残り20分のクラッシュで首位3台が消える。GTP上位完走は2台、AXRキャデラックが優勝/IMSAセブリング12時間

 3月18日、アメリカ・フロリダ州のセブリング・インターナショナル・レースウェイでIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権第2戦セブリング12時間レースの決勝が行われ、アクシデントがありながらもフィニッシュまで走り切ったウェーレン・エンジニアリング(アクション・エクスプレス・レーシング)の31号車キャデラックVシリーズ.R(ピポ・デラーニ/アレクサンダー・シムス/ジャック・エイトケン)が優勝を飾った。

 今季からLMDh車両に切り替わった最高峰GTPクラスでは、レース後半になってアクシデントが相次ぎ、残り20分では多重クラッシュが発生して3台が一気に姿を消すなど、エントリーした8台中、上位で完走したのは優勝車と2位に入った25号車BMW Mハイブリッド V8(BMW Mチーム RLL)のみ。総合3位には、LMP2クラス優勝車両が入る、波乱のレースとなった。

■トップ01号車から出火

 WEC世界耐久選手権と併催された今回のセブリング戦は、開幕戦デイトナ24時間に続き『ミシュラン・エンデュランス・カップ』がかけられるイベントとなる。

 WECの決勝日である金曜午前中に行われた予選では、31号車キャデラックのデラーニが1分45秒836というタイムでポールポジションを獲得。01号車キャデラック(チップ・ガナッシ・レーシング)のセバスチャン・ブルデーが2番手、3番手には10号車アキュラARX-06(ウェイン・テイラー・レーシング・ウィズ・アンドレッティ・オートスポート)のリッキー・テイラー、4番手に6号車ポルシェ963(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ)が続いた。

2023年セブリング12時間レースのスタートシーン

 18日午前10時10分にスタートした決勝レースは、31号車キャデラックがリードするが、序盤にダブルスティントを行った際にペースが落ちて後退、さらにLMP3車両と接触してダメージを負い、何度かピットで修復を行った結果、クラス最後尾へと回った。

 その後は01号車キャデラックがレースをリードし、中盤にはここに10号車アキュラも絡むことに。イエローのたびにギャップがリセットされ接戦が続くなか、後半に入るとサバイバルの様相を呈し始め、まずは24号車BMW Mハイブリッド V8のアウグスト・ファーフスがコース上にマシンを止め、リタイアを喫する。

メカニカルトラブル発生までレースを優位に進めていた01号車キャデラックVシリーズ.R

 そして陽が傾いて夜を迎えると、さらなる悲劇が。

 まずは首位を走っていた01号車キャデラック。残り3時間目前、ブルデーのドライブ中に火災が発生し、車両後部から白煙を噴きながらピットへと戻ってきてしまう。ブルデーはこの9時間目のリスタートで、デラーニを抜きトップに立っていた。

 これによって10号車、60号車(メイヤー・シャンク・レーシング)の順でアキュラ勢のワン・ツーとなるが、残り1時間45分、60号車は左リヤホイールが緩み、大きく後退を強いられてしまう。

 残り55分、6号車ポルシェのマシュー・ジャミネはターン14でワイドになった10号車フィリペ・アルバカーキをかわし、31号車エイトケンがピットに入ると、ジャミネが首位へ。その直後にGT車両のストップのためにイエローが導入されると、31号車以外のGTP車両はピットインしフルサービスを行う。

 残り30分のリスタートではエイトケン、アルバカーキ、7号車ポルシェのフェリペ・ナッセによる3ワイドの2番手争いが展開されるなか、ジャミネが首位となる。

 そして残り20分、ターン1から3でGTクラスの一団に詰まるなか、6号車ポルシェのジャミネに10号車アキュラのアルバカーキが並びかける。しかしGT車両をパスしようとした6号車が左に動いたことで10号車がグリーンに追いやられる形となり、10号車はコントロール不能に。そのままターン3イン側のグリーン上を減速できずに滑っていくと、ターン3を立ちあがろうとしていた6号車に激しくクラッシュした。

 さらにそこに差し掛かったポルシェ7号車が10号車に接触、7号車はアウト側のグリーン上に止まった僚友6号車ともクラッシュする形となり、一瞬にしてトップグループを形成していた3台が戦線を離脱することになってしまった。

 これによりリードを奪った31号車キャデラックが優勝。2位は25号車BMW Mハイブリッド V8(コナー・デ・フィリッピ/ニック・イェロリー/シェルドン・ファン・デル・リンデ)で、総合3位にはLMP2優勝のタワー・モータースポーツ8号車オレカ(ジョン・ファラノ/スコット・マクラフラン/カイフィン・シンプソン)が入った。

 ホイール脱落で順位を下げた60号車アキュラは、総合24位で完走。また、終盤クラッシュしたGTPの3台はチェッカーを受けられなかったが、暫定リザルト上では総合9〜11位に記載されている。

最終盤でクラッシュしたウェイン・テイラー・レーシングの10号車アキュラARX-06
最終盤にトップ争いのなかで接触したポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの6号車ポルシェ963
2位でフィニッシュした25号車BMW Mハイブリッド V8
LMP2クラス優勝、総合でも3位に入ったタワー・モータースポーツの8号車オレカ

■新型ポルシェ911 GT3 Rが初勝利つかむ

 LMP3クラスはライリー74号車リジェJSP320(ガー・ロビンソン/フェリペ・フラガ/ジョシュ・バードン)が制した。

 GTDプロクラスを制したのは、パフ・モータースポーツの9号車ポルシェ911 GT3 R(クラウス・バケラー/パトリック・ピレ/ローレンス・ファントール)。開幕戦でBoPに苦しんだポルシェ勢だったが、このレースを前にリストリクター径が拡大されていた。2023年にレースデビューを果たした992型の911 GT3 Rにとって、最初の勝利となった。

 2位にはバッサー・サリバンの14号車レクサスRC F GT3(ジャック・ホークスワース/ベン・バーニコート/カイル・カークウッド)。この上位2台は、8時間目にライト・モータースポーツとウインワード・レーシングの接触によるフルコースコーションの直前にタイミング良くピットストップを行い、クラストップに躍り出ていた。

 GTDプロの3位にはウェザーテック・レーシングの79号車メルセデスAMG GT3(ダニエル・ジュンカデラ/ジュール・グーノン/マーロ・エンゲル)が入った。

 GTDクラスは、BMW M4 GT3のワン・ツーとなった。優勝はポール・ミラー・レーシングの1号車(ブライアン・セラーズ/マディソン・スノー/コーリー・ルイス)。これにターナー・モータースポーツの96号車(パトリック・ギャラガー/ロビー・フォーリー/マイケル・ディナン)が続き、クラス3位にはケリーモス・ウィズ・ライリーの92号車ポルシェが入っている。

GTDプロクラスを制したパフ・モータースポーツの9号車ポルシェ911 GT3 R
GTDクラスを制したポール・ミラー・レーシングの1号車BMW M4 GT3
LMP3クラスを制したライリーの74号車リジェJSP320
2023年IMSAセブリング12時間 決勝暫定リザルト ※PDFが開きます

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