「日本よりデカい空母」欲しがる韓国海軍の危うい実情

文在寅前政権下で海軍の軽空母保有の検討を始めた韓国が、より大きい中型空母保有に舵を切ろうとしている。同国内には空母不要論も根強く、いったんは棚上げになったのだが、初の国産超音速戦闘機であるKF-21の開発がスムーズに進んでいることが、一つの背景になっているようだ。

防衛事業庁が1月までに終えた外部委託研究で、今後10年6カ月間に1兆8千億ウォンの予算を投じれば、空母艦載用のKF-21N(ネイビー)の開発が可能だとの結論が出たと報じた。

またシン・ボムチョル国防次官は先月の国会国防委員会の質疑で、「1次研究で搭載できる航空機に重点を置いたなら、2次研究を通じてどういうもの(空母)が望ましいかについてもう一度、検討する」として、中型空母保有が目標となり得ることを示唆した。

文在寅政権期に検討された軽空母は、推着離着陸が可能なF-35Bステルス戦闘機の搭載を前提とした構想だった。しかし、F-35Bの高額さと運用の難しさは空母不要論の一要素になっている一方、KF-21の順調な開発は韓国世論から好感を持たれている。こうした様々な要素が相まって、日本が空母化を進める「いずも型護衛艦」(満載排水量26000トン)よりかなり大きい、7万トン級の中型空母導入が検討されるに至ったようだ。

それにしても、地続きの北朝鮮を「主敵」とする韓国軍が空母を持つことには、解せないとする世論は根強い。ハッキリ言って、中国に続き日本までもが空母保有国になることを受け、「わが国も持たなければ!」という感情的な動機が強いようにも見える。

しかし、さすがに合理的思考を売り物とする軍事評論家の間からは、冷静な意見も出ている。

ある軍事評論家は、韓国にとって最大の脅威が北朝鮮の核ミサイルである以上、限りある海軍予算はイージス艦増強に優先的に振り向けられるべきとの立場だ。この軍事評論家は、5カ月前にYouTubeで公開した動画で、北朝鮮が潜水艦発射巡航ミサイル(SLCM)を開発する可能性を指摘し、海上警戒のいっそうの必要性を指摘していた。

そして、北朝鮮が今月12日、本当にSLCMの発射実験を行ったのは周知のとおりだ。

韓国が空母保有を実現するためのハードルは予算だけではない。同じ軍事評論家は、英海軍のクイーン・エリザベスを中心とした空母戦闘群を例に取り、韓国海軍が中型空母を導入して空母戦闘群を構成すれば、地上の支援要員まで含め2500人の人員が新たに必要になると見積もっている。韓国海軍が望むとおり、空母戦闘群を3個構成すれば1万人に近いマンパワーが必要だ。世界最速レベルで少子化が進む韓国で、本当にそれが可能なのか、大いに疑問だということだ。

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