町あかりのプレイリスト~テレビのうた~◆その10:前向きになれる朝ドラ主題歌5選

日本でテレビ放送が開始されて70年。ドラマ主題歌やCMソングなど、テレビによって国民に周知された楽曲は無数にあります。その昭和から令和までテレビを通して愛された楽曲について、平成3年生まれでシンガー・ソングライターの町あかりが、独自の目線で語る連載が「町あかりのプレイリスト」です。

「三寒四温」と言われるように、春が訪れる前は寒暖差がつらいですよね。花粉症に悩まされている方も多いことと思います。体調を崩しがちなこの頃、音楽の力でエネルギーをチャージしたいですね。

第10回では「前向きになれる朝ドラ主題歌5選」と題して、NHK連続テレビ小説、通称・朝ドラを通して愛されてきた珠玉の楽曲をセレクト。聴くだけで朝日を浴びたような、シャキッと前向きになれるプレイリストを作ってみました。

1曲目は、桑田佳祐「若い広場」(2017年)。NHK連続テレビ小説の第96作「ひよっこ」の主題歌です。有村架純さん主演の本ドラマは、「ちゅらさん」「おひさま」を手掛けた岡田惠和さんの書き下ろし脚本によるオリジナルストーリー。舞台は東京オリンピックが迫る1964年。高度経済成長期の日本の風景が描かれながら、茨城から上京したヒロインが奮闘するさまにドキドキさせられる物語です。私もリアルタイムで見ていましたが、みんなで助け合ってつつましく生きている姿がいとおしく、お気に入りのドラマです。

主題歌も物語の世界観にマッチしたサウンド。深いリバーブがかかった桑田さんの歌声が温かくてたまりません! ふと聴こえるピアノの音色が切なくて、故郷に思いをはせる登場人物たちの姿と重なります。途中で古賀メロディー(古賀政男が残した名曲)が顔をのぞかせる、桑田さんの戦後の流行歌への愛を感じるオマージュ部分も粋です。特に、進学や仕事の関係で4月から生活環境が変わる方にはぜひ聴いてほしいですね。優しいサウンドにきっと励まされるはずです。

次は、Kiroro「Best Friend」(01年)。11年度上半期放送「ちゅらさん」の主題歌で、ドラマの人気とともに大ヒットとなりました。沖縄県を舞台に国仲涼子さん演じるヒロインが看護師を目指す物語です。当時小学生だった私も、劇中に登場するキャラクター・ゴーヤーマンのキーホルダーが学校ではやったり、卒業式に「Best Friend」を歌った記憶が強く残っています。社会現象になるような大ヒット作品だったことが分かります。

友人への感謝をストレートな言葉でつづった主題歌は、実際にKiroroの2人の友情が描かれたものだそうです。距離の近い親友に対して、照れることなく素直に「ありがとう」と伝えるのってなかなかできることではありませんよね。これも沖縄の言葉「いちゃりばちょーでー」(会えばみな兄弟)の精神から来ているのかもしれません。人は助け合って生きていくもの。決して1人じゃないんだと思わせてくれる1曲です。

3曲目は、倍賞千恵子「おはなはん」(66年)。NHK連続テレビ小説の歴史は長く、61年に始まったそうです。本曲は初期の作品で、6作目「おはなはん」のイメージソングです。ドラマの舞台は明治中期の愛媛県。笑顔が愛らしい樫山文枝さん演じるヒロイン、おはなはんが激動の時代を生き抜く物語です。「ドラマが始まる時間になると水量メーターが下がる」という水道局員からの裏話があったり、おはなはんが夫を亡くした回の放送後にファンから弔電が届いたというエピソードからも、いかに当時の視聴者が夢中になってドラマを楽しんでいたかが分かります。

倍賞さんが歌ったイメージソング「おはなはん」は、劇中で流れたインストゥルメンタルにレコード版として歌詞をつけたものだそう。おはなはんの愛情たっぷりの生きざまが描かれています。これがかわいくてすてきなのです! いまいち元気の出ない時は、おはなはんの明るさに背中を押してもらいましょう。

4曲目は、本田路津子「耳をすましてごらん」(72年)。第12作として放送された「藍より青く」の主題歌です。作品の舞台は、太平洋戦争末期から敗戦後の熊本県天草。真木洋子さん演じるヒロインが戦争で夫を亡くし、周りからの励ましやいとおしい子どもの存在を支えにしながら、たくましく生きる姿が描かれた物語です。

主題歌は「藍より青く」の脚本を担当した山田太一さんによる作詞。本田さんの最大のヒット曲となり、同年「第23回NHK紅白歌合戦」でも披露されました。出だしは切ない曲調で、ヒロインが冬の海辺で冷たい風に吹かれているような雰囲気。しかし、最後「ひとりではないから」の部分で明るく転調するのが印象的です。絶望に打ちひしがれる中でも、「本当に一つも希望がないのか? 今までに受けた愛があるのではないか?」とこちらに問いかけてくれるよう。失ったものばかり数えるのではなく、手に残っている小さな幸せを見つめることの大切さを教えてくれます。

最後は、絢香「にじいろ」(14年)。吉高由里子さん演じるヒロインが登場する「花子とアン」の主題歌。明治から昭和にかけて、激動の時代に「赤毛のアン」をはじめとする児童文学の翻訳家として活躍した村岡花子の半生を描いた物語です。東京大空襲の最中、花子は翻訳途中の「赤毛のアン」の原書を抱え戦火の中を逃げたのだそうです。

主題歌は、絢香さんが作品の世界観を意識しながら作詞・作曲を手掛けたそう。「眩しい笑顔の奥に 悲しい音がする」という一節は、ヒロインの姿そのものです。朝ドラにはたくましい女性がたくさん登場するので、「いいな、彼女たちは明るくて。自分なんて…」と感じることもあるかもしれません。しかし、彼女たちの笑顔の裏には、大きな苦労があるのですね。乗り越えたことによって、その自信が魅力となって表れるのでしょう。「自分は主人公なんだ。自分らしい物語をマイペースに描いていけばいいんだ」と気付かせてもらえる楽曲です。

いかがだったでしょうか? 今回のプレイリスト(Spotify)はこちらから!
>>https://open.spotify.com/playlist/1vOzLCSBXdCV5KlLkxrZry?si=c0a6daab4f5c4652

暖かくなるのはうれしいけれど、気候や環境の変化によって憂鬱になることも多い季節です。そんな時こそテレビを見たり音楽を聴いたり、エンタメに触れることが免疫力アップにつながるはずです! 作品の世界を味わいながら、爽やかな気持ちで新年度を迎えたいですね。

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町あかり

シンガー・ソングライター。2010年から活動を始め、作詞・作曲、編曲、執筆、イラストや衣装制作まで自身で行う。19年には、ビクターエンタテインメントからメジャー5thアルバム「あかりおねえさんのニコニコ♡へんなうた」をリリース。20年10月に、日本コロムビアから初のカバーアルバム「それゆけ!電撃流行歌」を発売。ほか、アーティストへの楽曲提供も行う。映画「男はつらいよ」と昭和歌謡曲、そして文鳥を愛する。最新アルバム「総天然色痛快音楽」が好評発売中。

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