佐世保市長選まで1カ月 “保守分裂の構図” 朝長、大石両氏が後方支援

(写真左から)田中隆治氏 、宮島大典氏 、橋之口裕太氏

 任期満了に伴う佐世保市長選(4月16日告示)が約1カ月後に迫った。これまでに出馬表明した3人のうち、市議の橋之口裕太氏(39)には朝長則男市長が、前県議の宮島大典氏(59)には大石賢吾知事がそれぞれ後方支援する動きを見せている。自民党県連は1月に橋之口氏の推薦を決めたが、自民系の一部の議員や団体は宮島氏を支持しており、保守分裂の構図となっている。
 2月11日、橋之口氏は市中心部で千人規模の「語る会」を開いた。壇上に多くの自民議員らが居並ぶ中、一本の祝電が聴衆の関心を集めた。差出人としてアナウンスされたのは朝長氏だった。
 朝長氏は昨年11月に5選不出馬を表明。「後継指名はしない」とした。だが水面下で朝長、橋之口両氏の強固な支持母体などは“継承”の準備を進めていた。
 2月25日に開設した橋之口氏の事務所には、朝長氏からの「必勝」の為書きを掲示。朝長氏の後援会スタッフらが頻繁に出入りし、地域回りなどをリードする。橋之口氏の陣営は「朝長市長は自民出身の政治家。こちらが県連の推薦を得た以上、自然な流れだ」と強調する。
 対する宮島氏も元々は自民出身。旧民主党などを渡り歩き、計12回の選挙を経験した。知名度は高く、保守層にも根強い支持がある。ただ今回、自民に推薦申請したが、過去の除名処分を理由に得られなかった。
 昨年2月の知事選では、朝長氏が当時現職の中村法道氏を支援。一方、宮島氏は自民県連推薦の大石氏を支え、初当選に貢献した。同10月には県政報告会に大石氏を招き蜜月ぶりをアピールした。
 先月26日、宮島氏の事務所開きには、大石氏がメッセージビデオを寄せ、「新たなリーダーとなることを心から期待している」と激励。自民からも一部の県議や市議が出席した。連合長崎のほか、自民支持団体の県看護連盟や県歯科医師連盟は宮島氏のみを推薦し、陣営幹部は「保守は割れている」とする。
 一方、経済界は様子見が目立つ。橋之口、宮島両氏の陣営は、企業や団体などから400超の推薦状を集めたとするが、日本商工連盟佐世保地区などは両氏を推薦する形を取った。ある経営者は「各業界で意見が割れている。静観する企業は少なくない」とつぶやく。
 両氏はまだ具体的な公約を発表していない。石木ダム建設やカジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致の推進など政策面では共通点が多いとみられ、有権者にどう違いを示すかが注目される。
 支援者からは、それぞれ朝長、大石両氏に表舞台に立ってほしいと望む声もある。今後、決起大会や出陣式などが予定され、ある陣営関係者は「市長や知事が登場するかが注目点。表に出た瞬間に選挙戦は一気に激化する」と読む。
 市長選には、元大学助手の田中隆治氏(79)も出馬を表明している。

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