「うまくいき過ぎている」なぜ三笘薫は4戦連続ゴール関与でも満足できないのか。日本代表招集について訊くと「いま野球もやっていて…」【現地発】

試合後の三笘薫は、時折笑顔を交えて充実感を漂わせていた。

現地時間3月15日にナイトゲームとして行われたブライトン対クリスタル・パレス戦。4-2-3-1の左サイドハーフとして先発した三笘は、この試合の決勝ゴールをアシストして1-0の勝利に貢献した。

これで、4試合連続でゴールまたはアシストを記録。プレミアリーグは世界最高峰と謳われるが、その中で破竹の勢いでゴールを生み出し続けているのだ。

しかし本人によれば、連戦の影響でコンディションはそこまで良くないという。79分まで出場した自身のプレーを、次のように振り返った。

「もっと上というか、もっと力を出せるようにしないといけないと思いながら試合をしていましたけど。試合展開も考えながらシンプルにプレーしました。チームの試合状況と、自分のコンディションを考えながらやっていました。もうちょっと、仕掛けるところも行っていいかなって感じですけど、試合の流れもあるので。シンプルにすることが今日は多かったって感じですね」

質疑応答は、15分のアシスト場面に及んだ。

三笘は自陣のセンターライン付近でパスを受けると、中央部に向かってドリブルを開始。相手DFラインの裏へ走り込んだ右サイドハーフのソリー・マーチにスルーパスを通し、先制点をお膳立てした。

本人は「パスがちょっと弱かったですね。ソリー(・マーチ)じゃなければ、決めてくれなかったので助かったという感じです」と反省したが、ロベルト・デ・ゼルビ監督がチームに落とし込んでいる“決まりごと”がうまく形になったと説明した。

「自分がああいう形で中に入っていくと、ソリーも中に入ってくれるので。逆サイドで同じよう流れになれば、僕もやらないといけない。常に(マーチなどを)見ています。あの時間帯でゴールが入ったのが大きかったなって感じです。ああいう形を増やせれば、相手も中(のスペース)を切ることになってくる。中と外をうまく使い分けながらってところです」

さらに、「4試合連続で結果を残し続けているのは自信につながるのでは?」と聞いてみると、冷静な姿勢を崩さなかった。

「結果が出てるのはいいですけど、うまくいき過ぎてるところもあると思うので。助かってるって感じですね。今、結果が出ていて助かってます。(結果が)出なかった時に、もっとチャンスメイクのところが必要だと思うので。全然、満足はできないですね」

試合後の三笘から常々感じるのは、満足感に浸らず、常に上を目ざしている。向上心の塊のような選手であるからこそ反省の言葉を決して忘れない。ただ最近の三笘から伝わってくるのは揺るぎない自信だ。結果を残し続けていることで焦りがなくなり、良い意味で心の余裕が感じられる。

チームの中心選手である今、ブライトンでの日々は充実しているように映る。

奇しくも試合当日には、日本代表の招集メンバーが発表となった。三笘はカタール・ワールドカップ(W杯)に引き続いて順当に選ばれ、第2次森保政権の初陣となるウルグアイ戦(24日)、コロンビア戦(28日)に向け決意を新たにした。

「素晴らしい相手と試合ができる。ここでチーム作りも必要ですし、自分たちがどれくらいできるかも試したい。新しい選手が多く、短い期間の中で融合もしていかないといけない。その中で、僕も存在感を出したい」

現在25歳、年齢的に見ても代表での立ち位置が「中堅」へと変わる。プレー面でも、試合の流れを変える切り札としてベンチスタートが続いたカタールW杯と違い、第2次政権では主力として活躍が期待される。そういった立ち位置や役割についても、意識していきたいと語っている。

「自分は年齢も中堅というか、もう上の方になってくると思います。プレーだったり、チームの雰囲気のところも変わってくると思うので、そこは考えながらやりたい。

コーチも変わります。どういう狙いでやっていくのか、初めて分かることも多いと思います。僕自身、プレーヤーとしては、やはり個人で打開してナンボの選手なので、やることは変わらない。守備のところは変わるかもしれないですけど、自分が打開するところは変わらないので。そういうプレーは出さないといけない」

今回は、日本中を熱狂させたカタールW杯後、初めての代表戦となる。「日本で行われるし、楽しみではないか」。そう聞くと、小さく頷いた。

「そうですね、けっこう注目はしてくれていると思うので。その一発目の試合でどれだけ良い試合ができるかというのは、今後のサッカーにも関わってくる。そういうところの役割も自分たちは担っている。いま野球(WBC)もやっていて、色々なところでスポーツの人気が高まっていってほしい。その一部になれたらいいです」

W杯終了後からブライトンで目覚ましい活躍を見せるようになり、今やチームにとって不可欠な存在である。世界最高峰のプレミアリーグでコンスタントに活躍し、その価値も試合を重ねるごとに高まっている。

はたして三笘は日本でどんなプレーを見せてくれるのか。19日に行われるFA杯準々決勝グリムズビー・タウン戦(英4部)の後、日本に向け機上の人となる。

取材・文●田嶋コウスケ

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