外国人に大人気の不思議な納豆はもう食べた?仏教と伝統が息づく山梨身延で地産地消のローカルフードを味わおう!

みのぶの特産品”あけぼの大豆”と”湯葉”

山梨県の南部にある身延地方は、古来から仏教の町として有名でした。町の中心である身延山は、高野山や比叡山と並ぶ日本三大霊山のひとつであり、日蓮宗の総本山「久遠寺」のある霊山として古くから多くの僧侶や参拝客が訪れる地域です。

そんな身延町は、仏教徒の修行で食べられる精進料理が古くから発達し、その食材の産地としても知られています。特に有名なのが、普通の大豆の2倍の大きさにまで成長し、甘味も強い「あけぼの大豆」というブランド大豆です。標高300〜700m、昼夜の寒暖差が大きく、霧が多い身延地域でしか収穫することができない「あけぼの大豆」は、その稀少性から「幻の大豆」とも呼ばれています。

不思議なことに他の地域でこの大豆を育てても、次の世代からは普通の大豆と同じ大きさや味になってしまう固定種と呼ばれるもので、身延の自然の恵みをそのまま形にしたような食材です。

特に「あけぼの大豆」の枝豆は、秋のわずかな期間しか出回らない商品で、日本国内でもあまり知られていません。その身はふっくらとやわらかく、口の中に広がる自然な甘みを楽しめることから「一度食べたら忘れられない」と、多くの人を魅了しています。

身延のもうひとつの特産品が、精進料理に欠かせない湯葉です。もともとは、日蓮宗の開祖である日蓮聖人のために、弟子達が作ったとされるのが「身延の湯葉」でした。温めた豆乳の膜を食べる湯葉は、良質なタンパク質が豊富に含まれており、肉食を禁じられていた僧侶のための食材として広がりをみせました。近年は、ヴィーガンやコーシャの人たちにも優しいと、海外の人達からも人気のヘルシーな食材として注目を集めています。

身延では、そのままわさび醤油でいただくお刺身や、和食の煮物、その他さまざまな料理やお菓子として湯葉を楽しめます。伝統ある街並みを歩きながら、ぜひ個性豊かな湯葉メニューを食べ歩いてみるのも面白いでしょう。

文化庁の”伝統”と”文化”の100年フードについて

多種多様な食文化がある日本。その伝統を後世に継承していくため、日本の文化庁は地域で世代を越えて愛されてきた100年続く食文化を『100年フード』として認定。地域で古くから伝えられてきた食文化を『伝統の100年フード』、これからの未来に継承していきたい食文化を『未来の100年フード』として、継承・振興を行っており、身延では、山梨を代表する2つのローカルフードを味わうことができます。

『未来の100年フード』に認定された「あけぼの大豆の納豆」は、身延ならではのローカルフードです。ふっくらと大きな粒が特徴のあけぼの大豆を贅沢に使ったこの納豆は、身延山にある宿坊・覚林坊で作られています。宿坊とは、修行僧や参拝客が宿泊する宿の機能を持ったお寺のことですが、近年では大衆化が進み、気軽にお寺ステイ(otera stay)が楽しめるなど、国内外の観光客に人気の宿泊施設です。

数ある身延の寺町のなかでも、覚林坊は伝統ある宿坊のひとつ。覚林坊の「身延に賑わいを取り戻したい」という想いから、あえて外国人に敬遠されがちな納豆をテーマに「あけぼの大豆」を使った商品を開発。多くの納豆が持つ独特のニオイや粘りがなく、大豆の豊かな風味とまるで上質なお肉を思わせる食感をもった「あけぼの大豆の納豆」が誕生しました。そのため、納豆が苦手な人でも食べられると外国人旅行客にも好評です。

一方で『伝統の100年フード』に認定されたのが、山梨の郷土料理「ほうとう」です。諸説ありますが、日本の戦国時代(D.C. 15〜D.C.17)に活躍した山梨県の戦国武将、武田信玄の陣中食として食べられるなど、古くから山梨県内で親しまれてきました。大鍋で味噌と野菜を煮込んだ汁に、平打ちの麺を茹でずに入れて作るほうとうは、手軽で栄養が豊富であるため、かつては多くの家庭で食べられていました。

しかし、現代の日本では核家族化が進み、大勢でほうとうの鍋を囲む機会が減少。そこで生まれたのが、「ほうとう」をアレンジした「ほうとうカルボナーラ」というメニューです。

この料理は、伝統料理で有るほうとうを生パスタのようにアレンジしたメニューで、ほうとうのモチモチした食感の平打ち麺はパスタソースとも相性抜群。伝統と現在が融合した、新しいほうとうの味わい方として、世代を問わずに人気を集めています。最近では久遠寺を知らない若いカップルが、このカフェ目当てに訪れることもあるそうで、身延に来たらぜひ味わいたい料理のひとつです。

伝統と未来の100年フード、身延のどこで食べられる?

『100年フード』に認定された「あけぼの大豆の納豆」や「ほうとう」のアレンジメニューは、一体どこで食べられるのでしょうか?その答えは、身延の寺町にあります。

「あけぼの大豆の納豆」は、納豆を作っている宿坊・覚林坊で味わうことができます。覚林坊では、身延を訪れる人に精進料理や和食、そして身延の特産を気軽に味わってもらいたいと「おてらんち」というランチメニューを用意。この「おてらんち」は、「あけぼの大豆の納豆」だけでなく、身延特産の湯葉など、地域の特産をふんだんに使ったメニューが味わえます。

また、身延の特産を存分に味わいたい人には、湯葉御膳もおすすめ。ヴィーガンやハラール、コーシャも対応しているので、食の制限がある人でも安心して楽しめることもうれしいポイントです。

また「ほうとう」のアレンジメニューである「ほうとうカルボナーラ」を食べるなら、農カフェZenchoを目指してください。このオシャレなカフェは、身延の寺町の入口にあり、歴史ある古民家を現代風にリノベーションしたノスタルジックな雰囲気。現代と伝統を融合させた、さまざまなグルメが味わえます。

農カフェZenchoのテーマは、ローカルガストロノミー。地元の食と伝統文化を大切にし、地産地消メニューを豊富に揃えています。もちろんイチオシは、山梨の郷土料理であるほうとうをアレンジした「ほうとうカルボナーラ」。モチモチのほうとう麺とカルボナーラの濃厚でやさしい味わいのソースが絡み、一度食べたら病みつきになると評判です。

また、農カフェZenchoは、ヴィーガンやコーシャ向きの料理も充実。なぜなら「あけぼの大豆の納豆」を開発した覚林坊がプロデュースと運営をしているから。そのため、ロースイーツや、ハラール対応の食事など、共生や共存を大切にする人々に深く愛されるメニューになっています。またドリンクメニューには、山梨県特産のフルーツを使ったすももジュースや、寺町ならではの寺(じ)ビール(temple beer)などユニークで充実したラインナップ。地産地消のメニューがメインなので、フードマイレージが短く、環境にも負荷をかけない点も「100年フード」に選ばれる所以でしょう。

歴史ある伝統や、食文化について思いを馳せることができる身延ステイ。一日では回り切れないという場合は、ぜひ、550年の歴史のある宿坊・覚林坊や、迎賓館えびすやに宿泊して、よりディープな日本文化を体験してください。

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