【新型コロナ】「怖さ知れば抑えられる」 川崎市健康安全研究所の岡部所長、衆院内閣委で意見陳述

衆院内閣委員会で参考人として意見陳述する川崎市健康安全研究所所長の岡部信彦氏=17日午前、国会内

 新型コロナウイルス感染症予防のため内閣官房参与として政府へアドバイスを送っている川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長が17日、感染症危機管理統括庁設置に向けた内閣法などの改正案を巡る参考人として衆院内閣委員会に出席し、意見陳述を行った。「仕事を通じ師匠のような存在だった」という横浜市立市民病院感染症部元部長、相楽裕子氏の言葉を引き「どんな感染症も怖さを知れば抑えられる」と正しく怖がることの大切さを訴えた。

 岡部氏は感染症予防について「医療負荷と社会活動のトレードオフ(両立が困難な関係)」と評し、これまでの政府対応を「ポリシー(政策)の決定や表明、司令塔が必ずしも明瞭ではなかった」と指摘。統括庁について「いざという時に社会への処方箋を明確に示していけると思う」などと期待を表明した。

 「みんな忘れているけれど感染症は怖い。怖さを知れば抑えられる。でも、そのことすら忘れている」。意見表明の結びに紹介したのは、第1種感染症指定医療機関の市民病院で感染症部部長を担った相楽氏(2022年逝去)の言葉。岡部氏は過去にハンセン病やHIV感染症を巡り生じた差別や偏見に言及し「相楽先生の戒めを忘れず、うっかりすると無視されがちな人権を尊重しつつ医療を進めていくことが求められている」と政府に促した。

 質疑では立憲民主党の太栄志氏(13区)から「日本のオールハザード(緊急事態全般への備え)の課題は何か」と問われ、「(原因などが)不明なものへの対応力が非常に弱い」と指摘。「一定の筋道を設けつつ、判明の度合いに沿って対応をレベルアップしていくことが大事だ」と説いた。

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