アラナミ - "過去"と"未来"を繋ぐ──東京町田発ロックバンド・アラナミの"現在"に迫る

▲アラナミ:左からじう(Dr)、石川敦也(Vo, Gt)、yuki(Gt)、nomuお(Ba)/撮影:ニイミココロ

過去から現在が「愁」、現在から未来が「燈」

──まずはリリースした『燈 / 愁』についてお話を聞いていけたらと思うんですが、この2曲はオーディションの中で作られたということで、その経緯を詳しく聞かせていただけますか?

石川敦也(Vo/Gt):オーディションの審査で一曲作ってくれと言われて、そのときはじめに作っていた曲が「愁」のデモというか、完成前のものだったんですけど、「なんか違うな」ってなって、そこから新しく作りはじめたのが「燈」で、オーディションの中で出来上がって。けど、帰りの機材車の中で「愁」のデモを聴いてたら「やっぱこれ作り上げたいね」ってなって。だから2曲ともオーディションの中で作った曲、って感じですね。

──その2曲をあえて両A面というか、ダブルリリースしたのはどういう経緯だったんですか?

石川:次に何か作品を出すときは、この4人ではじめて作った曲たちでと思ってて(※アラナミが現体制になったのは昨年4月から)。分けたり、EPみたいな感じで別の曲をつけてもよかったんだけど、やっぱりこの2つを一個の完成形として、2曲通して聴いてほしいなってところがあったんで。

──メンバーそれぞれでこだわりの部分なんかはありますか? 制作していく上でも、演奏している上でも。

nomuお(Ba):「燈」はあれじゃない? わかりやすいサビと進行。

yuki(Gt):アラナミっぽさを残した上で、わかりやすさはあるね。

石川:俺個人で言うと、「燈」は圧倒的なサビメロというか。とにかくサビを聴いてほしい。「愁」は、キーが高くて。ただでさえ高いのに、転調してさらに高くなって、あんまり落ちないから、そこがすごい、なんだろう…とにかく聴いてほしい、めっちゃがんばったから(笑)。

──声の限界に挑戦していると(笑)。

石川:自分の出せるところと、裏返らないところのギリギリをめちゃくちゃ気をつけました(笑)。

nomuお:あと「愁」は歌詞じゃない?

石川:そう、元メンバーと、お世話になってる町田CLASSIXのブッカーさんの名前と、町田っていう地名を歌詞に織り交ぜていて。これはけっこう自分たちのエゴになっちゃうんですけど、そういう曲なんだって。過去からいろいろ繋がってきて、未来に向けてっていう。過去から今が「愁」、今から未来に向かっていくんだぞっていうのが「燈」みたいな。

──そういう意味でもやっぱりセットというか。

石川:自分でも言うのもなんですけど、めっちゃ繋がっててかっこいいと思います(笑)。

──かっこいいと思います(笑)。

石川:(ひそひそと)これ、あれじゃない? 俺だけじゃなくみんなで回したほうがさ…。

yuki:俺はどっちかっていうと制作の話とかのこだわりが強すぎるから…。

──いや、そういうのを出していこうよ!(笑)

yuki:細かくなりすぎちゃったらどうしようかと思って…(笑)。「燈」は、歌詞が未来に向けてだから、明るくシンプルな構成にしてるから、ギターについては歌詞を聴かせるためにめちゃめちゃシンプルにしていて。「愁」は過去で、昔のことを思い出すっていうエモい感じもあるから、逆にはっきりしすぎないで、後ろで鳴ってるような、空間を作る感じでギターの音を作ったかな。

2カ月で17カ所を回る、はじめての全国ツアー

──その『燈 / 愁』を引っさげてのリリースツアーですが。まずは初日、町田CLASSIXでのリリースイベントの手応えなんかはどうでした?

nomuお:まあ…楽しかった!

──シンプルだ(笑)。

yuki:あの日はいつものライブのセトリとは違う感じにしてて。また違った印象でいいライブができたんじゃないかなと。

じう(Dr):一年ぶりの自主企画なんですよ、ぴったり。メンバーも変わり、曲も増えて、一個の節目というか、スタートでもあり、若干ゴールでもあり。それにしては、うまくいったほうだと思います。nomuも言ったけど、楽しかったっていうのもあるし。自分たちの企画ライブだから、来てくれるお客さんも顔見知りが多かったし、ウェルカムな雰囲気、まさにホーム、みたいなライブだったんで、当然やりやすさとかもあったけど…。やっぱり自主企画なんで、緊張はしてて不安もあったし、失敗できないっていうのもあったんで、無事に終わってよかったなって。ちょっと特殊な感じでしたよね?

──そうだね。普段みんなが出ているような、ライブハウスのブッキングライブと違ったなっていうのは、みんなの手作り感というか、いろんな人がアラナミに込めた気持ちっていうので出来上がっているイベントなのが感じられて、すごくよかったと思います。そこからツアーを回って、今がちょうど半分かな(※インタビューは3月初旬)。今のところ、各地で印象に残っていることはありますか?

