長崎・対馬で高まる社会問題意識 小中学校で進む学び、地域貢献

リサイクルをテーマに探究学習に取り組んだ阿比留さん(左)と、市民のごみ問題の意識を探るアンケートをした武本さん=対馬博物館

 国境の島ならではの漂着ごみ問題対策などで注目される長崎県対馬市。小中学校では持続可能な開発目標(SDGs)を念頭にした学びが進み、子どもたちの社会問題への意識が高まるきっかけになっている。

 ■海ごみ回収
 対馬最北端にある上対馬町の市立豊小(福田浩久校長、17人)。3、4年生5人は本年度、SDGsのゴール「14・海の豊かさを守ろう」に関連し「全力で未来の海を守ろう!プロジェクト」をスタート。プラごみや流木などが流れ着く海水浴場の清掃に取り組む。
 だが、子どもだけでは限界もある。そこで児童は、地元漁協や企業、住民らに「一緒に海をきれいにしませんか?」と電話で協力を依頼。大人は快く応じ、1年間で約4.5立方メートルのごみ回収に成功した。
 調べ学習にも取り組み、ごみが国内外から流れ着くことも学んだ。山口翔一教諭(36)は「地域貢献の喜びも感じている。学校に身近な海だからこそ、意欲的に取り組めた」と言う。新年度も継続する予定だ。

学校近くの海水浴場で、ごみ回収に取り組む豊小児童や地域住民ら=対馬市上対馬町(山口教諭提供)

 ■リサイクル
 ゴール「12・つくる責任 つかう責任」の視点での学びも。SDGs学習に力を入れる峰町の市立西部中(髙田浩一校長、28人)。3年生の阿比留萌さん(15)は、対馬の路上や山中にもごみがあることに問題意識を抱き、リサイクルをテーマに探究学習を始めた。
 同級生の武本琴奈さん(15)と協力し、市民のごみ問題への意識を探るため、西部中を含む4中学校の保護者約120人にアンケートを実施。市のごみ対策施策の認知度が低いこと、ごみ分別で困っている市民が多いことを明らかにした。アンケートを基にリサイクルの意義を啓発するポスターを制作。リサイクルは限りある資源の節約につながり、CO2発生防止にもなると訴えた。
 ポスターは5日、市内であったフォーラムでお披露目。2人は聴衆に呼びかけた。「小さな取り組みの積み重ねで、自然を守ることができる。一人一人が対馬の美しい未来のために行動していきましょう」

 ■身近な現場
 市教委学校教育課によると市内の学校でのSDGs学習のテーマはさまざま。国天然記念物ツシマヤマネコや対馬固有のチョウ、ツシマウラボシシジミの保全に向けた取り組みもあるという。
 市SDGs推進室の崔春海さんは、対馬でSDGsを学ぶメリットについて「社会課題は自分の目で見ないと分からないことが多いが、対馬は漂着ごみや外来生物、有害鳥獣、磯焼けの現場が身近にある」と指摘。「研究者も多く来島しており、子どもたちが専門的な知見に触れることもできる」と話す。

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