『ドンブラザーズ』は最終回まで傑作だった…!数々の伏線とオニシスター・鬼頭はるかが果たした役割

2022年3月より1年間にわたって、地球の平和を守り続けてきた「スーパー戦隊」シリーズ第46作『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』が、先日、ついに最終回を迎えました。一年もの期間を共にしてきた番組の終了を嘆くファンも多く、すでに「ドンブラロス」に陥っている視聴者が大量発生中!

その型破りな作風から、小さな子供たちだけでなく、大人たちをも魅了した『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』とは一体どんな作品だったのでしょうか? 今回は、本作を最終回まで視聴し終えた率直な感想を綴りたいと思います。

※記事の特性上、最終回のストーリーに触れています。

CD『暴太郎戦隊ドンブラザーズ キャラクターソングアルバム』(コロムビア・マーケティング)

オニシスター・鬼頭はるか視点からの導入には“意味”があった

『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』は、「スーパー戦隊」シリーズ史上初めて「桃太郎」をモチーフにしたヒーローたちが活躍する作品でした。主人公の桃井タロウことドンモモタロウを中心に、サルブラザー、オニシスター、イヌブラザー、キジブラザーの4人をお供にしたチームで構成されています。

まず初めに第1話の段階で驚かされたのは、チームの紅一点であるオニシスターこと鬼頭はるか(志田こはくさん)の視点から物語が語られる点でした。

本来の「スーパー戦隊」であれば、主人公である赤い戦士の視点から物語が展開されると思うのですが、本作はヒロイン目線で進行していくという型破りな導入で幕を開けました。

一体これはどういうことなのだろうか?と疑問を大いに感じていたのですが、実はこの導入には、しっかりとした“意味”があったのです。

なんと、最終回で漫画家でもある鬼頭はるかが、『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』というマンガを執筆することになるのです。つまり本作は鬼頭はるかの回顧録や自叙伝的な役割も果たしていたということになり、第1話における伏線を最終話で見事に回収してみせたというわけなのです。

なぜ、ヒロイン目線で物語がスタートしたのか? その理由を明確にしているラストでした。 さらに、この鬼頭はるかというキャラクターは、劇中序盤に、自身の漫画『初恋ヒーロー』が盗作だと訴えられてしまい、人生のどん底を経験。その『初恋ヒーロー』と酷似した漫画『失恋ナイト』を執筆した兎の着ぐるみ姿の“椎名ナオキ”とは一体何者なのかというのは、全体を通しての大きな謎として扱われていました。

結果として、椎名ナオキの正体は異なる世界線の未来からやってきた鬼頭はるか自身でした。

もともと“椎名ナオキ”という名前にヒントが隠されており、椎名ナオキをローマ字にすると「SHIINA NAOKI」となり、これを入れ替えると「KANASHII ONI」となることから、鬼頭はるか自身なのではないかという考察もされていました。

熱心なファンの予想が的中した形でしたが、どこかゾワッとする椎名ナオキの存在は、鬼頭はるかというキャラクターを盛り上げる点で大いに活躍してくれました。

その他にも、桃太郎の敵であるはずの“鬼”がなぜ仲間の名前に組み込まれているのか?などの多くの謎を秘めていた鬼頭はるか。この疑問に関しては、「鬼が仲間なのは敵も味方もないというドン家のメッセージ」といった答えでしたが、とても魅力的なキャラクターであったことは間違いありません。

その類まれな存在感と演じる志田こはくさんの演技が相まって、「スーパー戦隊」史上もっとも魅力的なイエロー像を築き上げたと言えるでしょう。

本作においては、中盤に仲間入りする追加戦士の桃谷ジロウ(石川雷蔵さん)というキャラクターもかなりの曲者だった印象です。

桃谷ジロウは、戦いに敗れた桃井タロウの後継者として登場するヒーローへの憧れを抱く青年。ヒーローになるため、とある田舎町から、友人やガールフレンドに別れを告げ、都会へとやってきたキャラクターなのですが、物語が進むにつれて、彼もまた不穏な空気を帯び始めて行くのです。

かねてより、サイコパスな二重人格の持ち主であったジロウですが、実は友人もガールフレンドのルミちゃんも、本当は存在しなかったという事実が明らかになります。

思わず鳥肌の真実であり、ネット上は大変な盛り上がりを見せたのも記憶に新しいですが、このようにキャラクター一人一人が一筋縄ではいかない個性を持ち、大きな謎を秘めている点もまた本作の魅力でした。

伏線の数々…井上敏樹氏の脚本に脱帽!マスターの正体は?

