立憲民主党に「若者離れ」? 統一地方選で若手議員を増やせるか(宮原健太)

全国の道府県や市町村で選挙が繰り広げられる4年に一度の統一地方選が4月に迫っている。地方選ではあるものの、国政政党の現在の地力を図るバロメーターにもなり、2月に開かれた各党の党大会では、それぞれの党の代表が選挙に向けて喝を入れた。

2月26日に開かれた自民党大会では総理大臣である岸田文雄総裁が「地域が元気になって初めて日本が元気になる。まなじりを決して、きたる統一地方選挙を必ず勝ち抜こう」とあいさつ。2月5日に大会を開いた日本維新の会は、馬場伸幸代表が地方議員の数を現在の約400人から600人以上に増やせなかった場合は辞任し「道を譲る」と背水の陣を敷いた。

立憲民主党の泉健太代表

そうした中、国政の野党第一党である立憲民主党は2月19日に大会を開き、泉健太代表が「来るべき統一地方選は決して簡単な選挙ではない。各政党に負けない活動をしよう」と党員に向けて語りかけ、活動計画には統一地方選で「45歳以下の議員の50人増をめざす」と明記した。若手の地方議員を増やすことは、その地域の政治活動を活発化し、将来的には国会議員を誕生させる鍵にもなる。非常に重要な目標だと言えるだろう。

しかし、一方で最近は立憲の「若者離れ」とも見えるような現象が起きてしまっている。2021年の衆院選に立憲から出馬し、最年少候補者として取り上げられた今井瑠々氏(26)は1月に自民党推薦で岐阜県議選に出馬することを表明。また、2019年参院選に立憲から出馬した「モーニング娘。」元メンバーの市井紗耶香氏(39)は昨年1月に自身のインスタグラムで出馬辞退を発表した。

どちらも45歳以下の候補者であり、立憲としても将来を有望視し、早い段階で次期選挙の公認候補として活動を支援してきた。しかし、残念ながら2人とも最終的には党を離れてしまうという結果となった。一体なぜなのか。

2月24日の立憲の泉代表会見で筆者がそのことを問うと、泉氏からは「市井さんは今もやりとりしていますし、今後も協力をしていきたいと言っている。今井さんは裏切りという形で出て行ったので、立憲に影響があるものではない。今回(の統一地方選)も若者が全国で次々と立候補を表明しているので、新しい世代が入ってきていると勢いを感じている」という答えが返ってきた。

ちなみに、市井氏は翌日に自身のツイッターを更新し「やり取りはありますが統一地方選も出馬しなければ応援にもいく予定もありません」と発信している。

いずれにしても、泉氏の言う通りなら2人はあくまで目立った事例に過ぎず、全国的には若い候補者が名乗りを上げており、「若者離れ」は杞憂に過ぎないのだろうか。

しかし、周辺から話を聞くと違った答えが返ってくる。立憲関係者は「今井氏は衆院選岐阜5区の候補だったが、今は岐阜に国会議員がおらず、市井氏は参院比例候補。日ごろからコミュニケーションをとれている国会議員があまりおらず、時には放置している状態になっていた。こうした状況は変えていかないといけない」と明かす。

一方で立憲の若手議員からは「ただ若さを売りにして候補者を立てるのではなく、きちんと自分から立憲の人たちとコミュニケーションを取ることができる人かどうかを見極める必要があるのではないか」という声もあがった。

取材であがってきたのは候補者と政党のコミュニケーションを巡る問題だ。候補者は選挙に向けて、長い期間にわたって戸別訪問や街頭活動などの活動を続けなければならない。それはとても孤独な戦いであり、特に経験が少ない若い人たちにとっては相談できる相手がいるかどうかは死活問題だろう。

立憲民主党の大串博志選対委員長

こうした課題もあるなか、統一地方選で立憲は本当に若手の地方議員を増やすことができるのか。立憲の大串博志選対委員長を直撃した。

大串氏は「45歳以下の新人で立候補を予定している人が100人弱いる。その半分は当選させたいという思いだ」と目標設定の意図を語る。

こうした中、若手候補者の支援については「青年局を活用したい」と提案した。青年局とは若手の国会議員や地方議員、党員などで構成された党の組織だ。「青年局にいる若手議員が全国を回り、若手候補者と一緒に街頭演説をするなどして、選挙に向けた雰囲気作りを積極的にやっていきたい」という。

また、課題となっている候補者とのコミュニケーションにおいては「議員同士で重要だと思うことを共有できる体制を大切にしたい」として、地方議員ネットワークの活用を挙げた。「今も地方議員同士で活発に動いており、全国の先輩議員が若手議員に対して、後援会活動のやり方などの選挙研修をオンラインで開いている」と手応えを感じているという。

さらに、若手議員には選挙と子育てを両立しなければならないという課題を抱える人も多い。そこで、ベビーシッターなどのケアラーを雇えるように金銭的に支援していく仕組みを去年の参院選から導入し、今回の統一地方選でも取り組みを継続するという。「若い人が家庭と両立しながら選挙に出られる体制支援をしていきたい」と大串氏は狙いを語った。

若手地方議員の人数増を目標に掲げているだけあり、支援強化には力を入れているようだ。あとは、こうした仕組みが有機的に働き、目標を達成できるかどうかが勝負となる。

統一地方選は4月9日に道府県の知事選や議員選などが行われる第一陣が始まり、23日に市区町村の首長選や議員選などの第二陣が始まる。

その結果によっては国政政党の体制を左右し、国の政策や政局に影響を与える場合もあるだろう。各政党が若手候補も含めて、どれだけ地方の候補者を支援して力になり、当選させることができるか。それが、今後の国の行く末も左右するのである。

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