シャンソン界の〝上沼恵美子〟佐々木秀実 親友に2人の有名俳優「すごく刺激になる」

華麗なドレスを身にまとい、思いを歌に込めて伝える。中性的な歌声で曲のジャンルを問わず魅了する男性シャンソン歌手の佐々木秀実(42)がこのほど、大阪市内でよろず~ニュースのインタビューに応じた。歌手になったきっかけ、今後の抱負、高校時代の思い出などについて語った。

幼少期から日本舞踊、三味線を習い、歌手になることを子供心に決めていた。しかし、13歳の時に急性咽頭腫瘍にかかってしまう。将来を悲観していたところ、フランスのシャンソン歌手であるエディット・ピアフの歌声に魅了され、シャンソンの道へ進むことを決めた。「叫ぶように、愛を丸ごと歌い上げる。それをものすごく感じた。衝撃的でした」と明かした。

病気を克服すると中学3年生の時にカラオケ大会に出場し、大手芸能事務所にスカウトされる。プロの道を目指すため東京・堀越高校に入学。同級生で当時V6で大活躍していた俳優の岡田准一、俳優の高橋一生とは大の仲良しで、夢を語り合ったという。

高橋からは「本当にやりたいと思わないと続けられないから、シャンソンを歌いな」と励まされた。岡田とはNHKで偶然再会したことが印象に残っている。大河「軍師官兵衛」(2014年)の撮影だったようで、甲冑姿の岡田と歌番組の収録でドレスを着た佐々木が、休憩の合間に談笑したこともいい思い出だ。

芸能界での第一線で活躍する2人には「すごく刺激になりますね」と笑みを浮かべた。最近はなかなか合う機会はないが、コンサートやライブハウスに来てくれたこともある。

2002年にCDデビューを果たしたものの、最初はなかなか売れず、バーデンターのアルバイトなどで食いつなぐ日々だった。転機はデビュー5年後の07年。NHK朝ドラ「ちりとてちん」で自身の曲「聞かせてよ愛の言葉を」が挿入歌として流れたところ大きな反響があり、そこから仕事の依頼が増えた。

その後、ライブに来ていたキャスターの小倉智昭に「秀実ちゃん、そんなにしゃべりが面白いんだから、テレビに出たら」と誘われ、小倉が司会をしていたフジテレビの情報番組「とくダネ!」のコメンテーターを務めたこともあった。「シャンソン界の上沼恵美子と言われています。アハハ」と笑う。カンテレの番組「快傑えみちゃんねる」で上沼本人と対面したときは「すごいなあと思いました」と話芸の巧みさに脱帽した。

最近はジェンダーに関する講演会の依頼もある。「私としてみれば、いまさら何を言っているのと。そういう人がいるのをみんな分かっているのに、あえて話題にすることが差別につながらなければいいなと思う」と私見を述べつつ、「こういう仕事をしていると女装していたりとか、オネエキャラとか最近はいっぱい出ているけど、一般社会に出ていらっしゃる方でジェンダーで悩んでいる方はおつらいと思う」と思いやる。

「ただ、それが言える世の中になってほしいと思う。普通に『そうだんだけど』と言えて、『ああ、そうなんだ』で済むような」。話題が一過性のものではなく、普段の生活の中で自然に受け入れられることを望んでいる。

歌手生活の区切りとなる「デビュー20周年コンサート2023~歌は我が命~」(4月15日、東京・I’M A SHOW。4月22日、大阪・SPACE14)が控えている。「これを大きなステップとして、もう一回スタートを切りたい。佐々木秀実は歌うことで生きてこられたのは間違いないこと。これからも自分が生きていく限り、そういう人生を送っていきたい。送らなければいけない」。歌手としての使命がある。これからも音楽を通じて多くの人に感動を与える。

◆佐々木秀実(ささき・ひでみ)1980年4月17日生まれ、長野県出身。17歳で日本シャンソン・コンクール東京大会に最年少で入賞、同時にシャンソン歌手のプロの道へ。2002年に故・阿久悠氏に見いだされ、CDデビュー。シャンソンだけではなく、ジャンルにとらわれず幅広く音楽活動をしている。

(よろず~ニュース・中江 寿)

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