石川:初っ端の大阪・京都・広島が想定以上にキツくて…。3日間(自分たちの運転で)移動もあって、宿もとってなくて。yukiがあんまり体調良くなくて、yukiだけはちゃんと宿とってたんだけど。俺とnomuは大阪で打ち上げが終わったあと、そのままハコでちょっと話してたらいつのまにか寝ちゃってて。起きて、2人で朝から開いてる定食屋みたいなところで朝定食を食べたんだけど、そのときに「いやぁ…ツアーってけっこうキツいんだね…」って話してたのを俺はすごく覚えてる。

──2カ所目で!?(笑)

石川:そう、けっこう過酷だった(笑)。これがあと2日も続くんだ…っていう。知らない場所で、自分が安堵できる場所がまったくなくてっていう、心と共にすり減る体、というか(笑)。

──そんな2人とは裏腹に、yukiくんは徐々に体調が良くなっていったって話をあとで聞いたんですど。

yuki:もうね、最初は行けないんじゃないかと思ってて…。でも行かないわけにもいかないし、気合いで行って。みんながちゃんと休ませてくれたから、みんなが疲れていくのに対して、俺はだんだん回復していくっていう(笑)。

石川:あと、俺個人的には、路上(ライブ)をやったの、京都で。ライブが終わって、打ち上げも終わってから。nomuも一緒に来てくれて、朝4時半くらいまでずっと(笑)。

──疲れてるのに…!(笑) じうくんは?

じう:僕は休み休みって感じですかね。

──そこまで疲弊することもなく?

じう:いや、疲れてたとは思います。運転もしたし。

──普通にこの距離を自分たちで移動するだけでも大変なのに、3日間ライブしてるんですもんね…。

じう:ね、事故しなくてよかったです(笑)。

下北沢SHELTERは、この4人でのはじまりの場所

──ツアーファイナルの詳細が先日発表されましたけど、erihaとはオーディションを通じて出会ったんですか?

石川:いや、たしかAmbit.(東京町田の3ピースバンド)のレコ発に、俺が急遽弾き語りで出ることになって、そこにerihaもいて…。だからアラナミとしてっていうより、俺単体とerihaがはじめましてだったんだけど。そこから仲良くなって、erihaが東京ではじめて企画をするってなったときにアラナミで呼んでもらって、っていう交流がありましたね。

──なるほど。シノカとはどうですか?

石川:シノカは、現体制になる前に1回だけ一緒にやったことがあって。そのときにボーカルのこうへいくんと俺が打ち上げで話してて、バイブスが合ったというか、俺が個人的にすごく好きになって、またやりましょうって。でもそこからアラナミはメンバーが抜けたり、あんまり活動できなくなっちゃって。本当は去年の企画にも呼んでたんだけど、シノカがツアーで出れなかったり…。でも親交はちょこちょこあって、このあいだ久々にまた一緒になって。俺はほんとにシノカが好きだから、バンド同士でっていうよりかは、俺が強いのかも(笑)。

──他のみんなは?

3人:……(なぜか無言)。

──黙っちゃった(笑)。

じう:なんか仲悪いみたいな感じになっちゃった(笑)。全然そんなことなくて、それこそerihaとは昨日も(新潟のライブで)一緒だったし。erihaは不思議だよね。そんなに対バン回数も多くないし、地元も違うけど、ちょうど節目のタイミングで会ってるバンドで、影響を受けてます。シノカは、個人的にはまだあんまり交流はないけど、だからこそ、どんなバンドなんだろう、どんな人たちなんだろうっていう楽しみがあるかな。

nomuお:シノカはアニキ・アネキって感じで、erihaはお兄ちゃんって感じかな。

yuki:あ〜、わかるかも。

──先輩というか、お兄ちゃんたちの胸を借りて、ってことですね。頼もしいですね。

石川:ファイナルはイベントについてもサクサクと決まったほうで。

──下北沢SHELTERでのツアーファイナルは後から追加で発表されましたけど、はじめから決まってはいたんですか?

石川:うん、わりと前から、日程を押さえたりとかはしてて。スリーマンにしたいねって話とかも。

──個人的に、SHELTERがどこかに入るだろうなとは思っていても、ツアーファイナルっていざ発表されると、少し意外な気持ちもあったんですけど。みんなは「SHELTERしかないだろう」って思ってたんですか?

石川:俺らが現体制になって初ライブをしたのがSHELTERなんだよね。町田CLASSIXはもちろん俺ないしアラナミのホームなんだけど、はじまりの場所、みたいなのはSHELTERで。

──なるほど。今の4人でのスタート地点。

yuki:ちょうど一年ぶりくらいなんだよね、最初のライブから。

石川:なんていうか、自分たちのステージを一つ上げるきっかけにしたいなって。それこそ、この一年この4人でライブをやってきて、一年間の答え合わせじゃないけど。…過去一やべえ日にしたいよね(笑)。

じう:同じく(笑)。節目だし、ツアーを回ってきた成果でもあるし。

nomuお:集大成みたいな。

──ツアーの集大成もありつつ、一年間この4人でやってきたことの集大成を見せられたらいいですよね。

石川:それもね、繋がるしね、「燈」「愁」の話と。

yuki:すごい、無意識に張ってた伏線を回収していってる(笑)。

──(笑)それでは最後に、改めてツアーファイナルのPRをみんなの声でお願いします。

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