<社説>米PFAS基準厳格化 日本も見直して除去急げ

 世界で汚染が問題化している有機フッ素化合物(PFAS)について米環境保護局は米国内の飲み水に含まれる濃度を厳格化する。PFASのうちPFOSとPFOAをそれぞれ1リットル当たり4ナノグラム(ナノは10億分の1)と非常に低い濃度とした。法的拘束力を持つ基準である。 日本では、水道水と河川など環境中の水の暫定目標値は両物質合計1リットル当たり50ナノグラム。米国の基準は格段に厳しい。環境省と厚生労働省は目標値見直しも視野に検討を始めており、米国の基準厳格化の影響を受けるとみられる。

 1月までに全国13都府県の河川や地下水など81地点で国の暫定目標値を超えるPFOSとPFOAが検出されている。沖縄では米軍基地周辺から高い値が検出され、米軍が使った泡消火剤が原因とみられている。日本政府は米国の基準厳格化を重く受け止め、国内検出のPFASの原因特定や汚染除去を急ぐべきだ。

 PFASは、自然界ではほとんど分解されず、環境中や体内に長期残留する。発がん性や出生時の低体重など健康への影響が指摘されている。

 県内では、目標値設定前の2015年に浄水場で高濃度のPFOS・PFOAが検出されて以降、米軍嘉手納基地や普天間飛行場周辺で目標値の超過が続いている。昨夏の基地周辺調査では、湧き水で最大42倍に達するなど46地点中32地点で目標値を超えた。

 市民団体が22年に6市町村7地域で387人を対象に実施した血中濃度検査では、米国の学術機関が示した健康対策を要する目安値を超えた人が40.1%(155人)に上った。

 原田浩二京都大准教授(環境衛生学)は、がん発症などのPFASを要因とする健康被害を防ぐためには0ナノグラムとすることを米環境保護局が求めていることに注目すべきだと指摘。水道水だけではなく、土壌や農産物・水産物から人体に取り込まれるPFASの総体的な値を考えるべきだと主張する。広範な調査が急務といえる。

 16年に取水源で高濃度のPFASが検出された北谷浄水場から給水を受けている自治体の首長からは、国内基準も厳格化すべきだとの意見が強い。世界的に甘い日本の基準や、健康被害についての説明不足、自治体任せの日本政府の対応に不満が募っている。

米軍基地が汚染源となっている可能性が高いことから玉城デニー知事は今月の訪米で基地内への立ち入り調査を求めた。まずは基地内を調査し汚染拡大を防ぎたい考えだ。

 しかし林芳正外相が国会で、日米地位協定の環境補足協定で立ち入り調査が認められる条件に該当しないとの認識を示すなど日本政府は及び腰だ。国民の命や健康が脅かされている。日本政府の対応は生ぬるい上に遅い。日本政府は自身の責任で早急に原因を特定し、汚染を除去することに本腰を入れるべきだ。

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