伊集院光が名著と対話するシリーズ第2弾! 深夜ラジオと芭蕉の名句の意外な共通点とは? 対談集『名著の話 芭蕉も僕も盛っている』近日発売

伊集院光の単行本『名著の話 芭蕉も僕も盛っている』が3月23日(木)に株式会社KADOKAWAより発売される。 伊集院光は、2012年よりNHK Eテレ『100分de名著』に出演し、100冊以上の名著を紹介してきた。番組で取り上げた古今東西よりすぐりの名著の中から、自身の心に刺さった3冊を改めて厳選、本をよく知る3人と再会して、時間無制限、語り下ろしの徹底トークを繰り広げるのが書籍版『名著の話』シリーズだ。 2022年2月に刊行した『名著の話 僕とカフカのひきこもり』は、番組ファンだけでなく、読書の愉しみを知る多くの読者に好評で、発売後に即重版。現在、オーディオブック版も配信中。 最新刊『名著の話 芭蕉も僕も盛っている』では、松尾芭蕉『おくのほそ道』、デフォー『ペストの記憶』、コッローディ『ピノッキオの冒険』をとりあげ、3冊をすみずみまで読んだ伊集院光が、それぞれの名著のエキスパートと語り尽くす。

本書「まえがき」より

古池や蛙飛こむ水のおと。

……だから何? というのが、松尾芭蕉と出会ったころの僕の素直な感想。

古い池に蛙が飛びこんだんでしょ。

音がしたんでしょ、おそらく。

「……ぽちゃん」

って音がしたのかな? で? それが何か?

正直なところ、この句をきいて「さすが俳句の天才松尾芭蕉だ!」などという人のことを「影響されやすい人だなあ」と思っていました。「松尾芭蕉の作品だって言われたから、無理やりそう言ってるんでしょ?」くらいの感じ。

そして今、この句に対する僕の感想は……「天才・松尾芭蕉の宇宙の中にいるようだ!」です。

どうぞ存分に、「思い込みの激しい人だなあ」「他人が芭蕉を祭り上げるものだから、わからないと格好が悪いとばかりに知ったかかましてるなあ」と思ってください。これは自分が受けなければいけない罰ですから。吐いたツバですから。

けれどその後で本書を、まずは最初の、長谷川櫂さんとの松尾芭蕉『おくのほそ道』についての対談をお読みいただきたい。俳人で、松尾芭蕉についての著作もある長谷川先生が説明してくださった「古池や」の「や」についての考え方が、僕の松尾芭蕉に対する気持ちをガラッと変えてしまいました。一気に「さすが芭蕉だ!」と言っていた人に対する気持ちまで。

今や「夏草や兵どもが夢の跡」だけでご飯数杯行けるくらい世界に入っちゃいますから。

名著と出会うと、自分の中で何かが変わります。

すでに出会っていた名著も、大きな知と融合することでさらにまた変わります。(後略)

『名著の話 芭蕉も僕も盛っている』目次

■長谷川櫂(俳人)と語る、松尾芭蕉『おくのほそ道』──蛙飛びこむ宇宙空間

◉「古池に」でなく「古池や」なのはなぜ? ◉芭蕉はどこが革命的だったのか ◉心の地図と歌枕の廃墟 ◉『おくのほそ道』のフィクション ◉なぜ松島に芭蕉の句がないのか ◉虫と夏草にシンクロする俳句 ◉会ったことのない死者の前で ◉ボーッとするから俳句が生まれる

■武田将明(英文学者)と語る、ダニエル・デフォー『ペストの記憶』──伝染病のすべてをあらゆる書き方で

◉デフォーの細かさ ◉「コロナの記憶」を残すとしたら? ◉ペスト禍の笑い話 ◉「見えない」という根本的な不安 ◉帽子を盗んでいく女たち ◉「死者を捨てる穴」のやりきれなさ ◉書き手であるH ・F の死 ◉原発事故の記憶 ◉デフォー嫌いの夏目漱石 ◉『ロビンソン・クルーソー』との共通点 ◉どこからでも読める本

■和田忠彦(イタリア文学者)と語る、コッローディ『ピノッキオの冒険』──ピノッキオは死にました。でも……

◉落語のような会話のリズム ◉わかりやすい善人や悪人は描かない ◉キツネとネコがあらわすもの ◉サメの喩え ◉「母を訪ねて三千里」とピノッキオ ◉ディズニーの『ピノキオ』から消えたもの ◉糸のきれたあやつり人形

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