ブレイク前夜の小泉今日子!デビュー1年目の初々しいキョンキョンが大好きッ♡  小泉今日子デビュー40周年!

花の82年デビュー組。個性爆発前の小泉今日子は…

例えばブルース・リー主演の映画『燃えよドラゴン』がヒットするや、こぞって各映画会社が当時未輸入だったブルース・リー主演作はもちろんのこと、他の俳優による類似品カンフー映画をも競って香港や台湾から輸入し、出どころ不明の怪しげなものも含め “ドラゴン映画” と称する作品が続々と公開されたり。

もしくは『機動戦士ガンダム』がヒットするや、それまでロボットアニメといえば基本的に低年齢層向け番組だったところ、突如としてガンダム風の高年齢層向けロボットアニメが続々とスタートしたり。

最近はそういった現象もなりを潜めている気がしますが、昭和という時代はひとつヒット作が生まれるや、続々と類似品(怪しげなものも含め)が登場する時代でした。

アイドルも同様。松田聖子という “大ヒットアイドル” が登場するや、各芸能事務所はそれに続けとばかりに “聖子ちゃん風のアイドル” を続々と世に送り出しました。

松本伊代、堀ちえみ、中森明菜、早見優、石川秀美といった個性豊かな錚々たる顔ぶれがデビューしたいわゆる “花の82年デビュー組” アイドルの中で、のちに個性を爆発させることになる我らがキョンキョンこと小泉今日子も、当初は “聖子ちゃん風キャラ” で登場しました。

ーー などという書き方をすると、まるで私がその頃のキョンキョンに否定的であるかのように受け取られるかも知れませんが、実は真逆で、本人が望むと望まざるとに関わらず… という感じで、聖子ちゃん風アイドルを任じていた頃のキョンキョンが実は大好きでした。だってホントーーに可愛かったですから。

「私の16才」の世界は、純情乙女が主人公

キョンキョンといえばデビュー曲「私の16才」、そして2曲目の「素敵なラブリーボーイ」と既成曲のカバーが続いたのは、事務所的に力が入っていたからなのか、はたまたその逆なのかはよく分かりませんが、当時キョンキョンは82年デビュー組の中で、スタートダッシュではやや水をあけられていた感がありました。

「私の16才」の原曲は、その3年前に森まどかさんが歌った「ねえ・ねえ・ねえ」という曲で、細かい部分を除きほぼそのまんまなのですが、歌は確実に森さんの方が巧いっ。しかしながら想いを寄せる男子に打ち明けたいのに打ち明けられないーー というこの曲の世界観には、キョンキョンのやや頼りない歌声の方がハマっています。

… と、これは身ビイキかもしれませんが、森まどかさんの巧過ぎる歌唱から伝わって来るのは、恋する乙女のモジモジ感よりも、むしろ告白の結果もあらかじめ勝ちを確信しているかような力強さ、あるいは万が一その恋が実らなくてもめげずに生きていけそうな力強さでした。

そう! この「私の16才」の世界は、純情乙女を主人公とした “うれしはずかし少女小説” とゆーか少女漫画ゾーンなのです。大好きな彼がいつも通る道で毎朝、赤いリラの花を髪にさして挨拶するだけの私。

そんな私の気持ちに気づいてくれない彼を「花言葉もわからないおバカさん」呼ばわりしてしまうのですが、男子高校生でそこまで察しの良い奴はそうはいまい。

かく言う私も、今日までこの歌詞の示す花言葉を調べようとさえしなかったうつけ者ですが、赤いリラの花言葉は「青春の喜び」「初恋の味」などであるとか。…… 関西風に言うと「知らんがな!」という感じですが、少なくとも学生時代、赤いリラの花を髪にさして私に挨拶してくれる女子はいませんでした。そもそもリラがどんな花かも分かっていない大バカさんなのでお話にならないですが。…… 閑話休題。

「ひとり街角」のアルバムバージョン

そしてキョンキョンも3曲目にしてようやくオリジナル曲「ひとり街角」を引っさげて登場。馬飼野康二先生作曲によるこの曲は、ドラマティックなストリングスと相まって、サビに向けての疾走感が格別で、未だに個人的にはこの曲がキョンキョンの中ではベストです。

ところでこの曲は、シングルレコードでのバージョンとセカンドアルバム『詩色の季節』に収録されたバージョンでは、部分的に別テイクが収録されています。

たとえば1番の「♪ごめんねを言うのは」や「♪知っているけど」、2番の「♪耳を近づけ」などがそうですが、不思議なことにいずれの箇所もアルバムバージョンの方がいい感じなのです。きっとレコーディングの時に作曲家やプロデューサーの間で意見が分かれ、このような形で両方を生かすことにしたのでは?…… などと想像してしまうのですが。

まぁそういう豆知識(ムダ知識?)はさておき、「私の16才」と「ひとり街角」でのキョンキョンの歌声は、特に「裏声になりそうでならない高音部」に、はかなげで危なっかしい魅力を感じます。「私の16才」の「♪ねえ 大人ぶっているのね あなた」の「大人ぶって」のあたり。あるいは「ひとり街角」の「♪たやすいことと たやすいことと 知っているけど」の「いる」のあたりーー。

女性だから声変わりと言うのは変でしょうけど、「コドモ声」から「オトナ声」に移りつつある年代の女子の、一番可憐な(そしてほのかに色っぽい)声を引き出したメロディーだったと思います。

キョンキョン初の大ヒット曲「まっ赤な女の子」

結果的にこの「ひとり街角」も4曲目の「春風の誘惑」も大ヒットには至らず(しかしながら「春風の誘惑」のB面曲で、はしだのりひこ先生作曲による「真夜中のレッスン」は歴史的名曲!)、5曲目の「まっ赤な女の子」においてついに御大・筒美京平先生の登板となりました。

筒美先生といえばその歌い手の弱点さえも敢えて活かすことによってヒット曲を生み出す、まさに魔術師のような作曲家でした。

たとえば、麻丘めぐみさんの発声において、高音部になると “泣き” が入ると知るや、それを逆に魅力として引き出すことにより、「芽ばえ」における「♪この私はどんな 女の子になっていたでしょう」の「子になっていたでしょう」あたりにみられるような、唯一無二のチャーミングな歌声を引き出しました。

キョンキョンの「まっ赤な女の子」においても、デビュー以降の曲のメロディーがいずれも “裏声直前” の高音部までにとどめられていたところに、サビアタマの「♪まっ赤な まっ赤な女の子」の「子」をちゃっかり裏声で歌わせ、まんまとキョンキョン初の大ヒット曲を生み出したのでした。

この曲をキッカケにベストテン番組の常連となったキョンキョンですが、ブレイク前から応援していた私たちにとっては、いっぺんに彼女が遠いところに行ってしまった気がしたものでした……嗚呼!

カタリベ: 使徒メルヘン

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