MSRに苦言。デイトナでの違反行為に「もし立場が逆なら勝利を放棄する」とウェイン・テイラー

 自身の名を冠するチームのボスであるウェイン・テイラーは、デイトナ24時間レースの後に発覚した、同レースにおけるメイヤー・シャンク・レーシング(MSR)のタイヤ空気圧操作違反について、もしも立場が逆だったならIMSAに勝利の放棄を求めただろうと述べた。

 1月末に行われたIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の開幕戦では、リッキー・テイラー、フィリペ・アルバカーキ、ルイ・デレトラズ、ブレンドン・ハートレーがドライブした10号車コニカミノルタ・アキュラARX-06(ウェイン・テイラー・レーシング・ウィズ・アンドレッティ・オートスポート)が、意図的に不正なタイヤ圧データをIMSAとミシュランに送信していたことが判明したMSRの60号車アキュラARX-06に次ぐ2位となった。

 マイク・シャンクが率いるチームは、5万ドル(約660万円)の罰金に加え、レースの賞金とウェザーテック選手権の200ポイント、ミシュラン・エンデュランスカップのチームおよびドライバーズポイントの剥奪処分を課されたものの、レース結果からの除外や降格は免れ勝利を維持している。

 Sportscar365の単独取材に応じたテイラーは、MSRに課されたペナルティを尊重するとしながらも、スキャンダルを完全に認めなかったアキュラの姉妹チームには苦い思いが残ると語った。

「IMSAの決定には敬意を表する。また、声を挙げたホンダとアキュラにも敬意を表する」と彼は語った。「しかし、チームオーナーとして、もし役割が逆だったらどうしたかは分かっている」

「私たちは(ジム・マイヤーを除いて)MSRの誰からも謝罪を受けていない。これは間違いなく気持ちのよいことではない。正直なところ、もし私だったらドライバーたちに『あの時計(優勝商品のロレックス・デイトナ)を他のチームに渡してこい』と言うだろうし、『あなた達はこれに値する』と言うだろう」

「それが私のやるべきことだ。でも、それは私のやり方であり、みんなが同じではないんだ」

 テイラーは、アキュラのふたつのファクトリーカーによるGTPクラスの取り組みの一環としてMSRと一緒に仕事を続けているが、その関係はデイトナの違反行為に関するゼロコミュニケーションによって汚染されているように感じられると述べた。

ウェイン・テイラー・レーシング・ウィズ・アンドレッティ・オートスポートの共同オーナーであるウェイン・テイラー

「我々はアキュラとHPDの代表であり、それが重要である」とテイラー。「この時点で、彼らはまだ彼らのためにレースをしているので我々はまだふたつの(異なる)チームだ」

「私たちはアキュラとHPDにメーカーのチャンピオンシップを与えるために、あらゆることをしなければならない。明らかに、私たちはドライバー選手権とチーム選手権のタイトルを勝ち取りたいと思っている」

「そのためにも我々はまだ一緒に働かなくてはならいないが、現状はとても難しい。私はこのような振る舞いは一切許せないんだ」

「MSRを敵に回したくはないし、HPDやホンダ、アキュラをこれ以上泥沼に引きずり込みたくない。だから関与することは無意味だ」

「また、彼らにこんなことをする資格はない。私はとくにデビッド・ソルターズ(HPD社長)に同情している。これは彼のプロジェクトであり、これ以上彼が動揺して眠れない夜を過ごすことを私は望んでいない」

「彼らは素晴らしいクルマと、素晴らしいエンジンを作り出した。また、オレカは素晴らしいパートナーだ。私たちのパートナーはみんな良い人たちだ」

「IMSAはMSRに勝利を与えることを決定した。それは尊重する。それと引き換えに我々はいま、チャンピオンシップとミシュラン・エンデュランスカップの両方でリードを手に入れ、最高のピット(スペース)を手に入れた」

「私たちはいつものようにレースを戦い、今回のことは忘れればいいんだ」

■「敬意を欠く行為だと思う」とアルバカーキ

 WTRのレギュラードライバーであるアルバカーキは、自身もチームのメンバーもMSRから謝罪を受けていないと付け加え、今週末のモービル1セブリング12時間レースに向けてさらなる緊張感を高めている。

「僕にとっては、この状況に満足していないのは、謝罪がないことだ」とアルバカーキはSportscar365に語った。

「僕たちはある意味でチームメイトであり、お互いに前に出るために一生懸命戦っている」

「でも、メイヤー・シャンク・レーシングの誰からも謝罪されていない。ゼロだ。ドライバーからも、チームオーナーからも、ウェイン・テイラー・レーシングの誰ひとりして僕たちに謝罪はなかった」

「彼らからはメーカーにだけ『申し訳ない』という短いツイートがあった。メーカーは彼らに対して非常に怒っている。彼らはシリーズやライバル、とくにキャデラックに対しても謝罪していない」

「そして、(アキュラ陣営の)チームメイトである僕たちに対してもだ。それは敬意を欠く行為だと思う。でも、これは僕の意見だ」

コニカミノルタ・アキュラARX-06のレギュラードライバーを務めるフィリペ・アルバカーキ

「レースをしていると、時々ラインを越えてしまうことがある。僕は自分のしたことを見直す。もしも自分が間違っていてそれが満場一致であれば、僕は立ち止まって『やり過ぎた、僕が間違ったことをした』と相手に謝る」

「その良い例が、僕とリッキーとの間に起きた状況(2017年デイトナ24時間のレース最終盤に、トップを争う両名がターン1で接触し、首位を走っていたアルバカーキがスピンを喫した件)だ。彼は僕らが経験した事件について謝らなかった。彼はただ僕のところにやってきて彼の意見を説明したんだ。そして僕たちは離れた。その時点で僕たちはすべてクリアだった」

「しかし、このようなことが起こらない人格の欠如、誠実さの欠如、そしてあらゆることが原因だ。それはレースの精神を引き裂くものだよ」

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