<長崎市長選まで1カ月> 各陣営 いまだ浸透不足 現職との差別化に濃淡も

(写真左から)原拓也氏、吉富博久氏、赤木幸仁氏、鈴木史朗氏

 任期満了に伴う長崎市長選の告示まで16日で1カ月。田上富久市長(66)=4期目=の退任表明に伴い、16年ぶりに県都のリーダーが交代する選挙戦だが、立候補を表明した無所属新人4人はまだ浸透しておらず、盛り上がりに欠ける。各陣営とも、田上市政との差別化を図ろうと躍起だが、濃淡がある。
 「市政は駅伝だ。たすきを渡したい人に来てもらった」。2月に出島メッセ長崎であった田上氏の市政報告会。田上氏からマイクを渡されたのが前九州運輸局長、鈴木史朗氏(55)=自民、公明推薦=。「ベクトルは同じ方向」と応じ、田上氏が整えた「まちの基盤」を生かし「進化」を目指す意向を示した。
 事実上の後継指名だが、後援会幹部は「そのまま路線継承では決してない」と強調。鈴木氏も「現職と戦うことも辞さない覚悟で出馬を決意した。新たな長崎をつくる」と訴える。
 地元経済界などを中心に後援会を組織。自民、公明の県組織に加え、田上氏を支援してきた県内最大の労働団体、連合長崎をはじめ約800の企業・団体の推薦を得た。国民民主党県連も支持。立憲民主党県連は自主投票を決めたが、政党を問わず盤石の体制に映る。
 ただ、組織力で圧倒する鈴木氏だが、国土交通省官僚として働き、長崎を30年以上離れていたため、「地元でまだ名前も顔も売れていない」と陣営関係者。まずは人柄、政策を知ってもらうため精力的に地域回りを続ける。
 「長崎の閉塞(へいそく)感を打破するためチャレンジしないといけない」と訴えるのは県議の赤木幸仁氏(38)。市政刷新を強調し、存在感をアピールする。
 陣営が想定するのは2月の北九州市長選の構図だ。4期務めた現職の退任に伴い路線継承の是非が争点だったが、市政刷新を訴え、個人的なつながりで支持を広げた新人が、与野党が相乗りで支援し、継承・発展を掲げた新人との事実上の一騎打ちを制し、当選を果たした。
 赤木氏の陣営は組織に頼らない戦術で交流サイト(SNS)をフル活用。総フォロワー数約3万人の情報発信力を生かし、100項目の政策をそれぞれ1分程度の動画にまとめ順次投稿している。「赤木ファンを広げていく」と青年団体OB有志らが草の根で支持拡大に動く。
 3度目の挑戦となる社会福祉法人理事長で元市議の吉富博久氏(78)は、出島メッセ長崎など大型事業を進めた田上市政を「ハコモノ重視で無駄に税金を使ってきた」と批判。刷新の必要性を説く。
 昨年11月にいち早く出馬表明した同市の会社経営、原拓也氏(54)は「今長崎に必要なのは、自由で大胆に発想するリーダーシップ。従来通りの行政目線ではなく、民間の自由な発想を注いでいく」と訴える。


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