そして、何と言っても本作最大の注目ポイントは、特撮界のレジェンド脚本家である井上敏樹氏が脚本を務めているという点。

井上氏が脚本を執筆した作品は斬新なテーマ性を盛り込み、のちに名作として語り継がれることが多いのですが、本作もまた例外ではありませんでした。 第1話の段階から実に多くの伏線を散りばめ、複雑さを強調。戦隊ヒーローでありながら、全員がバラバラの状態のまま展開するという王道とは異なる型破りなストーリーラインを辿っていく……まさに井上敏樹ここにあり! とでも言いたげな脚本術が見事だったと言うほかありません。

どこか心にしこりを残すような結末に関しても、「ああ、井上敏樹らしいな」という言葉がついつい漏れてしまった次第であります。

物語序盤から提起されてきた「みほちゃん」と「夏美」の問題についても、かつての『鳥人戦隊ジェットマン』ばりの「トレンディ展開」を思わせる結末を迎え、井上氏と所縁の在る村上幸平さん(ソノヤ役)の登場もあり、至る所で井上作品らしさを存分に見せつけた名作中の名作だったと改めて言えることでしょう。

ファンの間では、「スーパー戦隊」特有の名乗りポーズはいつ見せるのか?という話題で持ちきりだった『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』。

正真正銘の名乗りポーズというのは最終回になってようやく披露……どこまでも斬新で型破りな印象を与えた「スーパー戦隊」でした。1年もの間、お預けになっていた名乗りポーズが、「桃太郎」の有名なフレーズと共に披露された瞬間の感動は、歴史を振り返ってみても類を見ないほどのものがありました。

そんな見事な大団円を迎えた『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』ですが、広げた大風呂敷はまだ畳み切れていません。なぜなら、「喫茶どんぶら」のマスターの正体がまだハッキリしていないからです。

これに関しては、おそらく2023年5月3日より期間限定上映が始まるVシネクスト『暴太郎戦隊ドンブラザーズVSゼンカイジャー』で明らかになるのでしょう。

マスターと五色田介人をいかにして同時存在させるのか?はたまた二人の関係性は?そして、記憶を失ったタロウは、どのようにドンブラザーズへ復帰するのか?

まだまだ『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』の物語は続いていきます……本当に楽しみは尽きません! (執筆:zash) ■ 常識破りの『ドンブラザーズ』秘密は脚本家にある?90年代を騒がせた“戦うトレンディドラマ”との共通点

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■『ゼンカイジャー』にテニプリ界隈が爆笑!テニミュ俳優の“絶頂”ポーズも炸裂「お腹痛いw」「思った以上だった」

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『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』概要

【暴太郎戦隊ドンブラザーズ】スペシャル動画

via

<キャスト>

■暴太郎戦隊ドンブラザーズ

ドンモモタロウ:桃井タロウ(ももい・たろう) 樋口幸平

サルブラザー:猿原真一(さるはら・しんいち) 別府由来

オニシスター:鬼頭はるか(きとう・はるか) 志田こはく

イヌブラザー:犬塚 翼(いぬづか・つばさ) 柊太朗

キジブラザー:雉野つよし(きじの・つよし) 鈴木浩文

桃井 陣(ももい・じん):和田聡宏■脳人(のうと)

ソノイ:富永勇也

ソノニ:宮崎あみさ

ソノザ:タカハシシンノスケ <スタッフ>

プロデューサー:

井上千尋(テレビ朝日)

白倉伸一郎(東映)

武部直美(東映)

矢田晃一(東映エージエンシー)

深田明宏(東映エージエンシー)

原作:

八手三郎

脚本:

井上敏樹

監督:

田﨑竜太

アクション監督:

福沢博文

特撮監督:

佛田 洋(特撮研究所)主題歌:

「俺こそオンリーワン」

歌:MORISAKI WIN

作詩:及川眠子

作曲/編曲:フワリ ■公式サイト:

https://www.tv-asahi.co.jp/donbro/

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