福島の被ばく牛 飼育続ける思い 希望の牧場 吉沢さん岡山で講演

 2011年の東京電力福島第1原発の事故で被ばくした牛を殺処分せず育て続けている「希望の牧場」(福島県浪江町)代表の吉沢正巳さん(69)が17日、岡山市内で講演した。吉沢さんは事故で変容した町の現状や牛を飼育し続ける思いを話した。

 吉沢さんは、浪江町の多くの地域が今も避難指示の対象となっており、住民も事故前の1割に満たないと説明。「住宅や地域の学校が次々と解体され、自分のルーツを失って精神的に苦しむ人は多い。『3.11』は終わっていない」と訴えた。

 原発の北西約14キロにある牧場で、吉沢さんは出荷しないことを条件に現在も肉牛約200頭を飼育。「人の営みで起きた原発事故で動物を殺してはいけない。牧場の運営を通じて命の大切さについて多くの人に考えてもらいたい」と話した。

 講演会は13年から同牧場の支援を続ける「ふくしまボランティア岡山隊」が企画し、約50人が聴いた。

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