週1回は見回るようにした。ケージが閉じると市担当職員のスマートフォンに情報が届くシステムも導入し、効率化を図った。現在、箱わなは30基で、21年11月には通学路に約400メートルの電気柵も設置した。

 立田山の北側に当たる清水校区第6町内自治会は、イノシシの好物で住宅地に出没する原因でもある竹林のタケノコを管理するため、タケノコ掘りと放置竹林の伐採に取り組む。

 「住民の安全にイノシシ問題の解決は不可欠。見かける数は明らかに減った」と藤井由幸会長(73)。市鳥獣対策室も「箱わなの見回りや竹林整備など、住民や駆除隊との連携が効果を上げている」と手応えを口にする。

 森林総合研究所によると、立田山では江戸時代までイノシシが生息していたが、明治時代以降に狩り尽くされた。しかし、ドングリや根茎類など餌が豊富で、水や隠れる場所もあるため、再び増えたとみている。

 同支所の安田雅俊・森林動物研究グループ長は、イノシシがわなを避けるようになったため捕獲数が減っている可能性が否定できないとしながらも、「捕獲体制はしっかり構築できている。住民と行政が協力することでコストも抑えられる」と評価。「イノシシは繁殖力が強い。人や畑の被害をなくす程度に駆逐するのか、それとも一掃するのか。明確な目標を設定し、継続的に取り組むことが大事だ」と強調する。(樋口琢郎)

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